楽天モバ「行政指導」で総務省は“仕事をした気”になっていやしないか?

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東京・世田谷区にある楽天クリムゾンタワー。

撮影:伊藤有

総務省は8月26日、楽天モバイルに対し、携帯電話の基地局整備を急ぐように行政指導したと発表した。指導はこれで3回目だ。

楽天モバイルは10月1日に第4のキャリアとして携帯電話サービスを開始する計画だ。当面は東京23区、名古屋市、大阪市のみ「自社」で基地局を設置。それ以外の地域と地下鉄、地下街などは「KDDIのネットワークを借りる」予定となっている。

しかし、東京23区、名古屋市、大阪市に限定していても、基地局整備が難航しており、総務省がしびれを切らした格好だ。

他キャリア関係者も心配する「基地局用地の不足」

楽天三木谷社長

楽天の三木谷浩史社長。世界初のフル仮想化ネットワークによるキャリア参入は世界から注目を集めている。技術は生み出せても、基地局を建てる「用地」はそう簡単に確保できない。楽天の悩みは深い(MWC2019にて撮影)。

撮影:石川温

8月8日に開催された楽天の決算会見で、基地局建設の進捗について聞かれた三木谷浩史社長は「10月のローンチまでには完全に間に合う」としていた。

楽天では今年度末までに3432局の基地局を整備する計画を総務省に提出しているが、8月27日現在、総務省の「電波利用ホームページ」によると、検索しても全国に566局しか出てこない(電波利用ホームページは情報更新が遅いため、実際はもう少し数が多いと思われる)。

具体的に見ていくと、港区は66局あるものの、墨田区は3局、北区は2局、葛飾区は1局とかなり心もとないところも見受けられる。

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総務省の「電波利用ホームページ」

先週末、他キャリア関係者と基地局建設の話になったのだが、「いま、大手3社が5Gの基地局建設に着手しているが、本当に基地局を建てる場所がない。我々でも新しい場所を探すのに苦労しているのに、楽天は相当、大変なのではないか」と心配していた。

果たしてあと1カ月で、本当に「完全に間に合う」(三木谷社長)のか、楽天の手腕が問われる局面だ。

「行政指導」の紙切れ1枚で問題解決はできない

総務省

3度にわたる「行政指導」で仕事をした格好になっている総務省。しかし、本当にそうだろうか?

撮影:今村拓馬

今回で3回目となる総務省からの行政指導だが、本当に楽天だけが責められる立場なのかという疑問もある。なんだか、総務省に追い詰められた楽天が不憫で仕方ないのだ。

そもそも、すでに大手3社ですら、新規の基地局建設に苦労しているのは、総務省も承知のはずだ。にもかからず、このタイミングで、第4のキャリアを作ろうと「新規参入事業者」を募り、楽天に免許を渡すというのは、総務省もあまりに無責任ではないか。

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既存3キャリアの中に割って入らせ、「第4のキャリア」参入させようというのだから、行政も最大限の支援をする覚悟が必要だろう。

撮影:小林優多郎

官邸ならびに総務省は「大手3社だけでは寡占で料金も高止まりしている。第4のキャリアを入れることで料金競争を促進させよう」と、楽天に免許を与えたのであれば、安易にすぎる話だ。

すでに大手3社による顧客獲得競争が終焉を迎える中、全国にイチから基地局を設置し、何千億円と投資をして、新規参入で大手3社に戦いを挑ませること自体が無謀だ。

箱根駅伝に例えるなら、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクは第10区の終盤、大手町・読売新聞社前のゴールに差し掛かろうとしている。

一方の楽天は、まだ第1区のスタートも切れていない状態だ。これで、芦ノ湖を往復し、(正攻法だけで)大手3社に追いつこうというのは、少々無茶ではないか。

アメリカは4キャリア体制をどう「維持」したか

ソフトバンク スプリント

ソフトバンク参加の米スプリントとT-Mobile合併承認も、さまざまな「4キャリア維持」のための条件付きで承認された経緯がある。

撮影:小林優多郎

アメリカに目を転じると、ベライゾン、AT&T、T-Mobile、スプリントという4社体制だったが、スプリントが経営に行き詰まり、すったもんだの末に、ようやくT-Mobileとスプリントが合併しようとしている。アメリカという巨大な市場でさえも、4社体制は無理があるということだろう。

ただ、アメリカが素晴らしいのはFCCや司法省といった規制当局が、4社体制を維持し、競争環境をなんとか継続させようと、T-Mobileとスプリントに対して、プリペイドユーザーや周波数、販売網の一部を4社目となる衛星放送会社であるDishに引き渡すのを「合併の条件」としたことだった。これにより、Dishも何とか4社目として、大手3社に戦いを挑む舞台には立つことができるわけだ。

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「準備はいいか?」と問う楽天モバイルのコーポレートページ。

撮影:伊藤有

総務省も楽天に免許を与えただけで「あとは基地局建設、頑張って」「計画が遅れたら承知しない」と一方的に行政指導を出すだけでは、仕事をしたことにはならないだろう。行政指導を受けたところで、基地局の用地候補が増えるわけではないからだ。

総務省が本気で楽天を第4のキャリアとして、大手3社の対抗軸にしたいのであれば、もっと楽天に対して優遇してもいいのではないか。

周波数はもっと必要だろうし、販売方法なども、10月以降は大手3社は端末割引が規制される中、楽天だけが除外されてもいいぐらいだ。基地局建設も、他社設備との共用を促進させるぐらいの解決策も必要だろう。

それぐらい、楽天を甘やかさないことには、大手3社にはそう簡単に対抗できない。

1つ確実に言えるのは、行政指導の紙切れ一枚では何の解決にもならないことだ。楽天を4社目として育てるためにも、総務省も自ら抜本的なテコ入れをしていくべきだ。

(文・石川温)

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