7月12日にオープンした香港1号店。
撮影・大塚淳史
ドン・キホーテが香港でも早速、香港人の心をつかんでいる。
7月12日、ドン・キホーテの香港1号店がオープンした。開店から1カ月が経過した8月中旬、店舗を訪れてみると、商品を買おうとする多くの人であふれていた。日本と異なるのは、店内の陳列棚に並ぶ商品群。食料品関係が中心で、食品スーパーのようだった。
ドン・キホーテ香港第1号店は、香港の中心部・尖沙咀(チムサーチョイ)にある。地下鉄駅から徒歩3分ほどで、大通りのネイサンロードに面する。売り場面積は1419.6平方メートルと小規模ではある。
買い物客であふれかえる画期ある店内
店内は人であふれかえっていた。
撮影・大塚淳史
ホテルや他の店舗が入る建物の地下の1フロアに入居し、建物の入り口にはドン・キホーテの海外での屋号「DON DON DINKI」と飾られていた。階段を降りて店内に入ってみると、店内は予想以上に人であふれて大繁盛だった。
フロアに入ってすぐに、日本のドンキとの違いに気づかされる。
目の前に広がる商品の傾向が明らかに異なり、食品が目立つ。入り口の右手にはスイカが一玉88香港ドル(約1188円、1香港ドル=13.5円で計算、以下同レートで計算表示)で大量に置かれていた。中国人や香港人はスイカ好きだからだろうか。
さらに進むと精肉売り場、お総菜や弁当もの、おでん売り場もあった。おでんは1つ8香港ドル(約108円)。野菜、果物、加工食品、調味料、お菓子がところ狭しと並べられていて、そこかしこが人だらけだ。来店客は香港人だけでなく、在住者か旅行者かわからないが、日本人、韓国人など外国人の姿も見かけた。
スイカが88香港ドルで売られていた。
撮影・大塚淳史
化粧品コーナーは日本に比べると小規模
香港ドンキでは化粧品・医薬品コーナーが小さい。
撮影・大塚淳史
奥の方へ進み、レジコーナーの近くでようやく化粧品・医薬品などのコーナーがあった。日本のドンキでの規模に比べると売り場面積は小さいし、商品の種類も少ない。一方で、向かいにはレジが約25カ所ずらりと並んでいた。
筆者の大好物であるお菓子「コリス フエラムネ」があったので1つ購入した。価格4.8香港ドル(約64.8円)、日本での価格60円(税別)とほぼ同じだ。
レジにいた店員に、いつもこの混み具合なのか聞いてみると「この時間帯(平日午後5時頃)は混むわね。皆、晩ご飯の食材に買いに来てるわ」と教えてくれた。
買い物する香港人に感想を聞いてみた。日本のお菓子や総菜を購入した30代女性は、
「今日初めて来ました。日本にも旅行したことがあって、ドン・キホーテで化粧品とか買ったりしました。日本のと比べると小さいですが、香港のドンキも良いですね。化粧品とかもっと置いてあるといいな」
と話した。
別の香港人女性は友人と訪れ、買い物かごの中は日本のお菓子であふれていた。
「ニュースになっていたので、一度様子を見に行こうと来ました」
彼ら含め、他のお客さんに聞いてみると、たいていは初めての来店。開店1カ月が経過し、評判が評判を呼ぶ形となって、初来店客を呼び込んでいるのかもしれない。
日本のドン・キホーテとは別業態
タイムセールが行われていた。日本産の桃、2つで89香港ドル(約1200円)。
撮影・大塚淳史
それにしても、日本のドン・キホーテをイメージしていくと、そのギャップに戸惑う。
日本でもMEGAドン・キホーテで生鮮食品を取り扱っているが、あくまで、電化製品、衣料、化粧品など「さまざまな商品がある中での一つ」だ。ドン・キホーテを運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)の担当者は、そもそも日本向けと海外向けで、業態が異なると説明した。
「シンガポール、タイと香港で『DON DON DONKI(ドンドンドンキ)』という屋号で展開しています。考え方としては『ジャパンブランドスペシャリティストア』で、日本製の商品であったりとか日本向けの商材を扱っているというコンセプトです。日本のドン・キホーテとは別業態ですね。商品構成比も全然異なったものになっています。構成比でいうと8割が、加工食品を含めた食品です」(PPIH担当者)
先に「ドンドンドンキ」の店舗展開を進めるシンガポールでは、既に5店舗出店しているが、繁華街、住宅街と出店エリアによって商品構成比は変えているという。
「ただ、今回香港でオープンしたのは1号店。ですので、今後商品構成を変更する可能性は多いにあります。シンガポールでは何度も改装していて、その都度、構成比を変えています」(PPIH担当者)
日本からの輸入食品でも価格はほぼ同じ
コリスのフエラムネは日本とほぼ同価格だった。
撮影・大塚淳史
香港ドンキでもう一つ驚かされたのが表示価格だ。全ての商品ではないが、日本からの輸入食品がほぼ日本での価格とほぼ同じか、場合によっては日本より低い商品もあった。一般的に海外だと日本からの輸入食品は税金などの関係から、安くても2、3割増し、国によっては日本の2倍の値段がつくこともある。もちろん香港ドンキに並ぶ商品の中にも日本の価格より2割高いものもあった。
「極力価格を抑えられるよう頑張っています。仕入れに関しては、日本国内でも店舗を展開しているので、スケールメリットがあります。メーカーからもまとめて卸してもらえますし。さらに、極力、間を挟まず、直接(物流の)パートナーさんにお願いするなど自社輸入をしています」(PPIH担当者)
やはり店舗面積の小ささや、日本のドンキで大人気であるはずの化粧品などの点数が少ないのでは、香港人もガッカリしないのだろうか。
いくら日本のドンキとは別業態と主張しようが、“日本のドン・キホーテ”と同じと期待して来店する香港人も少なくないはず。
「確かに店舗面積の小ささはあるかもしれませんが、基本的に私どもは日本でもそうですが、自分たちで建物を作るのではなく、空いている居抜き物件を見つけて、条件が合えば入るという形です。ただ、香港1号店に関しては、やはり(繁華街への出店を)意識しました。化粧品など日本での人気売れ筋商品に関しても、今後の検証次第で変わっていくと思います」(PPIH担当者)
海外出店は「していかないといけない」
精肉売り場とガラスの向こうは調理場。
撮影・大塚淳史
香港、シンガポール、タイではドンドンドンキとして展開し、アメリカでも既に「ドン・キホーテ」として進出している。なぜPPIは海外展開を広げているのか。
「日本でも出店は進んではいるが、市場としてはシュリンク(縮小)していく。新規出店というよりは、(子会社の)ユニーと一緒になって業態転換に注力しています。かつ、5年後、10年後を見据えた時に、海外への出店はしていかないといけません。社名を変更した理由もそういった点からです(今年2月1日に、ドンキホーテホールディングスからパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスに変更した)」(PPIH担当者)
香港から日本へのインバウンド客は多い。日本政府観光局の統計によると、2019年1月から7月までに日本を訪れた香港人は75万6800人(前年同期比11%増)で国・地域別で5位。1位中国の442万4400人に比べれば少ないが、香港の人口が約740万人であることを考えると大きな割合だ。
香港ドンキは既に2号店を準備中という。ドンキと香港市場の親和性は、実は非常に高いのかもしれない。
(文、写真・大塚淳史)