分厚い壁に守られた、ロシア大統領の官邸「クレムリン」に行ってみた

クレムリン

Vladimir Gerdo\TASS via Getty Images

  • クレムリンは、ロシアの首都モスクワの中心部にある城塞だ。15棟以上の建物、20の塔を擁する。敷地を取り囲む城壁は総延長2キロを超え、最大で6.5メートルの厚みがある。
  • 1991年以降、クレムリンはロシア大統領の官邸だ。
  • クレムリンの警備にあたるのは、精鋭部隊だ。隊員になるには、6メートルほど離れた場所のささやき声を聞き取れなければならない。
  • 実際にクレムリンを訪れて筆者は、美しい宮殿や大聖堂、博物館、庭園に目を奪われた。

クレムリンは、ロシアの首都モスクワの中心に位置する要塞だ。15棟を超える建物、20の塔を擁し、総延長2キロ以上、厚みは最大6.5メートルの城壁に囲まれている

ロシア大統領の官邸とされているが、実際、プーチン大統領はここには住んでいない。

「城塞」を意味するクレムリンはロシア全土に数多く存在するが、モスクワのクレムリンはその知名度で群を抜いている。

先日、ロシアを旅した筆者は、入場料700ルーブル(約1200円)を払って、クレムリンの一部を見学した。中の様子を写真とともに紹介しよう。


クレムリンは、ロシアの首都モスクワの中心部にある城塞だ。

クレムリン外観

Shutterstock/OlegDoroshin

ロシア大統領の官邸だ。

広さ約28万平方メートル。少なくとも15棟の建物、20の塔、複数の庭園で構成されている。

地図

Google Maps

城壁の厚みは、最大で6.5メートルある。

大統領官邸とされているクレムリンだが、プーチン大統領はここには住んでいない。

プーチン大統領

Sputnik/Alexei Druzhinin/Kremlin via REUTERS

アメリカの大統領は実際、ホワイトハウスに住んでいるが、ロシアの大統領はクレムリンに住んでいない

プーチン大統領のモスクワでの住まいは、モスクワ郊外のノボ・オガリョボにあり、高い壁で厳重に守られた邸宅は常に警備員がパトロールしている。

クレムリンは、「大統領連隊」と呼ばれる精鋭部隊によって守られている。

精鋭部隊

Stanislav Krasilnikov\TASS via Getty Images

大統領連隊の一員になるのは簡単ではない。

ロシア紙『ロシア・ビヨンド』によると、応募者は一定のBMIの基準を満たさねばならず、身長は174~189センチでなければならない。また、約6メートル先のささやき声を聞き取れなければならないという

6月にロシアを旅した際、筆者はモスクワのクレムリンを見学した。

チケット売り場

Katie Warren/Business Insider

チケット売り場は、トロイツカヤ塔の入り口近くの城壁の外にある。

大統領官邸と政府庁舎は非公開だが、敷地内の博物館や歴史的な建物、教会などは、チケットを買えば見学できる。

列に並んで10分弱でチケットを買うことができた。購入したのは、大聖堂広場の建築群を見学できるチケット。700ルーブル(約1200円)だった。

大聖堂広場の入場チケット

Katie Warren/Business Insider

クレムリンのチケットは、見学できる区画ごとに5種類ある。

  1. 武器庫:1000ルーブル。王位を象徴する品や式典の時に王族が身につけた礼服、ロシア製の金や銀の器、儀式用の武器や鎧などを展示する博物館が見学できる。
  2. 大聖堂広場の建築群:700ルーブル。
  3. 特別展:500ルーブル。
  4. 新クレムリン広場:250ルーブル。
  5. イワン大帝の鐘楼:350ルーブル。

筆者は2番目の「大聖堂広場の建築群」を選んだ。事前に読んださまざまなレビューで、クレムリンの中でこの区画が最も美しく、興味深いとされていたからだ。

クレムリンに入る前にセキュリティーチェックがあり、25分ほど待たされた。

セキュリティーチェック

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セキュリティーチェックではまず手荷物をベルトコンベヤー式のスキャナーにかけ、その後、全身スキャナーを通る。

セキュリティーチェックが済むと、ほかの観光客の後についてトロイツカヤ塔を抜け、城壁の中へ。

塔

Katie Warren/Business Insider

クレムリンでは、要所要所に物見やぐらの役割を果たす塔が20カ所設けられている。その大きさはさまざまで、1485年から1495年の間に建設された。それぞれに名前が付いている。

トロイツカヤ塔を出ると、最初に目に入ってきたのは、威圧感のある、いかにもソ連時代を思わせる国立クレムリン宮殿だった。

国立クレムリン宮殿

Katie Warren/Business Insider

1961年に完成したこの宮殿は、クレムリンの敷地内で最も新しい建物だ。

国立クレムリン宮殿はソ連時代、国家行事や共産党大会を開催するために建設されたが、現在はコンサートやオペラの会場として使用されている。

クレムリン宮殿の写真を撮る人たち

Katie Warren/Business Insider

この建物の大部分は地下にあり、最も深いところでは地下約15メートルに達するという。

クレムリンの中核をなすのが、「大聖堂広場」と呼ばれる区画だ。

大聖堂広場として知られているエリアの様子

Katie Warren/Business Insider

大聖堂広場には、生神女就寝大聖堂や聖天使首大聖堂、生神女福音大聖堂、祭服教会、総主教の宮殿の中にある十二使徒教会、イワン大帝の鐘楼の他、展示ホールなどがある。

ロシアを訪れるまで、筆者はクレムリンについてほとんど何も知らなかった。国立クレムリン宮殿のような、ソ連風の威圧感のある建物ばかりだろうと思い込んでいた。

クレムリン

Katie Warren/Business Insider

だが、比較的新しい国立クレムリン宮殿は、クレムリンの建物群の中では明らかに異色の存在だ。

生神女就寝大聖堂は、モスクワの宗教的中心として知られる。

生神女就寝大聖堂

Katie Warren/Business Insider

皇帝の戴冠式や戦勝を祝う礼拝がこの大聖堂で行われた。

イワン大帝の鐘楼は、建設に300年かかったという。

イワン大帝の鐘楼

Katie Warren/Business Insider

鐘楼の内部は、クレムリンの成り立ちを時系列で展示した博物館になっている。 残念ながら筆者が訪れたときは休みで、中を見ることはできなかった。

筆者は1時間ほどかけて、大聖堂広場のさまざまな聖堂や美術館を見て歩いた。

大聖堂広場

Katie Warren/Business Insider

聖天使首大聖堂には多くのロシア大公やツァーリが埋葬されている。生神女福音大聖堂は、王族の私的な礼拝堂としての役割を果たした。

大聖堂広場では複数のツアー客の集団に出くわしたが、外は広々としていて、人混みに悩まされることはなかった。

ツアー客

Katie Warren/Business Insider

一方で、大聖堂の中はかなり混雑していたため、長居はしなかった。

大聖堂の中の様子

Katie Warren/Business Insider

大聖堂広場からアレクサンドロフスキー庭園へ向かった。色とりどりの花が咲く花壇や緑豊かな背の高い木々、手入れの行き届いた芝生が印象的だ。

アレクサンドロフスキー庭園

Katie Warren/Business Insider

アレクサンドロフスキー庭園はモスクワ最古の公立公園だ。

園内の一部は立ち入りが制限されている。ヘリコプターが着陸する音が聞こえた。

公園内にあるヘリコプターが着陸可能なスペース

Katie Warren/Business Insider

モスクワ・タイムズによると、2013年にプーチン大統領がクレムリンにヘリコプターの発着場を設けた。これは、モスクワ郊外の私邸とクレムリンを行き来する大統領の車列が交通渋滞を引き起こしているとの苦情を受けての措置だったという。

庭園の斜め向かいには旧元老院がある。青いランプをルーフに乗せた黒塗りの公用車が数多く停められていた。

クレムリン上院の外に停められた黒い車

Katie Warren/Business Insider

旧元老院はソ連時代には閣僚会議の場所として使われていた。

1991年以降はロシア大統領の官邸となっている。一般には公開されていない

筆者は、東側の城壁にあり、赤の広場へと続くスパスカヤ塔を通ってクレムリンをあとにした。

スパスカヤ塔

Katie Warren/Business Insider

筆者としては、武器庫や特別展を見学しなかったことを特に残念には思わなかったが、博物館やロシアの歴史に特に興味がある人にとっては、追加で訪れる価値はあるだろう。

700ルーブルという入場料を考えると、クレムリンは筆者がこれまでに訪れた世界の主要都市の観光地の中でもかなり良心的な部類に入る。個人的には、モスクワ随一の観光スポット「赤の広場」にも引けを取らないと感じた。ただ、赤の広場はインスタグラムでも盛んに取り上げられているため、現地に行く前からよく画像を見ていたが、クレムリンはさほど混雑していないし、筆者にとっては新鮮に映ったという部分もあるだろう。

[原文:The Kremlin is the official residence of President Vladimir Putin. It’s protected by an elite military regiment and has walls up to 21 feet thick — here’s a look inside.

(翻訳: 長谷 睦 /ガリレオ、編集:山口佳美)

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