福祉ベンチャーのウェルモは11.7億円を調達。コニカミノルタとあいおいニッセイ同和損害保険と介護現場の効率化・サービスの向上を目指していく。
撮影:小林優多郎
福祉プラットフォームを展開するベンチャー・ウェルモは8月22日、11.7億円の資金調達(シリーズB)を実施したと発表。同社が実施した資金調達の累計額は約17億円に達する。
ウェルモの累計資金調達額は約17億円。
出資した主な企業は、あいおいニッセイ同和損保、アカツキ、グローバルキッズCOMPANY、コニカミノルタ、eumo、LINE Venturesなど。そのうち、あいおいニッセイ同和損保とコニカミノルタについては、新規のアライアンスを締結した。
ウェルモは、主に介護サービスプラットフォーム「MILMO」や人工知能を活用したケアプラン作成支援の「ケアプランアシスタント」、障害児童支援・教育を行なう「UNICO」を展開。今回の増資および新規アライアンスは主に、前者2つの介護業界向けサービスに関する取り組みとなる。
コニカミノルタとの協業で介護AIは現場のデータを手にする
コニカミノルタは2016年4月から介護業界に進出している。
注目の取り組みの1つと言えるのが、コニカミノルタとの協業だ。
コニカミノルタ自身も2016年4月から介護業界に進出しており、自社の各種センサー類を介護福祉施設に設置。入居者の状況をモニタリングすることで、より安全な介護サービスの提供と現場スタッフの業務改善に取り組んでいる。
一方、ウェルモのケアプランアシスタントは、介護支援専門員(通称・ケアマネージャー)が利用者に対してどんな介護サービスが必要かを定める「ケアプラン」の作成を人工知能がサポートするもの。従来は1人あたり4、5時間かかると言われているケアプランの作成を短縮化できるとしている。
ウェルモのケアプランアシスタントの概要。
ケアマネージャーは各都道府県ごとの試験への合格や実務経験が必要となるため、要介護者に対して数が少ないと言われる介護従事者の中でも限られた人材だ。ケアマネージャーを支援することは、介護業界全体の効率化につながる。
ケアプランアシスタントは決して「ケアプランを作成・決定するサービス」ではなく、ケアマネージャーに提案するサービスに留まるが、介護という人命に関わる業務である以上、その提案内容の精度は非常に重要視される。
コニカミノルタが取得している現場のデータを、ケアプランアシスタントに活かす。
従来のケアプランアシスタントの人工知能は、既存のケアプランデータや医療看護・介護・リハビリ分野のエビデンスに基づいた知識データをもとに学習をし、介護サービスを提案するものだった。
しかし、コニカミノルタとの協業で、実際の要介護者のリアルな定量データが含まれるようになることで、より精度の高い提案が可能となる。
ウェルモ社長の鹿野佑介氏はコニカミノルタとの提携について「(従来、ウェルモには)ハードウェアの強みはなかった」と振り返り、コニカミノルタの持つセンサー・IoT技術への期待感を語った。
介護にまつわる社会課題の解決にテクノロジーの力は必要
写真左からアカツキ執行役員の石倉壱彦氏、あいおいニッセイ同和損害保険副社長の黒田正実氏、グローバルキッズCOMPANY社長の石橋宜忠氏、ウェルモ社長の鹿野佑介氏、eumo代表の新井和宏氏、コニカミノルタの市村雄二氏、LINE Venturesの木村正博氏。
その他の出資者もウェルモとの提携など、より強い関係を模索していく。
とくに、1月に医療事業への進出を発表し、遠隔健康医療相談サービスを提供する予定のLINEは「LINEも福祉とヘルスケアには関心がある。パートナーシップについても積極的に議論していく」(LINE Venturesの木村正博氏)と、前のめりな姿勢を見せていた。
介護業界では、高齢化社会による要介護者の増加、働き手の減少、業務内容の過酷さなどが顕著に表れている。人工知能やIoTなどのテクノロジーを、現場レベルで実装する「科学的介護」の実現が急務だ。
(文、撮影・小林優多郎)