Master Sgt. Jacob Caldwel/U.S. Army/Handout via REUTERS
- アメリカのジェームズ・マティス前国防長官は、民主化を求める香港のデモへの中国の対応は、一党独裁政権に何ができるかを示していると警鐘を鳴らした。
- 前国防長官は「今、香港で何が起きているか、国民に対する独裁的な姿勢を見れば…… これが彼らの世界観だとすれば、自国民よりも外国人を良く扱うとは想像しがたい」と述べ、スプラトリー(中国名・南沙)諸島やスリランカでの中国の行動を非難した。
2018年末の辞任によって米軍と同盟国に衝撃を与えたマティス前国防長官が9月3日(現地時間)、ニューヨークで開催されたシンクタンク「外交問題評議会(Council on Foreign Relations)」のイベントで、トランプ大統領といった政治指導者に関する質問に答えた。だが、もう1つのトピックについても口を閉ざさなかった。中国だ。
マティス前国防長官は、民主化を求める香港のデモへの中国政府の対応は、中国に何ができるかを示していると指摘した。
「今、香港で何が起きているか、彼らの国民に対する独裁的な姿勢を見れば…… これが彼らの世界観だとすれば、自国民よりも外国人を良く扱うとは想像しがたい」と、前国防長官は語った。
国防総省はますます、中国をアメリカの「最大の」ライバルと見なしている。マティス前国防長官は2018年に、中国が領有権を主張する南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島に約束に反してミサイル・システムを配備したことや、スリランカの港湾に巨大経済圏構想「一帯一路」を通じて融資をし、その返済が滞ったためスリランカの港を差し押さえたことなど、近年の中国の強引な行動を挙げた。
前国防長官は「国防戦略上、我々は彼らをライバルと呼ぶ」と述べ、「我々が目指しているのは、超大国による抑止ではなく、大国による平和だ」と語った。
「我々は、中国と協力する道を模索することができる。だが、彼らが普遍的な…… 世界の秩序を邪魔するならば、我々は中国に立ち向かわなければならない」
中でも、マティス前国防長官が最も強く批判したのは、中国による香港への対応だ。香港では3カ月前から民主化を求めるデモが続いている。
「中国の動きについて、我々はもはや自分たちの願いにだまされるわけにはいかない。ありのままの中国を我々は受け入れなければならない」という。
中国人民解放軍は、抗議活動が続けば軍事介入もあるとの脅威を与えようと、香港に隣接する本土南東部の都市、深センに兵を送っていて、8月下旬には香港駐留部隊の交代も行った。
中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案に反対することから始まったこのデモは、 すぐに香港のより広い意味での民主的な改革を求めるものへと変わった。抗議活動が続くにつれ、香港警察がデモ参加者に銃を振りかざすなど、次第に暴力的になっている。中国は香港市民の身柄を中国本土で拘束したり、抗議活動に対する大々的なプロパガンダ・キャンペーンを実施した。
マティス前国防長官は「協力できるところで協力し、協調して取り組めるところで取り組むとともに、必要なところで立ち向かわなければならないことを我々は認識しなければならない」と結論付け、軍事的な見通しについては詳しく話さなかった。
前国防長官は9月3日に出版された、自身の海兵隊で過ごした40年の回顧録『Call Sign Chaos: Learning to Lead』の著者だ。
このイベントで、マティス前国防長官が示した最大の懸念はアメリカの現状だった —— 前長官はアメリカの政治的分断に対して、不安感を示していた。3日の議論の締めくくりで、マティス前国防長官はこう語っていた。
「若い世代にとって(アメリカを)より良いものにしようとしているという説にわたしは納得していない…… これがわたしを不安にさせている」
[原文:Mattis says China's crackdown on Hong Kong protesters is a sign of China's dangerous ambitions]
(翻訳、編集:山口佳美)