コンビニクライシス:実証開始の「深夜無人ローソン」には日本の未来があった

神奈川県のローソン氷取沢店。

深夜無人(省人化)店舗実験が2020年2月29日まで行われる神奈川県のローソン氷取沢町店。

撮影:鈴木淳也

ローソンは8月1日の午前0時から、神奈川県横浜市内のローソン 氷取沢町店において深夜時間帯の無人運営店舗実験を開始した。

正確に表現すると、無人運営時間帯もバックヤードに店員は少なくとも1名は常駐している。つまり、厳密に「無人」ではない。発注業務などの裏方作業をこなしており、店内の様子をそのときどきで監視している。

狙いは、“売り場”の無人化を行うのが今回の実験の目的であり、正確には「深夜時間帯の省人化運営」というのが正しい。

とはいえ、実証は、小売りをめぐるさまざまな社会課題へのアンサーの側面もある。スタート直後、近隣住民も利用するリアル実証「無人運営店舗」の可能性を探った。

店舗入り口には深夜の売り場無人化と入店方法

店舗入り口には深夜の売り場無人化と入店方法を紹介する告知などが大量に掲示されている。

撮影:鈴木淳也

深夜発売中止商品の看板

深夜販売が中止される商品があり、それらを取り扱う近隣店舗(2.4km先)を紹介している。

撮影:鈴木淳也

見た目は普通のローソン店舗。しかし、あちこちに工夫

店内のスマホレジ

氷取沢町店は全国に18店舗あるという現金対応セルフ設置店。スマホアプリを使ったスマホレジによる決済にも対応。

撮影:鈴木淳也

ローソン氷取沢町店は、一見しただけでは普通のロードサイド店ローソンと変わらない。

ただ、日本ではまだ全国で18店舗だけという「現金対応セルフレジ」が設置され、スマホアプリを使った「スマホレジ(旧スマホペイ)」によるセルフチェックアウトが可能という点で、先進的な店舗といえる。

このほかの違いとして、監視カメラの設置数がやや多めになっていること、そして深夜無人運営用に、入り口の自動ドアにセキュリティー端末が設置されている。

とはいえ、注意深く見なければ、ごくごく普通のコンビニでしかない。

天井の監視カメラ

レジ周辺には集中的に監視カメラが設置されている。カメラ設置数は通常のローソン店舗が7〜8個なのに対し、氷取沢町店は29個とかなり多めになっている。

撮影:鈴木淳也

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店内の様子。これだけを見ると普通のローソン店舗と変わりない。

撮影:鈴木淳也

深夜になるとローソン「売り場無人化」が始まった

レジにカーテンがかかる

深夜0時となって通常営業を終了して無人化対応のためにカウンターにカーテンをかける。

撮影:鈴木淳也

この「普通のローソン」の状況は深夜時間帯になると一変する。

まず閉店時間が近づくと、店舗カウンターを閉める片付けが始まり、深夜0時になったタイミングで、カウンター全体にカーテンがかけられる。また、アルコール販売コーナーは封印され、Loppiの端末もシャットダウンする。

郵便ポストにはカバーがかからない

郵便ポストだけはカバーがかからないよう工夫されているようだ。なお、氷取沢町店は店舗外すぐの場所に普通のポストもある。

撮影:鈴木淳也

売り場の無人化準備が完了すると、入り口の端末の液晶画面が「防犯強化中」から深夜時間帯の入店方法を紹介するものへと切り替わり、自動ドアがロックされる。

特徴としては、「無人運営時間帯に利用できないコーナーをカバーで封印する以外、日中の店舗状況から大きく変化しない」ことが挙げられる。冷蔵庫やキャビネットのカバーは特別なものではなく、安価に導入が可能で、カウンターもカーテンレールとカーテンが追加されただけだ。

おそらく、店舗への追加費用負担をできるだけ抑え、レイアウト変更を伴うような大きな刷新なしに無人運営化(省人化)をFCオーナーに提案できるよう工夫されているのだろう。

アルコール飲料のコーナーにはシートが。簡易的な構造なのは既存の冷蔵庫をそのまま流用するため。

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撮影:鈴木淳也


こちらも(やや高価な)アルコール飲料のコーナー。キャビネットを利用しているため、やや厳重にして施錠できるようになっている。

やや高価なアルコールにはカバー

撮影:鈴木淳也


Loppiの端末も深夜帯は利用が中止される。有人対応が行えないためとみられる。

Loppiも停止

撮影:鈴木淳也


店舗入り口にある入店管理の端末画面には有人営業時に「防犯強化中」と表示される。無人時間帯になると表示が切り替わる。

店舗入り口の表示

撮影:鈴木淳也


無人化後に、地域住民も来店し買い物を楽しむ姿も

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無人運営開始直後。液晶の画面が切り替わり、自動ドアがロックされる。

撮影:鈴木淳也

すべての準備が完了すると無人運営がスタートする。自動ドアはロックされ、所定の方法を採らないと入店できなくなる。

ローソンアプリを導入済みのユーザーであれば、ホーム画面一番下の実証実験を紹介するアイコンをタップすることでQRコードを表示でき、これで入店できる。

もしアプリを持っていないユーザーの場合、入り口の端末にあるカメラボタンを押してカメラを起動し、顔が枠内に入るようにしてもう一度ボタンを押すことで顔撮影が行われ、入店が可能になる。

顔認証においてボタンを2回押させるのは「写真撮影に同意してもらうことを意図したもので、『勝手に撮影された』ということがないようにしている」(ローソン広報)という。

また、常連客向けにQRコードの印刷されたカードを配るケースもあるようだ。このほか、自動ドアのロックが解除された後は、開いたドアが閉じるまでの間は出入りが自由になっている。そのため、1回の認証で複数人が出入りできるようになっている。中にいた人が退店時に、開いたドアにそのまま入店することも可能だ。

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この時間帯に入店する方法は2通り。ローソンアプリをスマートフォンにダウンロードしている場合はホーム画面一番下のアイコンをタップすることで入店用QRコードが表示されるのでそれを使うか、自身の顔写真を撮影して入店するかのいずれか。

撮影:鈴木淳也

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QRコードをかざすと認証完了後に自動ドアのロックが解除されて入店できるようになる。なお、ロック解除されたあとは自動ドアが閉まるまで誰でも出入りできるようだ。

撮影:鈴木淳也

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操作パネルの様子。写真撮影の場合、いったん光っているボタンを押して撮影画面を表示させ、その後さらに自分の顔を枠内に収まるようにしてボタンを押すことで撮影が完了して自動ドアのロックが解除される。一番下のインターフォンは搬入業者がバックヤードの店員を呼び出すためのもの。

撮影:鈴木淳也

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モバイルアプリなしで入店する場合、このようにお得意様向けQRコードの提供も行われるようだ。

撮影:鈴木淳也

無人運営の時間帯の会計は、

  • セルフレジ
  • または、ローソンアプリから呼び出せるスマホレジ(旧スマホペイ)

のいずれかの機能を使って会計を行う。スマホレジでは、登録済みのクレジットカードで自動会計となるが、セルフレジでは電子マネーのほか、NFCを使ったクレジットカード決済、さらに「現金」での決済も可能となっている。

そのため、決済手段がなくて困るということはまずないだろう。

実際、無人運営がスタートした直後から、地元住民を含むもの珍しさでやってきた人々が次々と入店しては、買い物を済ませて出ていった。

現金決済を利用する人も多く、特にクレームや困った様子もなく会計を済ませていく。途中で警察が見回りにきたのか、訪問した際には、興味深そうに顔認証を試しながら買い物を済ませて去って行った。これを見る限り、現状では特に無人運営の違和感もなく多くの人には受け入れられそうだ。

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無人運営中の時間帯はセルフレジを使うことになる。現金決済もできるので、ほとんどの客はスムーズに買い物を済ませていた。なお、仮にアルコール製品を棚から持ってきてもセルフでは会計できないようになっている。

撮影:鈴木淳也

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ローソンアプリを導入しているユーザーはスマホレジ(旧スマホペイ)を使った方が早い場合もある。QRコードで入店処理をした後、商品のバーコードを読み取って登録していく。

撮影:鈴木淳也

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スマホレジの場合、会計はローソンアプリに登録されたクレジットカードを利用するのでその場で会計が終わる。退店時にはアプリに表示されたQRコードを読み込ませて完了。

撮影:鈴木淳也

ライトが一部消えた看板

細かい話だが、氷取沢町店では深夜時間帯になると「酒・たばこ」の灯りが消える。これは無人運営用に点灯や消灯の制御ができるよう、少し加工が施されているという。

撮影:鈴木淳也

なお前述のように、正確には「無人化」ではなく「省人化」であり、バックヤードには常に誰かが待機して、裏方の業務をしている。今回の実験では無人化運営の時間帯に突入する前に商品の補充を済ませていたのか、棚が満杯状態で充実していた。

ただ、無人運営時間帯も業者は来店しており、インターフォン越しに搬入の連絡を取り合っている様子を見ることができた。

今後の無人化の広がりにより搬入タイミングやトラックドライバーの配送ルートが変化することが予想され、このあたりの対応も気になるところだ。

人手不足「コンビニクライシス」への回答になるか?

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昨今、コンビニエンスストアの24時間運営を巡って運営本部とフランチャイズ(FC)店舗の間でその是非が争われている。今後、労働人口不足が日本全体を襲うことが予想される中で、「人材確保」という視点から先んじて行われるのが今回のローソンの実験だ。

しかも、氷取沢町店は本部直営ではなく、FC店舗となっている点で特徴がある。

ローソンはFC比率が比較的高いことで知られるが、今後省人化運営を進むうえでの試金石となることが、氷取沢町店での実験では期待されている。

コンセプトに理解のあるオーナーの了承の下、地元警察などを含む近隣住人への説明や理解を得るなかで、今回の実験は実施に至った。

問題点の洗い出しや改善を行いつつ、省人化運営のノウハウや機材を「パッケージ」とし、FC全体に横展開するための礎とする。

実験期間は2020年2月29日まで。車などの自力で移動できる手段が必須ではあるが(深夜帯は公共交通機関がなくなるため)、興味ある方はぜひ訪問してみてほしい。

編集部より:初出時、氷取沢店としておりましたが、正しくは氷取沢町店となります。 2019年8月27日 12:55

(文、写真・鈴木淳也)

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