スウェーデンが導入した"性別不問の言葉"が人々の考え方を変えている —— 最新調査

スウェーデン

Tjook (TJOOK.COM)/Flickr/CC 2.0 Attribution

スウェーデンには、性の区別のある代名詞が2つあった。「hon(彼女)」と「han(彼)」だ。2012年、ここに男性にも女性にも使える代名詞「hen」が加わった。

それ以来、男性にも女性にも使える代名詞はスウェーデンの日々の生活の一部となった —— 心理学の新たな調査によると、この代名詞が人々の考え方を変えたという。

hen」はスウェーデンをどう変えたのか

WIREDによると、男性にも女性にも使える代名詞「hen」は当たり前のものになった。

1960年代にはすでに存在したとも言われる「hen」だが、2010年代初めに話題になるまで一般に広まってはいなかった。転機となったのは2012年に出版された児童書『Kivi and the Monster Dog』だと考えられている。作者のJesper Lundqvist氏は、この本のメインキャラクターを呼ぶのに「hen」を使った。Lundqvist氏の本を際立たせていたのは、作品の中でのジェンダーの繊細さだ。スウェーデンの児童書の中には、キャラクターを困難に直面させることで、その性的中立性に目を向けさせるものもあるが、Lundqvist氏のプロットはジェンダーとは無関係だ。

しかし、この新しい言葉をめぐっては論争もあった。ライフスタイル系メディア『Nöjesguiden』は、ほとんどのケースで「hen」を使うと決めた一方で、日刊紙『ダーゲンス・ニュヘテル(Dagens Nyheter)』は、一切使用しなかった。だが、最終的には「hen」が勝った。2012年後半にはスウェーデンの百科事典に追加され、2014年にはスウェーデン・アカデミー(ノーベル文学賞を選考している組織) の辞書に追加された。

hen」の実験

児童書『Kivi and the Monster Dog』から7年、アメリカのセントルイス・ワシントン大学の政治学者マーギット・タビツ(Margit Tavits)氏とカリフォルニア大学ロサンゼルス校の政治心理学者エフレン・ペレス(Efrén Pérez)氏は、「hen」に対するスウェーデン人の本音を探るべく、調査を行った。

『米国科学アカデミー紀要(PNAS)』に掲載された最新の研究では、 スウェーデン語を母語とする2000人以上を対象に、棒人間と風船で作った動物、棒人間の頭の近くに2つの吹き出し(最初の吹き出しには「???」、2番目の吹き出しには「!!!」)が描かれたマンガを見せ、被験者にその状況を説明してもらった。すると、「hon(彼女)」や「han(彼)」よりも男性にも女性にも使える「hen」が多く使われただけでなく、被験者はストーリー全体を通じて「hen」を使おうと工夫していた。

つまり、この研究は新たな言葉が新たな考え方を社会にもたらし得ることを示している。2012年当時、スウェーデン人は「hen」に否定的だったが、2014年までに大部分の人がこの言葉を支持するようになった。アメリカでは近年、1300年代から使われている英語の代名詞「they/them」が、男性にも女性にも使える言葉として人気だが、「hen」ほど中立ではない。WIREDが報じたように、ある研究では、スウェーデン語の「hen」は中立性と関連しているが、英語の「they/them」は男らしさと関連していることが分かっている。

hen」は考案された代名詞だが、すでに日々の生活に溶け込んでいる。

hen」についてペレス氏は、「この言葉には生物学的な関連性がない」とし、「これはゼロから生まれた言葉だ。そして、一部の支持者が主張するようなパフォーマンスを見せている」と語った。

[原文:Sweden recently introduced a gender-neutral pronoun. Psychologists say it's already changing the way people think.

(翻訳、編集:山口佳美)

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