香港政府の逃亡犯条例改正案の撤回は「遅すぎる」! デモ指導者はさらに厳しい弾圧を警戒

香港

2019年9月2日、香港。

Tyrone Siu / REUTERS

  • 香港の行政長官である林鄭月娥(Carrie Lam)氏は9月4日、中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案を撤回すると表明した。
  • 香港では6月以降、この法案に反対する抗議活動が続いていて、大規模デモはより大きな民主化を求めるものへと変わっていった。デモ参加者は改正案の撤回について、足りなすぎるし遅すぎるとし、彼らの要求に十分に応える内容ではないと話している。
  • デモを組織してきた民主派団体、民間人権陣線(CHRF)の幹部ボニー・リョン(Bonnie Leung)氏は「これが2カ月前だったら、これほど血が流れずに済んだでしょう」とINSIDERに語った。警察はデモ参加者をめった打ちにしたり、放水銃を使ったり、銃を突きつけるなど、抗議活動は暴力的になっている。

香港のデモ参加者たちは、逃亡犯条例改正案を撤回する政府の決断は、彼らが求める民主化の要求を満たすには不十分で、抗議活動は続くだろうと話している。

香港の行政長官である林鄭月娥(Carrie Lam)氏は9月4日、改正案を撤回すると表明した。数カ月に及ぶ民主化デモを引き起こしたこの改正案は、レイプや殺人といった凶悪犯罪の容疑のかかった香港人を裁判にかけるため、中国本土へ引き渡そうとするものだ。香港には独自の政府、警察、司法制度があるが、最終的には行政長官の指名を含め中国共産党が監督している。

デモの参加者たちは、改正案を撤回する決断は正しい方向へと進む一歩ではあるが、十分ではないと言う。民間人権陣線(CHRF)の幹部ボニー・リョン氏は「改正案の撤回は足りなすぎるし、遅すぎる。明らかに遅すぎるのです。これが2カ月前だったら、これほど血が流れずに済んだでしょう」とINSIDERに語った。

要求は1つ満たされたが、まだ4つ残っている

改正案への反対から始まったデモは、次の5つの要求を含むより大きな民主化を求めるデモへと変わっていった。

  • 逃亡犯条例改正案の撤回
  • 抗議活動の参加者を「暴徒」とする見方の撤回
  • 警察による残虐行為の独立調査の開始
  • 投獄したデモ参加者の解放
  • 香港における民主的な選挙

デモ参加者たちは、行政長官の辞任も要求している。ロイターが入手した音声で林鄭月娥氏は、選択肢があるなら辞任すると発言していたが、BBCによると、同氏は中国政府に辞任を申し出たことはないという。ただ、録音の真偽については否定しなかった。

CHRFのリョン氏は、「要求の1つに反応があり、受け入れられました。わたしたちは少しだけ祝うかもしれません。本当に長い間、これを待っていましたから」と話した。

民主派団体「香港衆志(デモシスト)」も、改正案の撤回は不十分だとし、抗議活動が香港を非可逆的に変えたとツイートしている。「ここでは今、民主主義だけが唯一の解決策だ」という。

行政長官の林鄭月娥氏は7月、逃亡犯条例の改正案は「死んだ」と発言したが、正式な撤回はしなかった。改正案の撤回は、恐らく香港政府が受け入れられるデモ参加者の最もシンプルな要求だったが、中国政府は改正案の意図そのものが過ちだと認めることになるとし、 撤回する気はなかったと、ニューヨーク・タイムズは報じている

ワシントン・ポストによると、改正案撤回のプロセスは10月に始まる予定だ。

「警察官が法を犯し、何の責任も問われないのをわたしたちは見ている」

衝突する警察官とデモ参加者

2019年8月25日、香港。

Tyrone Siu / REUTERS

要求の1つが受け入れられたとはいえ、抗議活動がますます暴力的になる中、参加者にとって警察の残虐行為は一番の懸案事項だ。

CHRFのリョン氏は、「デモ参加者への過剰な暴力だけでなく、通行人や列車の乗客を無差別にめった打ちにするなど、警察官が自らのルールを露骨に破るのをわたしたちは見ています」と言い、「警察官が法を犯し、何の責任も問われないのをわたしたちは見ているのです」と語った。

行政長官の林鄭月娥氏は、独立警察苦情審議会(IPCC)にデモ参加者に対する暴力行為について調査するよう指示している。だが、IPCCのトップは行政長官が指名した香港証券先物取引委員会の元委員長アンソニー・ネオ(Anthony Neoh)氏が務めていることから、IPCCは行政長官派だとデモ参加者たちは見ている。

また、ワシントン・ポストによると、林鄭月娥氏は4日のテレビ演説の中で、「この社会の根深い問題を振り返り、分析して、解決策を見つけるためのアドバイスを政府にしてもらいたい」と言い、香港の人々との対話を始めたい考えを示した。

抗議活動のリーダー、黄之鋒(Joshua Wong)氏は4日、「今となっては足りなすぎるし遅すぎる —— 林鄭月娥の対応は、7人が命を犠牲にし、1200人以上のデモ参加者が逮捕されたあとに出てきた。彼らの多くは警察署で不当な扱いを受けている」とツイート 抗議の自殺者たちに触れるとともに、デモの参加者たちは林鄭月娥氏の動きを誠実とは見なさないだろうと付け加えた。

黄之鋒氏は「何らかの譲歩があるとき、彼らは必ず公民権に対する支配を大幅に強めてくる」と指摘し、弾圧がより厳しくなるだろうとの見方を示した。

[原文:Hong Kong's leader says she'll withdraw the controversial extradition bill. Protest leaders say it's 'too little, too late'

(翻訳、編集:山口佳美)

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