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インドネシア、地盤沈下の進むジャカルタから森林破壊の進むカリマンタンに首都移転へ

冠水した道路を移動する人々

インドネシアのジャカルタで、冠水した道路を移動する人々(2017年12月6日)。

REUTERS/Beawiharta

  • インドネシアはその首都をジャカルタからカリマンタン島(別名、ボルネオ島)の東カリマンタンに移す。
  • ジャカルタは現在、毎年最大で6.7インチ(約17センチ)沈んでいて、海面上昇には特に脆弱だ。
  • ジャカルタは深刻な大気汚染にも苦しんでいる。これはカリマンタン島も同じだ。
  • カリマンタン島では、熱帯雨林の焼失や伐採により、大量の二酸化炭素が発生している。環境問題の専門家の中には、新たな住民が来ることによって残りの森林に悪い影響が出るのではないかと懸念する声もある。

インドネシアは海面上昇と戦っている。首都ジャカルタは、2050年までにその広範囲が沈む可能性がある。中でも比較的貧しい人々が暮らす地域では、10年以上にわたって洪水が相次ぎ、住宅や乗り物、店が被害を受けてきた。

一部の洪水は、人々の命を奪ってきた。2007年の洪水では約80人が死亡し、推定7万戸の住宅が浸水した。2013年にも大雨で堤防が決壊し、50人近くが犠牲となった。

インドネシア政府は2019年4月、ジャカルタの負担は大きくなり過ぎたとし、330億ドル(約3兆5000億円)の首都移転計画を発表した。そして8月26日、移転先をカリマンタン島(別名、ボルネオ島)の東カリマンタンとすることを明らかにした。この島はインドネシア、マレーシア、ブルネイの3つの国が共有している。

新たな首都インフラの建設は2021年に始まる予定だ。しかし、環境問題の専門家からは早くも、ボルネオの森林を危険にさらし、二酸化炭素の排出量を増やすのではないかとの懸念の声が上がっている。

洪水はジャカルタよりも少ないが……

ジャカルタは世界の中でも最も深刻な大気汚染に悩まされている都市の1つだ。だが、それはカリマンタン島も同じだ。

ただ、洪水に関しては、カリマンタン島は毎年最大で6.7インチ(約17センチ)地盤が沈んでいるジャカルタよりは安全だと見られている。ジャカルタでは水道にアクセスのある住民は、全体のわずか4分の1だ。つまり、多くの住民は地下を掘らなければならない(さらに、その方が水道施設にお金を払うよりも安い)。その過程で地盤沈下が起きている。

ジャカルタの冠水

2019年2月、ジャカルタ。

Donal Husni/NurPhoto/Getty Images

しかし、カリマンタン島に新たな首都を作る最大のリスクの1つは森林破壊だ。森林破壊によって、すでに世界有数の温室効果ガス排出国であるインドネシアの排出量がさらに増える可能性がある。

カリマンタン島の森林の大部分は、他の熱帯雨林の約12倍の炭素を含む湿地帯の1つ、泥炭地が占めている。

わずか1ヘクタールの泥炭地を取り崩すだけで、約6000トンの二酸化炭素が放出される可能性がある。

油やし農園への道を作るために熱帯雨林が焼かれたり、伐採される中、森林破壊は数十年前からカリマンタン島で問題になっていた。島では1973年から2015年の間に、農園を作るために約1万6000平方マイル(約4万平方キロメートル)もの森林が失われた(やし油は世界で最も広く消費されている植物油で、ディーゼル燃料や菓子類、化粧品、せっけんといった日用品にも使われている)。

燃やされる森

中部カリマンタンで、油やし農園を作るために燃やされる泥炭地の森(2015年11月1日、インドネシア)。

Ulet Ifansasti/Getty Images

森林破壊は、一酸化炭素やシアン化物、アンモニアなどとともに大量の炭素を排出する。2010年にはカリマンタン島で、油やし農園を作るために森が燃やされ、1億4000万トン以上の二酸化炭素が放出された —— これは2800万台の自動車が1年間に放出する量とほぼ同じだ。

新たな建設は環境を脅かす可能性も

やし油の価格が低下したことで、カリマンタン島の森林破壊は近年、そのスピードが落ちている。だが、環境の専門家の中には、新たな住民が島に来ることで、残りの健全な森林を脅かす可能性があると懸念する声もある。

インドネシア当局によると、新たな首都となることで、カリマンタン島の住民は最大で150万人増えるという —— その大半は、ジャカルタからやってくる政府職員とその家族だ。こうした新たな住民を受け入れるため、インドネシアは数十万エーカーもの土地を開発する計画だ。

当局は、森林保護地域には一切手を出さないと約束しているが、それでも泥炭地の開発は二酸化炭素を排出する。また、建物や高速道路を建設するには、土地の水はけを良くする必要もあるだろうが、そうすることで泥炭が乾燥し、火災に弱くなる。道路建設はさらに森林破壊を加速させるだろう。

シドニー大学の講師、ペトゥル・マトウシュ(Petr Matous)氏は、「森を横切る新たな道路は森林地域を分断し、周辺のさらなる森林破壊を招くだろう」とブルームバーグに語った。マトウシュ氏は、「熱帯雨林が一度破壊され、周辺の気候が変わってしまえば、山火事が増えるだろう」と指摘する。

首都の移転先が発表される前から、地元住民も同様の不安を感じていた。

中部カリマンタンに住むある中学生は4月、「今は使われていない土地や森林全てが使われるでしょう」とBBCに語った

「カリマンタンは世界の肺です。残された森をわたしたちは失うのではないかと心配です」

[原文:Indonesia is spending $33 billion to move its capital from a sinking city to an island where forests have been burning

(翻訳、編集:山口佳美)

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