60万本以上のペットボトルで作られた。
JD Composites Inc.
- ハリケーンはより強く、より破壊的になっており、家の安全を守るテクノロジーの必要性も高まっている。
- カナダのある建設会社が最近、プラスチック・パネルの家を建設。カテゴリー5のハリケーンにも耐えられるという。
- プラスチックは大抵、従来の建材に比べて丈夫ではあるが、この家はスチール製シャッターやハリケーン・ストラップといった機能は備えていない。
ハリケーン・ドリアン(Dorian)が9月1日(現地時間)、バハマに上陸。カテゴリー5で、最大風速は時速185マイル(約300km/h)だった。その暴風雨による洪水や家屋の倒壊で、少なくとも20人が命を落としている。
ドリアンのようなハリケーンが襲ってきた場合でも、耐久性の高い、防風材でできた家なら被害を防ぐことがせきるかもしれない。
カナダの建設会社、JD・コンポジッツ(JD Composites)が最近、再生プラスチックからハリケーンのような強風にも耐える壁を作る方法を開発した。この約190平方メートルの家は、ペットボトル60万本分のプラスチックでできた壁が特徴。ペットボトルは細断され、溶かされ、成形されて、カテゴリー5の嵐にも耐え得る素材になる。 その内部を見てみよう。
カナダのノバスコシア州で実証実験として建設され、その後40万ドル(約4200万円)弱で販売された。パネル状の壁を作るのには、60万本以上の炭酸飲料のペットボトルが必要だった。
カナダのノバスコシア州にある。
JD Composites Inc.
ボトルは細断され、溶かされ、ガスを注入されて泡状になる。その泡によって厚さ6インチ(約15センチメートル)のパネルになり、家の壁となる。
カナダの公共放送局、カナダ放送協会(CBC)は、最終的な販売価格には家具も含まれていると報じた。
壁を作るのに使われたペットボトルは、リサイクルに出されたもの。
プラスチックの壁は本物の木材のよう。
JD Composites Inc.
地方自治体では、リサイクルにコストがかかるようになってきている。中国が、アメリカの資源ごみ買い取りに関する政策を変更したためだ。これにより多くの都市が、リサイクル可能な物の処分を埋め立てに頼ることとなった。
パネルを作るのに7時間かかる。だが同社によると、他のほとんどの壁材に比べても丈夫だという。
キッチンには昔ながらの家具が備え付けられている。
JD Composites Inc.
この家に使われているパネルは全部で170枚で、化学物質で接着している。釘では、ハリケーンの風で壊れる可能性があるためだ。
JD・コンポジッツの見積もりによると、この家の価格は、従来構造の同サイズの家とほぼ同じか、10%高い程度。
エアビーアンドビー(Airbnb)で貸すことも検討したとJD・コンポジッツは述べた。
JD Composites Inc.
「学ぶことが非常に多かったから、利幅は最低限だ。この最初の物件からは、多くのものが得られた」と同社のバイス・プレジデント、ジョエル・ジャーマン(Joel German)氏はこの実験的な住宅について述べた。
「どこでコストを削減できるかは、分かっている」と同氏は付け加えた。
プラスチックは耐久性が非常に高いため、このパネルはカテゴリー5のハリケーンの2倍の強さの風にも耐え得るとJD・コンポジッツは言う。
寝室は3つある。
JD Composites Inc.
同社によると、パネルは証明機関でテストを行い、壁は時速326マイル(約530km/h)の風に耐えた。カテゴリー5のハリケーンは最大風速時速157マイル(約250km/h)以上だ。
だが、窓はまだ防風ではない。
リビング・ダイニング。
JD Composites Inc.
窓はガラス製であることから、アメリカ連邦緊急事態管理庁(US Federal Emergency Management Agency)は、これを「風力と風で飛散する破片による被害に対し非常に脆弱」と評している。
ハリケーンの際に窓が割れると被害は甚大になり得る。これは強い風が家の内部の気圧の上昇を引き起こし、内部からばらばらに吹き飛ばす可能性があるためだ。
ジャーマン氏によると、ハリケーンに備える機能を増やすこともできる。ハリケーンに耐えられるように建てられた家は、スチール製シャッター、コンクリートの杭、ハリケーン・ストラップ(基礎と建物を緊結する金物)、そして衝撃耐性のあるガレージ・ドアを備えていることが多い。
もちろん、ノバスコシア州はハリケーンが多い訳ではないが、この設計はフロリダ半島のように被害に遭いやすい地域での建築の問題を解決できるかもしれない。
JD・コンポジッツが設計した家の、屋根からの眺め。
JD Composites Inc.
ドリアンは、大西洋でこれまでに記録されたハリケーンの中でも最大級だった。
(翻訳:Ito Yasuko、編集:Toshihiko Inoue)