デジタル通貨でチャージしたau PAYでビックカメラでの買い物を行うディーカレット代表取締役社長の時田一広氏。
撮影:鈴木淳也
デジタル通貨取引サービスを提供するディーカレットは8月21日、手持ちのデジタル通貨を電子マネーに交換して決済に利用できる新サービスを提供開始した。
従来、ビットコインなどの暗号資産と呼ばれるデジタル通貨を店舗決済に利用する場合、日本国内ではビックカメラなど対応店舗が限定されており、非常に使いにくかった。
新サービスでは、「手持ちの仮想通貨をダイレクトに電子マネーに転換できる」ため、使い勝手が大幅に向上する。
現状で対応するのはau WALLET(au PAY)、楽天Edy、nanacoの3つのサービス。楽天EdyとnanacoについてはNTTカードソリューションのサービス「ギフトID」経由でのチャージとなる。
普段使いの電子マネーに手軽にチャージ
今回発表された新サービスの一覧。
新サービス発表会場は、東京・有楽町のビックカメラだった。
ビックカメラは中国系決済サービスやQRコード決済、さらにビットコインを支払い方法に選択できるなど、さまざまな決済手段の取り組みで先進的な企業として知られる。
au WALLETへのチャージの場合、DeCurretのアプリ上からダイレクトに実行可能。
ディーカレット代表取締役社長の時田一広氏自身がデモンストレーションを披露した。ビットコインを受け入れるビックカメラにとっても、仮想通貨から電子マネーへのチャージ機能は顧客の利用機会拡大につながるわけで、新サービスへの協力を通じて対外的に先進性をアピールする狙いがあるとみられる。
今回発表された新サービスは以下の4つだ。
- 電子マネーチャージへの対応
- デジタル通貨で最大4倍までのレバレッジ取引
- ワンクリックでのスピード注文
- 取引画面でのナイトモード対応
au PAYの場合、au WALLETにチャージしてすぐに決済に利用できる。
電子マネーチャージでは3つのサービスに対応するが、au WALLETへのチャージがディーカレットのアプリからダイレクトに行えるのに対し、楽天Edyとnanacoではいったん「ギフトID」への変換が必要になる。
具体的には、ギフトIDを入手した後、おサイフケータイが利用できる機種でそれぞれのサービスのモバイルアプリを通じてチャージしたり、PC経由でのチャージ(楽天EdyのみでFeliCa対応リーダーが必要)、コンビニ店頭でのチャージが可能。
au WALLETの場合、au WALLETプリペイドの「物理カード」を使っての支払いや、Apple Payなどのサービス活用のほか、au PAYを使ってアプリ上でのダイレクトな支払いができる。
複数のデジタル通貨(仮想通貨)を組み合わせて電子マネーチャージが可能に。
なお、今回の発表タイミングでディーカレットが対応する仮想通貨に新たにイーサリアム(ETH)が加わっている。
これに「ビットコイン(BTC)」「ビットコインキャッシュ(BCH)」「リップル(XRP)」「ライトコイン(LTC)」を合わせた計5つの仮想通貨を自由に組み合わせて最低1000円単位からの電子マネーチャージができる。
1回あたりのチャージ上限は各電子マネーの仕様に準拠し、3000円未満のチャージの場合は108円の手数料が請求される。交換可能な時間帯は365日ほぼ終日。事前に規定されたメンテナンス時間を除くすべての時間でチャージできる。
仮想通貨は決済手段として定着するか
ディーカレットではサービス立ち上げ当初から「デジタル通貨のメインバンク」としてあらゆるデジタル資産の双方向の交換機能を提供していくことを目指している
ディーカレットは3月に開催されたサービス説明会の中で「DeCurret」を仮想通貨を中心とした金融プラットフォームと定義している。
単純な投機目的の仮想通貨取り引きだけでなく、ステーブルコインやICOを含む仮想通貨(暗号資産)を日本円などリアルマネーと等価に扱い、双方向で交換可能な仕組みとして拡大していく方針だ。
今回の電子マネー交換サービスもその一環であり、利用者の利便性を向上させ、プラットフォームの活性化を図ることが狙いだ。
最近、bitFlyerがTポイントカードとの連携で、Tポイントをデジタル通貨に交換するサービスを表明しているが、DeCurretもまたさまざまな事業者との連携で双方向交換なサービスを目指していくという。
今回の発表会で登壇したメンバー。左からビックカメラ取締役執行役員の中川景樹氏、ディーカレットの時田氏、KDDIライフデザイン事業本部金融決済ビジネス推進部長の長野敦史氏。
「電子マネー決済」という出口を得た仮想通貨は、果たして従来の投機目的中心の取引を越えて、さらに活用が進むのだろうか。
価格変動が激しいことから、決済業界からは「安定した決済プラットフォームとは言い難い」(米Visa幹部)との評価もある仮想通貨。だが、こうした問題を軽減して決済手段として広く受け入れられるかはディーカレットのような中間サービス事業者次第だ。
これら事業者は交換時のスプレッド(売値と買値の差額)が手数料として収入となるが、大きいスプレッドは利用者に敬遠される。一方、スプレッドを縮小すれば事業者のリスクが増える。
現状、決済手段としての仮想通貨はスタートしたばかりだが、今後参入事業者が増えサービスが洗練されていくことで、使い勝手もより向上していくだろう。
(文、撮影・鈴木淳也)
鈴木淳也:モバイル決済ジャーナリスト/ITジャーナリスト。国内SIer、アスキー(現KADOKAWA)、@IT(現アイティメディア)を経て2002年の渡米を機に独立。以後フリーランスとしてシリコンバレーのIT情報発信を行う。現在は「NFCとモバイル決済」を中心に世界中の事例やトレンド取材を続けている。近著に「決済の黒船 Apple Pay(日経BP刊/16年)」がある。