1カ月「脱プラスチック生活」やってみた。日本は1人のプラゴミの排出量、世界ワースト2位

ジンベエザメとプラスチック

プラスチックゴミ問題は日本人の意識も低く、深刻な問題だ。

Rich Carey/shutterstock

世界のプラスチック年間生産量は、1950年の200万トンから2015年には約200倍の4億700万トンに達した。既に海に流出したプラスチックごみは、1億5000万トン。さらに、毎年800万トンが新たに流入していると推定されている。

この「プラスチックごみ問題」は、日本にとっても他人事ではない。

実は、日本は1人あたりのプラスチック容器包装ごみの排出量が、世界ワースト2位だ。日本はプラスチックの再利用技術が進んでおり、「リサイクル率が8割」とも言われている。

しかし、内訳をみると、「マテリアルリサイクル」と呼ばれる材料自体のリサイクルは約20%にとどまり、プラスチックごみの焼却によるエネルギーを再利用する「熱回収」が57%を占めている。ヨーロッパはじめ多くの先進国では、このような「熱回収」はリサイクルとみなされていない。

海岸に打ち上げられたクジラの胃から、80枚ものビニール袋が発見されるなど、プラスチックによる海洋汚染は深刻だ。ドキュメンタリー映画「A Plastic Ocean(プラスチック・オーシャン)」は、この現実を描き、数々の賞を受賞した。

都内に住む中島えりさん(30)もネットフリックスで観て、衝撃を受けたという(現在は配信終了)。

「プラスチック問題や温暖化など、地球環境の問題については、以前から気になっていました。でも、日常生活に追われる中で、常に身近な問題として考えることは、難しく感じていて。ただ、この映画を観て改めて、地球が突き付けられている環境問題に危機感を持って、自分もこのままの生活を続けていてはだめだと思ったんです」

中村えりさんのインスタのスクショ

プラスチック問題の深刻さを追う「A Plastic Ocean(プラスチック・オーシャン)」というドキュメンタリ―映画が行動のきっかけとなった。

中島えりさんのインスタグラムより

「プラスチック・フリーJuly」に挑戦

中島さんは、まずインスタグラムやSNSで情報収集を始めた。#脱プラスチック、#plasticfreeliving、 #plasticoceanなどのキーワードを入れると、問題意識を促す投稿から生活の知恵を紹介する投稿まで、たくさんの情報が出てきた。

筆者もインスタグラムで#plasticfreeliving、 #plasticoceanと検索すると、合わせて30万件近い投稿が見つかった。「Related」と類似キーワードも提供されるため、関心のある情報が調べやすい。

情報を集めるうちに、中島さんは、毎年7月(July)の1カ月間にわたって行われる参加型エコ活動「プラスチック・フリーJuly」について知った。2011年にオーストラリアで始まったこの活動は、使い捨てプラスチックやゴミを減らすことを目的とし、今では世界177カ国、1億2000万人が参加する大きなムーブメントになっている。中島さんは迷わず参加することにした。

スクリーンショット

インスタグラムには、プラスチックフリーに関する情報がたくさんある。

コンビニコーヒーはマイボトル可能?

中島さんはまず使い捨てプラスチックの利用を減らそうと、以前から持ち歩いていたエコバッグやマイボトルの利用を徹底。例えば、アイスコーヒーをコンビニで買う際、プラスチックのコップではなく、マイボトルに入れてもらうよう、店員にお願いするなどだ。

コンビニで買うコーヒーをマイボトルに入れるのは、“ふつう“にできそうだけれど、実は一筋縄ではいかない。

「コンビニによっては不正利用を防止するため、特定のコップでないとコーヒーの機械が作動しなかったり、アイスコーヒーは既にプラスチックのコップに氷が入った状態で売られていたり。マイボトルを使えるケースは実は少なかったんです」

中村えりさんのインスタグラム

ローソンでアイスコーヒーを買う際、マイボトル利用に成功した。

中島えりさんのインスタグラムより

東京都民1000人を対象にした調査によると、60%近くがマイボトルを持っていると回答。一方で、マイボトルを持つ人の約80%は「給水できる場所がない」などの理由から外出先で給水していなかった。

東京に30台の給水機が設置されれば、半年間で約100万本のペットボトルに相当する水が、マイボトルで利用されるという推定もある。マイボトルに切り替えるだでなく、それを利用するための環境整備は、重要だ。

スーパーに溢れる大量のプラ袋

生活の中では、使い捨てのプラスチックの袋や容器がいかに溢れているか気づかされた。

スーパーで買い物をすると、プラスチック包装が多さがとにかく目立つのだ。食材ごとに小分けできるプラスチックの袋も売り場に置いてある。プラスチックの包装がされていない野菜や果物を選んでそのままカゴに入れても、レジで店員が“親切心“でどんどんプラスチックの袋に入れるので、止めなければいけないこともよくあった。

「液体が漏れてしまう食材は確かにありますが、そうでない場合、持って帰ることさえできればいいので、このような小分けのプラスチック袋はすぐ減らせる“無駄”だと思った」

職場で配達弁当を頼む際、使い捨てのプラスチック容器を使用していない会社を調べて注文したものの、結局ひとりずつプラスチックの袋に入って届けられた。

スクリーンショット

職場で配達弁当を頼む際、使い捨てのプラスチック容器を使用していない会社を調べて注文したものの、結局ひとりずつプラスチックの袋に入って届けられたそうだ。

中島えりさんのインスタグラムより

世界のプラスチックごみの約半分は、容器包装だ。日本近海に浮遊する「マイクロプラスチック」(直径5ミリ以下のプラスチック粒子)の量は、世界平均の27倍にものぼる。海の生き物に取り込まれるプラスチックは食物連鎖に影響を与え、我々もマイクロプラスチックを摂取した魚介類を食べることによって、人体にマイクロプラスチックの一部を取り込んでしまう可能性もあるという。

若者は環境問題に取り組む企業を評価

7月の1カ月間、脱プラスチックを意識して生活することで、中島さんは地球環境に責任のある行動をとっている企業に惹かれるようになったと話す。

「モノを買うときは、できるだけ生産地や生産過程などを調べて知ったうえで、買うようになりました。環境問題に責任ある企業やブランドは応援したい」

世界経済フォーラムの調査によると、ミレニアル世代の約50%が世界規模の問題の中で「気候変動」が最も深刻だと考えている。さらにミレニアル世代より若い、1990年代後半から2000年代にかけて生まれた「ジェネレーションZ」の9割は、企業は環境問題や社会問題に対応する責任があると考えている。

脱プラで変わった習慣と生まれた疑問

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ストーリーには、無印良品のアイテムが並ぶ。中島さんは、無印良品の地球環境や社会的責任に対する姿勢に惹かれたという。

中島えりさんのインスタグラムアカウントより

中島さんにとって、「プラスチック・フリーJuly」は、使い捨てプラスチックをなるべく使用しない習慣をつくる良いきっかけになったという。でも、結局は「自己満」に過ぎないのか、本当に意味のある行動なのか、分からなくなるときもあった。

「マイボトルを忘れたから、本当は飲みたいタピオカ・ドリンクを我慢する自分の行動は、果たして地球環境のためになっているのか、意地になっているだけではないか、とモヤモヤすることもありました。私のインスタの投稿を見て、“なに海のゴミ言っているの?”と仲良い友人からコメントがきたことも。関心のない人にとっては、ちょっと“変わったエコな人”だと思われていたかもしれない(笑)」

一方で、大学を卒業後、連絡をとっていなかった知人から「(私の)インスタの投稿がきっかけで、スーパーでプラスチックを使わないよう気をつけるようになった」と連絡もあった。

「ひとりひとりの行動の積み重ねが、このような環境問題の改善に導くと信じて、これからも自分ができることをやっていく」

プラスチックゴミを減らす上で、リサイクルする(Recycle)、再利用する(Reuse)、減らす(Reduce)が「3R運動」と呼ばれている。プラスチックごみ問題の解決には、ひとりひとりが、排出されるごみの量を削減する「Reduce」に取り組むことが不可欠だ。


大倉瑶子:米系国際NGOのMercy Corpsで、官民学の洪水防災プロジェクト(Zurich Flood Resilience Alliance)のアジア統括。職員6000人のうち唯一の日本人として、防災や気候変動の問題に取り組む。慶應義塾大学法学部卒業、テレビ朝日報道局に勤務。東日本大震災の取材を通して、防災分野に興味を持ち、ハーバード大学大学院で公共政策修士号取得。UNICEFネパール事務所、マサチューセッツ工科大学(MIT)のUrban Risk Lab、ミャンマーの防災専門NGOを経て、現職。インドネシア・ジャカルタ在住。

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