アメリカン航空の搭乗ゲートで乗客の顔がスキャンされる。テキサス州のダラス・フォートワース国際空港。
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- アメリカン航空は、搭乗券なしで乗客を機内へ搭乗させる顔認証技術を導入している。
- 顔認証技術は現在、テキサス州のダラス・フォートワース国際空港の一部で使用されていて、アメリカン航空は、安全性が向上して、乗客の搭乗が迅速になると話す。
- これは航空業界のトレンドの1つだ。プライバシーについての懸念があるが、アメリカや世界中で顔認証を使う空港や航空会社が増え続けている。
- アメリカン航空は、同システムはオプトイン(事前許諾制)で、写真データは保存しないと語った。今後は使用する場所をさらに広げる予定だ。
アメリカン航空は搭乗ゲートで顔認証技術を使い始めている。航空会社や空港が、フライトをより早く、より安全にするとアピールする、航空業界のトレンドの1つだ。
アメリカン航空はテキサス州のダラス・フォートワース国際空港でこの技術を使用している。乗客は搭乗券の代わりに顔をスキャンすることで飛行機に搭乗できる、と地元のCBS11ニュースが報じた。
ただし、空港のセキュリティチェックを通るためには、搭乗券とパスポートなどの身分証明書の両方が必要となる。
顔認証システムはオプトイン(事前許諾制)で、乗客は搭乗券と身分証明書を使用しても搭乗できると、アメリカン航空は語った。
アメリカン航空への搭乗で、顔認証技術によって承認された乗客。ダラス・フォートワース国際空港。
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現在は、国際線で使われる同空港のターミナルDでのみ使用されているが、アメリカン航空は、ターミナル全体で75ある国際線の搭乗ゲートに拡大する予定だとしている。
アメリカン航空の国際線オペレーション・シニアマネージャー、ブランドン・ダギンス(Brandon Duggins)氏は「ほとんどの旅行客が顔認証技術の導入を喜んでいる。これは斬新な技術だ」と、CBS11ニュースに語った。
アメリカン航空はプレスリリースで、この技術を「出発手続きでのさらなる利便性」と呼んでいる。
プライバシーに対する懸念を見込み、アメリカン航空は顔写真は保存しないと述べた。「乗客のバイオメトリックス(生体認証)のデータは、絶対に保存されることはない」。
スキャンされた写真は、アメリカ税関・国境警備局が使用するクラウドデータベースに送信される。
空港での使用が増え続ける顔認証
多くの空港や航空会社で顔認証システムを採用するところが増えている。ワシントン・ポストによると、2018年8月の時点で14の空港がこのシステムを使用している。
アメリカ税関・国境警備局は、このシステムが国際線を有するすべての空港に拡大するだろうと語った。
アメリカン航空は2018年末、顔認証をロサンゼルス国際空港で試験的に導入した。同社は、このプログラムの評価を継続し、さらに多くの空港やフライトへの拡大の可能性を検討していくと語った。
2018年9月、ダレス国際空港に設置された顔認証スキャナー。
Bill O'Leary/The Washington Post via Getty Image
ドイツのルフトハンザ航空もロサンゼルス国際空港で顔認証技術を使用している。同社はこの技術を「乗客が空港を通過するための、より早くて便利な手続き」と呼んでいる。デルタ航空はハーツフィールド・ジャクソン・アトランタ国際空港で採用しており、エアアジアも使っている。
この技術は、シンガポールのチャンギ空港やロンドンのヒースロー空港といった空港でも使われている。ヒースロー空港では、2018年の試験導入で搭乗にかかる時間を最大で3分の1まで短縮したという。
顔認証の技術は、多くの国で導入されている電子パスポート・ゲートでも使用されている。イギリス政府はこのゲートを「適格な乗客を早く安全に通すことで、国境を越えるためのより早いルートを提供する」と述べている。
入国セクションでの顔認証のために、スキャナーにパスポートを置く乗客。2018年7月16日、フランス・ニース国際空港。
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だが、顔認証システムの使用が広がっていることで、プライバシーの問題が懸念されている。
イギリスのプライバシー保護団体、ビッグ・ブラザー・ウオッチのディレクター、シルキー・カルロ(Silkie Carlo)氏は「公共の場におけるリアルタイムでの顔認証の増加は、警戒すべき事態だ。個人のプライバシーと公共の場で匿名でいる権利にとって命取りになりかねない」と、2018年にBBCに語った。
彼女は、イギリスで物議を醸している点を説明した。
「社会の役に立つという理由で使用されたとしても、イギリスでもすでに見られるように、反対運動を監視して罪もない人々のバイオメトリクス・データを収集するために使える、権威主義に役立つ技術だ」
一部の活動家は、顔認証の使用を一旦中止して、使用方法や目的についてよく議論するべきだと考えている。
アメリカ電子プライバシー情報センターの国家安全保障顧問、ジェラミー・D・スコット(Jeramie D. Scott)氏は2018年、 ワシントン・ポストに 「生体認証の使用、特に顔認証データの使用に関して、保護または制限する連邦法はほとんどない」と語った。
「我々は一歩引いて考える必要がある。一度落ち着いて意義ある議論をしなければ、考えもしない結果を生むかもしれない」
(翻訳:Makiko Sato、編集:Toshihiko Inoue)