アメリカの大企業が評価する、転職レジュメにある「3つの要素」とは

以前、Amazon米国本社で働く日本人の方を取材したところ、日本とアメリカとでは「レジュメ(職務経歴書)」のあり方、書き方がまったく異なるとのこと。またその違いには、日本における転職活動にもそのまま活かせるヒントがあるようです。

果たして、日米のレジュメには具体的にどんな違いがあるのか。アメリカの一流企業で評価されるレジュメとはどのようなものか。米国式の優れたレジュメから私たち日本人が学ぶべき、他のビジネスパーソンに差をつける自己PRの鉄則について、深掘りします。

今回お話を伺うのは、アメリカのビジネススクールでMBAを取得後、日本マイクロソフトへ入社。2013年からMicrosoft米国本社に勤め、グローバルマーケティングを担当されている石坂誠さん。石坂さんが掲げるレジュメに必要な「3つの要素」とは——。

Microsoft Corporation Senior Product Manager and WW Business Lead for Microsoft Azure Open Source, Cloud Marketing Field Strategy unit 石坂 誠

PROFILE

石坂 誠:Microsoft Corporation Senior Product Manager and WW Business Lead for Microsoft Azure Open Source, Cloud Marketing Field Strategy unit

2002年早稲田大学法学部卒業。新卒でNECに就職し、化学業界向け法人営業を担当。2007年米国ユタ州にあるBYU(ブリンガムヤング大学)にてMBAを取得。その後、日本Microsoftにてプロダクトマネジャーとプラットフォーム戦略を担当。2013年より米国Microsoftにてオープンソースならびにクラウドビジネスのグローバルマーケティングを担当。

日本の大手メーカーからMicrosoft米国本社までの道のり

——石坂さんはもともと海外志向を持っていらっしゃったのですか。

Microsoft Corporation Senior Product Manager and WW Business Lead for Microsoft Azure Open Source, Cloud Marketing Field Strategy unit 石坂 誠

いや、まったく。行き当たりばったりですよ(笑)。NECで担当していたのがたまたま外資系企業で、その日本法人に対して提案するのが業務の半分を占めていたのですが、1億円を超えるような大きな案件となると、本社に直接お伺いを立てなければならない。テレカンでプレゼンテーションしなければならなかったんです。でも私自身、TOEICは400点台でしたし、法学部卒だからビジネスの専門知識も足りない。もっとお客さまの要求に応じたいのに、スキルが足りないことを痛感せざるを得ませんでした。

一方でそのころ、知人に紹介されて外資系メーカーへ転職しようとしたことがありました。若気の至りというか、このまま年功序列で働くことに疑問を覚えたんです。それで、英文でレジュメを書かなければならなかったんですけど、全然分からなくて。インターネットで調べても情報が乏しかったですし、特にエージェントともやり取りしませんでしたから、当然、面接に挑んで撃沈したわけです。そういったことが重なって、もっとスキルを身につけようと、MBAを取るために自費でアメリカへ留学したのです。

——ビジネススクールでは就活対策のようなものを習いましたか。

キャリアクラスでレジュメの書き方などを教えてもらって、書いたものをOBに添削してもらったのですが、ペプシコとユニバーサルスタジオで人事を務めてきた人に、レジュメを一瞥(いちべつ)されて、かなりダメ出しされました。そのときにもらったアドバイスがいまでも私の土台になっています。それから、ボストンキャリアフォーラム(就職イベント)で事前に標準のレジュメと企業ごとのESを提出して、3日間で20社以上の面接を受けました。5社ほどからオファーをいただいたのですが、その中から日本マイクロソフトを選んだ形です。

——なぜ日本マイクロソフトを選んだのですか。

Microsoft Corporation Senior Product Manager and WW Business Lead for Microsoft Azure Open Source, Cloud Marketing Field Strategy unit 石坂 誠

MBAではOBHR……つまり組織行動学と人事を専攻していて、決してマーケティング志望ではなかったのですが、当時、日本マイクロソフトのマーケティング責任者で、いまはDropbox Japanで代表を務める五十嵐(光喜)さんに説得されたんです。どれほどマーケティングが魅力的な業務領域なのか、と。

マイクロソフトの場合、当時プロダクトの9割以上がパートナーと呼ばれる販売代理店経由で売れていて、そのうち一つがNECでした。私自身、NECの法人営業の経験もあって、その気持ちが分かること、そしてマーケティングは未経験なものの、おそらくできるだろうと見込まれて、声をかけてもらったんです。

面接でもまるで私のキャリア相談をしてもらっているような感じでしたね。「レジュメを見たけど、たぶん君のやりたいことはマーケティングチームへ来たほうができるよ。自分で何か企画したいほうなんじゃないの?」と。そのうちに、自分の根本には人がもっと自分の能力を最大限に発揮できる環境を作り、世の中をもっとより良いものにしたいという思いがあることに気づいた。そうして、日本マイクロソフトへ入社しました。

その後、2013年に米国法人でのポストに手を挙げて、いまは「Microsoft Azure(マイクロソフト・アジュール)」のグローバルマーケティングを担当しています。

Microsoft Corporation

「アメリカのレジュメ」と「日本の履歴書」はまったくの別物

——ボストンキャリアフォーラムで20社以上の面接が決まったというと、かなり精度の高いレジュメだったのだろうと思うのですが、具体的にどういったことを記載したのですか。

OBから指摘された通りに書き直したのですが、まず、30秒で読む気にさせる導入部分=「エグゼクティブサマリー」を入れろ、ということ。そこで、自分のキャリアにおける一番アピールしたい点、寿司で言うところの「トロ」を出せ、と。そうでないと読まれないというのです。また、基本的には「読み手は業界のことを知らない」という前提で、誰が見ても分かる共通言語で書くということでした。

例えば、前職で担当していた企業は一部上場企業だったのですが、日本企業だと財閥系で似たような名前がたくさんあるから、社名だけではなかなか伝わらない。「Fortune500、東証一部上場の化学業界の会社に対して、年間数億円の案件を担当していた」と言い換えれば、伝わるわけです。その際、なるべく数値を明確にすることは重要です。「年間で○%のコスト削減に寄与した」とか「チームで1000万ドルの売上に貢献した」と。

そして「トロ」と言っても、なるべく客観的に、相手にとって価値のあるものなのか、という視点は重要です。とはいえ、一つ自分の強みを挙げても、なかなか際立つようなものになりませんから、自分の経験をいくつか掛け合わせてみるんです。例えば、大学時代にスタートアップを経験して、全米MBAトップ20の大学のクラスで上位5%に入っていて、同期で新規開拓トップの実績を取った、と。そういった固有の経験を3つくらい掛け合わせると、世界で100万人のうち一人くらいしかいない人になれる可能性があります。

Microsoft Corporation Senior Product Manager and WW Business Lead for Microsoft Azure Open Source, Cloud Marketing Field Strategy unit 石坂 誠

——アメリカのレジュメと日本の履歴書に違いはありますか。

圧倒的に違いますね。まず、いまの時代、アメリカのレジュメ=LinkedInだということです。人事担当者も基本的にまず、レジュメより先にLinkedinを見ます。経歴だけではなく、どんな業界、レベルやタイトル、部署の人と付き合ってるか分かりますし、普段、どういったニュースをシェアし、どんなコメントを残し、どんなことを支援しているか。レジュメと面接で言っていることが、果たして一致しているのかどうかも分かりますから。

私がMBAを取っていたときですら、Linkedinのアカウントを持っているのは必須でしたよ。もはや名刺交換なんてしないんですよ。LinkedinのアプリのQRコードで交換するし、ミーティングで「この人、価値あるな」と思われなかったら、申請すら来ない。だからもう、早く始めないと間に合わないんです。すぐにいろんな人とつながれるわけではありませんから。

でもこないだ、アメリカ赴任中の日系商社の方とお会いしたんですけど、「Linkedin交換しましょう」と言ったら、「見られると困るので、すみません」と断られてしまいました。正直、それでどうやってビジネスを進めるんだろう、と。

特に海外で何らかのビジネスを考えているなら、無視できません。私もつねにLinkedinをアップデートしていますが、毎週のように何十件もオファーが来る。いつでもどこでも働けるような動き方を意識しています。LinkedInのアカウントすら持っていないというのは、ビジネスの世界に「戸籍がない」のと同じなんです。

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そして、レジュメにしても、LinkedInにしても、自分の経歴をただ並べるだけでなく、自分がいたからこそこの結果が出た、どんな価値をもたらすことができた、と、嘘のない範囲内でちょっと大げさに書くことが徹底されています。ですから、その人が企業に対してどれだけの貢献をしたのか、レジュメを読めばすぐ分かるようになっているのです。日本では、ただ職歴や役職を並べて、その背景については企業の判断に委ねる、といった感じが多いように思われます。

——「嘘のない範囲内で大げさに書く」というと、具体的にどういったことでしょうか。

例えば、数十人のチームで数百億円規模のプロジェクトを行った、というと、あくまで自分の業務範囲のみについて書くことが多いのでしょうが、少しでも貢献している部分があれば、あたかも自分でやったかのように語る、ということ。たとえそのチームで、自分が関わったのは契約周りだけでも、「プロジェクトでもっともクリティカルな契約交渉を担当して、数百億円の売上を勝ち取るために寄与した」と言い切ってしまう。本当に自分の貢献がその案件における重要な要素であったとしたなら、それは嘘ではないですから。

転職活動を成功に導く「レジュメの3E」と「CEOの視点」

それと、レジュメには次の「3E」が大切です。

一つは、先ほど話した「Executive Summery(エグゼクティブサマリー)」。一見してその人がどんな経験でどんな価値のある人物なのか、伝えられる概要を入れること。

もう一つは、「Episode(エピソード)」。しっかりビフォーとアフターを意識して、自分がチームへアサインされたとき、どんな現状でどんなゴール設定がなされていて、それに対して自分がどんな仮説を立て、アクションしたのか、そしてどんな結果が出たのかを明確にすること。

そして最後は、「Ending & Emotion(エンディング&エモーション)」。上記から自分が何を学び、どんなスキルを得たのか。そしてどんなことが得意で、どんなリーダーシップを発揮できるのか。将来的にどういったことをやりたいと考えているのか。感情を交えて伝えるのです。

——ただ、「自分はこれをやってきた」と自信を持って言える人は、さほど多くないかもしれません。これは日本人的な気質なのかもしれませんが、「周りのサポートのおかげだった」「運が良かった」と、つい口にしてしまいそうです。

私自身もMBAのときには、まだ半分以上は日本人的な感覚がありましたね。でも、キャリアクラスで「自分の強みはなんなのか、それに関連するエピソードについて、過去、一緒に仕事をした20人に聞きなさい」という、具体的な課題が出されたんです。そのやり取りを通して徹底的に、自分の強みを客観的に考えさせられました。

Microsoft Corporation Senior Product Manager and WW Business Lead for Microsoft Azure Open Source, Cloud Marketing Field Strategy unit 石坂 誠

もう一つ、マイクロソフトでは四半期ごとに行う会社との契約として、上司との面談でどんなことにコミットするのかを詳しく書くようになっているのです。どんなビジネスを実現して、どんな結果を出すのか、と。ですから、定期的に振り返りと目標設定を考えることになるので、必然的に意識せざるを得ないのです。

——そうやって自らの強みやスキルを明確にし、伝えてきたからこそ、いまのキャリアがある、ということですよね。

まさにそうですね。米国本社へ来る以前にも、日本マイクロソフトには「グローバルタレントプログラム(GTP)」といって、部門長の推薦のもと、年間10名くらいが米国本社で3カ月修行できる制度があって、自分で手を挙げました。そこで選ばれた一因としては、経営課題に着目し、適切に自分の果たすべき役割をアピールできたからだと思います。

当時、教育現場にタブレット端末が導入されようとするタイミングで、競合もいるなか、なんとか自社製品を提案したい。そのために米国本社へ行き、ベストプラクティスを学んで、およそ800万人規模の端末マーケットシェアを5年で取るための礎にしたい、と役員に訴えました。それで、「この人に投資する意味がある」と思ってもらえたのです。

——自分をアピールする際、経営者の視点に立って、そのメリットを考えるのが重要だと思いますが、なぜ石坂さんはそういった視点を身につけられたのでしょうか。

それは、環境による要因が大きいと思います。前職のときはやはり、目の前にある仕事をそつなくこなすことが求められていましたし、取引先は外資系だったとはいえ、そこまで海外のことを意識する機会はありませんでした。けれどもいまや、グローバル化が進んで、日本国内でも海外のことを意識せざるを得ない。中国ではアリババなどが台頭し、セキュリティ関連では圧倒的にイスラエルが強い。インドの国公立大学では次々に人材を輩出し、マイクロソフトもGoogleもアドビも、CEOはすべてインド出身です。

そうなると、つねにグローバル企業のCEOの視点を身につけなければなりません。それはつまり、株主からのプレッシャーを受けながら、企業価値に資する意思決定をするということ。その責任は各支社にも各部署にも、各個人にも与えられています。

Microsoft Corporation Senior Product Manager and WW Business Lead for Microsoft Azure Open Source, Cloud Marketing Field Strategy unit 石坂 誠

キャリアアップの鍵を握るコアスキル “Know yourself.”

——自分自身のアピールポイントを見いだすために必要なことは?

定番のフレームワークとして「SWOT分析」がありますけど、あらゆるビジネスパーソンは自分自身を商品に見立てて、SWOT分析をするべきだと思うんです。自分の「強み(Strength)」はどんなことで、自分がどんな「機会 (Opportunity)」を求めればいいのか、そして自分の「脅威(Threat)」はどんな人材なのか、グローバルレベルで考えたほうがいいと思います。

例えば、いまやどの企業でもAIと言っていますが、その機会に対して、自分はどんな強みで貢献することができるのか、きちんと考えておく必要があります。

——そもそも、自分自身の強みや弱みが何なのか、そして強みがどんな機会であれば発揮されるのか、漠然としている人が多いかもしれません。

私もそうでしたよ。良い大学へ入って、「学生が就職したいランキング」にランクインしている企業に入れば、幸せになれるんじゃないか、って。まあ、それは妄想に過ぎなかったのですが(苦笑)。

Microsoft Corporation Senior Product Manager and WW Business Lead for Microsoft Azure Open Source, Cloud Marketing Field Strategy unit 石坂 誠

まずは己を知ることですよね。“Know yourself.” 自分ってなんなんだ、と。

日本人だけじゃないとは思いますが、一般的にマズローの欲求5段階のうち、承認欲求で止まってしまっている人が多いじゃないですか。人から認められたい、有名になりたいといったレベルで。自己実現のレベルまで深く考えられている人は少ないのかなと思います。

この自己実現レベルにいくためには、自分自身のことを知ることが大前提です。単純に自分の持っているスキルのことじゃなくて、もっと根本的なこと。そもそも自分自身が心から仕事を楽しんでいるかどうか、何をするときにワクワクするのか、満足感を感じるのか

それを明確にしなければ、モチベーションを保つことは難しく、広い視野で見て、会社に真に評価されるような成果もなかなか得られません。楽しくて、仕事とも思わないくらいだからこそ、家に帰っても週末でもついいろいろと考えてしまう、みたいなモードに入れたらいいと思うんです。

私自身、入社前は人事志望だったけれど、マーケティングが強みになった。それでも、もともと目指していた存在意義は変わっていなかったんだと思います。人が自らの可能性を最大限に引き出せる仕事や環境をサポートし、それによってその人が幸せでいられることに貢献する。その手段が人事だと信じていたけど、たまたま縁あって、「IT×マーケター」という手段もある、とヒントをもらえた。

「貢献したい」という言葉は、自分が本当にそう思っていなければ、行動を伴うものにならないと思うんです。自分の本心、そこに自分の好きなこと、できること、必要とされていることが掛け合わさることで、より効果的に成果を生み出すことができる。それがまた自分のアピールポイントになり、またレジュメに書けることが増えていくのです。

これを読んでいらっしゃる方の中で、一人でも多くの方が、自分自身を真の意味で理解し、自分のやりたいことと日々の仕事の重複点が増え、今日は何を仕掛けようか、とワクワクする気持ちで朝起きられるようになることを祈っています。

Microsoft Corporation Senior Product Manager and WW Business Lead for Microsoft Azure Open Source, Cloud Marketing Field Strategy unit 石坂 誠

[取材・文] 大矢幸世 [企画・編集] 岡徳之 [撮影] ギブソンまり子

"未来を変える"プロジェクトから転載(2019年8月21日公開の記事)

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