アメリカで初の死亡例の報告も —— 知っておくべき電子タバコのリスク

電子タバコにはデバイスや原料、ブランドなど数えきれないほどの種類がある。

電子タバコにはデバイスや原料、ブランドなど数えきれないほどの種類がある。

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  • アメリカの疾病予防管理センター(CDC )と食品医薬品局(FDA)が電子タバコによる肺疾患に関する症例を調査している。
  • 22の州で6月から8月の間に193件の報告があり、そのうち1名が死亡している。
  • 原因は分かっていない。それぞれのケースに共通する電子タバコのブランドや薬品も特定できていない。
  • 電子タバコのリスクは急増する不可思議な肺疾患だけではない。電子タバコが健康にどんな影響を与えるかを紹介しよう。
  • ただし、それでも従来のタバコに比べれば健康への害が少ないようだ

22の州で200人近い人々が、ひと夏の間に蒸気式や加熱式の電子タバコを吸って体調不良を訴えた。イリノイ州では、保健当局が電子タバコに関連があると思われる初の死亡例を報告した。

電子タバコにはさまざまな種類がある。だが、そのせいで調査官が疾患の原因を特定するのが難しくなっている。調査官は現在も疾患の原因となった電子タバコのブランドやデバイスの種類、もしくは薬品を特定できずにいる。つまりこの疾患は、1つの特定の原因によって引き起こされたとも、それぞれのケースが症状の似た別々の疾患だったとも考えられる。

疾病予防管理センター(CDC)は最近のプレスリリースで「症状はよく似ているが、それぞれの症例が共通する原因によるものか、症状の似た別々の疾患かは分からない」としている。

これまでに得られている証拠は、電子タバコが、従来のタバコに比べれば健康への害が少ないことを示している。蒸気式の電子タバコはタバコの葉などを燃やした煙ではなく、熱した蒸気を吸い込む。一般的に電子タバコユーザーは、従来の喫煙者に比べて、取り込む発がん性物質は少ないと考えられている。

電子タバコは何百種類もある

電子タバコには多くの種類のデバイスや、原料、ブランドがある。そのせいで、疾患の原因を特定するのが難しい。

まず、オールインワン型のデバイスがある。オールインワン型の電子タバコは人気が高く、ニコチンを含むJuulやBlu、そして合法大麻のPaxなどのブランドがある。

他にも、パーツを別々に買ってユーザーがデバイスの温度から薬剤までカスタマイズできるタイプの電子タバコがある。この拡張性による危険が指摘されていて、少なくとも2名の死亡に関係している。

最後に、デバイスに注入する成分がある。ワックス状のものや、液体、植物の粉末まで多岐にわたる。使い捨てのカートリッジを使うデバイスがある一方、一部のデバイスはユーザーが好きな液体やハーブを入れることができる。

医療機関に報告されたケースの一部では、症状が出た時、ユーザーは大麻成分を吸引していたと話したという。しかし大麻はまだ多くの州で違法とされているため、大麻成分に関連するケースは多くが報告されていない可能性がある。また、一方でニコチンのみを使用していたという事例もある。

多くのケースで患者は、搬送されるまでに、呼吸が困難になったり、呼吸が短くなったり、胸に痛みを感じるなどの症状が徐々にあらわれたという。一部の患者は嘔吐や下痢など消化器に問題があらわれたとも話している。

新たな流行ゆえに不明な点も

電子タバコは比較的最近のもので、この10年の間に人気になった。目新しいがゆえに、研究者は電子タバコが脳や体にどういった影響を及ぼすかは分かっていないと警告している。

最近発表された、電子タバコの健康への影響についての包括的な報告書では「電子タバコが健康へ及ぼす影響を検証するための科学的な証拠を集める時間が足りなかった」と著者が述べている。

最近になって、発がん率の上昇、有害金属の吸引、そして心臓発作のリスク上昇まで幅広い健康リスクが指摘されている。

例えば今年の春、一部の人気電子タバコの蒸気について調査していた研究者は、鉛などの従来のタバコと同様の有害金属が含まれている証拠を発見した。彼らはさらに、少なくともいくつかの毒物が電子タバコのフィルターをくぐり抜けていることを示す証拠を見つけた。その報告はEnvironmental Health Perspectivesに掲載された

アメリカ労働安全衛生局(OSHA)は、継続して高い濃度の有害金属を吸引することは、肺、免疫、肝臓、心臓、そして脳の健康被害や一部のがんと関連性があるとしている。

American Journal of Preventive Medicineに掲載された昨年秋の調査の中で、科学者たちは電子タバコと心臓発作を起こす可能性の上昇との関連性を発見した。だが、電子タバコが心臓発作の直接的な原因だとは結論づけなかった。関連のあったケースは2件のみだったからだ。

最近急増する肺の疾患については、電子タバコ製品の検査や患者から集めたサンプルを使って、医療機関がさらなる調査を行っている。

電子タバコが10代のニコチン中毒を助長

健康被害とは別に、どうやら電子タバコは多くの若者のニコチン中毒を助長しているという。一部のケースでは、タバコを吸うつもりのない若者も悪習慣に陥っているという。

近年の中高生の喫煙率の急上昇には、電子タバコが関係しているという。2017年から2018年にかけて、電子タバコを使ったことがあるという10代は全体の78%に急上昇したとCDCは発表している。

電子タバコはニコチンを含んでいるので、脳が発育途上にある子どもや10代の若者にとって、特に危険だと専門家は言う。若い人にとってニコチンは感情のコントロールや、判断能力、衝動を抑制する能力を低下させると。公衆衛生局長官が昨年12月に発表した警告は、この問題を受けてのことのようだ。

若者の電子タバコ使用に対して、FDAは業界への介入に踏み切った。当局は、特に若者に人気のあるフレーバー付きの電子タバコの販売を規制することでこれに対処した。

「フレーバー規制などの若者を保護するための対策によって、誘惑されやすく、依存性の高いタバコ製品に子どもたちがアクセスことを制限できると信じている」とFDA長官のスコット・ゴットリーブ(Scott Gottlieb)氏は声明で述べている


[原文:Officials are investigating a spate of lung illnesses tied to vaping. Here are the other health risks you should know about.

(翻訳:忍足亜輝、編集:Toshihiko Inoue)

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