メグビーはさまざまな顔認証サービスを提供している。画像は同一人物かを判定するもの。筆者の10年以上前の2枚の写真は同一人物と判定された。
https://www.faceplusplus.com.cn/face-comparing/
中国の人工知能(AI)企業でユニコーンの北京曠視科技(メグビー)が8月25日夜、香港証券取引所に新規株式公開(IPO)を申請した。AIを専門とする企業の上場申請は中国で初めてとあって、上場申請で提出された企業財務の内容にも注目が集まっている。
筆者の息子の1歳のときと16歳のときの写真は、「同一人物の可能性は低い」と判定された。
メグビーは1988年生まれの印奇氏が創業。ディープランニングを駆使した顔認証技術を主力とする。同社商品の「Face++」は骨格や毛細血管なども用いた顔認証を行うプラットフォームで、金融分野での身分証明にも使えるほどの精度と評価されている。アリババやスマホメーカーのシャオミ(小米、Xiaomi)などに技術を提供し、2018年に中国で製造された顔認証機能付きアンドロイドスマホの7割以上に、メグビーの技術が使われた。
現在の筆者(右)と13年ほど前の筆者(左)も同一人物と判定された。
https://www.faceplusplus.com.cn/face-comparing/
メグビーは創業以来9回にわたってアリババなどから資金調達。評価額は45億ドル(約4740億円)に達する。直近では5月のシリーズDラウンドで、700億円超を調達したと報じられた。
メグビーが25日に香港証取に提出した目論見書によると、同社はIPOで10億ドルの調達を計画する。
中国ではAI企業による資金調達が活発で、メグビーの競合でもある顔認証分野のユニコーンスタートアップ商湯科技(センスタイム)にはアリババ、ソフトバンクも出資している。一方で、AIスタートアップの評価額と実力が見合っているのかは度々疑問視されており、今回、メグビーがIPO申請書類の中で公開した業績には大きな注目が集まった。
目論見書によると、同社の売上高と純損益は以下のように推移している。
2019年は前半だけで赤字額が52億元(約767億円)に達するが、同社や中国メディアは赤字の理由を「出資者に発行している優先株が国際会計ルールでは株主の負債とされるため、評価額が上がるにつれて負債が上昇する。IPOによって優先株が普通株に変換されると、赤字の相当部分が解消される」と説明している。
(文・浦上早苗)