居住地で避難所支援に格差。「防災復興省」設立で被災自治体の負担と格差解消を

避難所 東日本大震災

福島第一原発の事故を受けて同県川俣町に避難した原発近隣の住民たち。2011年3月14日撮影。窮屈な生活がうかがい知れる。

REUTERS/Yuriko Nakao

東日本大震災が発生した当時、内閣府大臣政務官だった私は、政府の現地対策本部の責任者として、約2カ月間にわたって現場で陣頭指揮を執った。

衆院選で落選した後、2015年からは緊急人道支援の国際NGO「ジャパン・プラットフォーム」の国内事業部長・東北事務所長として仙台に赴任し、復興を見守り続けた。

現在は立憲民主党所属の衆議院議員として、党の総合災害対策本部事務総長をつとめている。これらの経験をもとに、我が国の防災の未来のために「防災復興省(庁)」の設立を提言したい。

「被災自治体に負担がかかる」日本の防災

東日本大震災 仙台

2011年3月14日、宮城県庁の職員たちが被災者に救援物資を配る。被災地自治体の負担は大きく、しかも職員たち自身も被災者であるケースが多い。

REUTERS/Jo Yong-Hak

日本の防災の根拠となる法律は、主に「災害対策基本法」(昭和36年制定)と「災害救助法」(昭和22年制定)のふたつ。

災害対策基本法では、防災に関する対策を行う責務、災害応急対策および応急措置を行う義務を負うのは「市町村」であり、市町村の事務や業務の実施を助け、その総合調整を行う責務を有するのが「都道府県」であると規定されている。

一方、災害救助法では、「市町村」の区域内で被害を受け、救助を必要とする者を「都道府県」が救助すると定められている。

このように、日本の災害対応は第一義的には、被災地の地方公共団体が行うことと法律に明記されている。国の役割はあくまで補完的・経済的な支援に限られており、被災市町村は多大な負担を強いられることになる。

自治体への過度な負担が不公平な避難所を生む

避難所 東日本大震災

2011年3月13日、岩手県陸前高田市の避難所。極寒期の避難生活は被災者たちの体力、精神力を蝕んでいった。

REUTERS/Lee Jae-Won

東日本大震災や熊本地震、西日本豪雨などを通じ、日本の防災制度には次に挙げるような3つの問題があると私は考えるようになった。

1つめは、市町村によって、災害への対応に格差が生まれてしまうこと。

西日本豪雨の被災地を視察した際、市町村のキャパシティやリソースによって、避難所の状況が大きく異なるのを目の当たりにした。つまり、住んでいる地域によって受けられる支援に差が生じてしまうのだ。

その最も大きな影響が及ぶのが、高齢者や障がい者、子ども、外国人などの社会的弱者で、きめ細かい支援まで手が回らず、結果として切り捨てられてしまう可能性がある。

東日本大震災 行方不明者

2011年3月13日、岩手県陸前高田市で行方不明者の捜索にあたる地元の消防団ら。被災者が被災者を救う厳しい構図。

REUTERS/Toru Hanai

2つめは、自ら(とその家族)が被災した市町村職員に、長期間にわたって被災者支援を担わせることが果たして合理的なのかという問題だ。

すでに書いた通り、日本では災害時の判断が市町村長に委ねられすぎていて、いざというときに判断すべきことが多すぎて「思考停止」状態になる。

実際、東日本大震災では、精神状態が不安定になり、適切な判断ができなくなってしまった市町村長の姿を少なからず目にした。

3つめは支援の継続性の問題。

災害対応は、避難所での「初動対応期」から、3~5年続く仮設住宅などでの「緊急対応期」、その後の自立再建に向けた災害公営住宅などでの「復旧・復興期」といったフェーズに分かれ、被災者ひとりひとりに合わせた切れ目のない支援が求められる。

仮設住宅 川俣町 福島県

福島県川俣町の仮設住宅で、玄関前にたたずむ被災者の姿。仮設住宅暮らしが長くなると、「見捨てられた」と感じる人たちも多い。2014年6月23日撮影。

REUTERS/Issei Kato

しかしながら、東日本大震災の場合、初動対応期から仮設住宅入居までの緊急対応期の入り口までは内閣府防災が担い、それ以降のフェーズは復興庁が担うこととなった。居む場所が変わるというフェーズの切れ目が支援の切れ目になっていなかったか、国として切れ目のない支援が行えたかどうか、課題を残した。

イタリアでは「防災は国がやるべき仕事」

イタリア 地震 市民保護

2016年10月27日、イタリア中部ウッシタで地震発生後の救助・復旧作業を指揮する復興委員(コミッショナー)と市民保護庁長官。

REUTERS/Max Rossi

防災先進国のひとつであるイタリアでは、「防災は国がやるべき仕事」という考え方のもと、被災規模によって市町村対応レベル、州対応レベル、国対応レベルとランク分けがあり、法律で出動ガイドラインが定められている。

国対応レベルの大規模災害時には、国が出動するので、地域によって避難所支援体制が異なるということは起こらない。国が責任を持ち、被災した行政を含む当事者が判断や決裁をしなくてよい仕組みになっている。

アメリカでも、被災者した当事者が避難所運営をすることはなく、緊急事態管理庁(FEMA)が担う制度になっている。

イタリア 地震 避難所

2016年10月27日、地震発生後にイタリア中部カメリーノに設置された避難所。日本の避難所とは異なり、整然とベッドが並ぶ。

REUTERS/Max Rossi

また、イタリア市民保護省は700人規模で防災・災害対応にあたっている。日本では内閣府防災と復興庁に、内閣府原子力防災を加えても約700人規模。人口はイタリアの2倍にもかかわらず、それぞれ縦割りの組織に少ない人数しかいない。

さらに、イタリアでは、市民保護省と対(つい)を成すかたちでNPO/NGOが位置づけられ、豊富な人材と予算を得て、災害時に緊急支援を行っている。例えば、ANPAS公共支援協会というNPOの所属ボランティア数はイタリア全土で約10万人、年間予算は1570億円である。

復興庁の後継として「防災復興省」の設立を

東松島市 市長

2017年2月22日、震災復興計画を説明する宮城県東松島市の阿部秀保市長(当時)。被災地自治体の首長が背負う責任は過剰なくらいに重い。

REUTERS/Osamu Tsukimori

イタリアの例を踏まえ、日本の3つの課題解決のために、「防災復興省(庁)」の設立を提言したい。

減災・防災などの事前の備えから、災害発生時の緊急対応を経て復旧・復興まで、切れ目なく見守ることができるよう、内閣府防災と復興庁など必要な国の機関を統合するのだ。

十分な体制を整備し、地方自治体との連携のもとに国が責任をもって災害対応にあたることで、被災市町村の負担は軽減され、誰も取り残されない災害対応を実現できる。

被災地が責任を負う防災から、国が被災地を守る防災へ」。復興庁の廃止期限である2021年3月を目処に、新たな防災システムを構築することが急務だ。


阿久津幸彦(あくつ・ゆきひこ):衆議院議員(4期)。内閣総理大臣補佐官、内閣府大臣政務官(防災・復興担当)等歴任。東日本大震災では、政府現地対策本部長代行として陣頭指揮を執る。退任後も被災地復興をライフワークに。元・緊急人道支援の国際NGOジャパン・プラットフォーム(JPF)国内事業部長兼東北事務所長。元・硫黄島遺骨帰還特命チームリーダー。

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