“中国版インスタ”三日天下が映す若者の価値観。Weiboの新サービス、パクリ発覚で退場

weibo6-1

いち早く緑洲に登録したのは、他のSNSで数十万のフォロワーを持つインフルエンサーたちだった。緑洲のデザインはインスタグラムに確かに似ている。

Weibo

9月に入って、中国ネット民の間で、「緑洲(リュージョウ)」という言葉がバズワードになった。それは、中国版Twitterとしても知られる中国最大ミニブログWeibo(微博、ウェイボー)の王高飛CEO(アカウント名:来去之間)の投稿に、小さく添えられた「緑洲アプリより」との文字にフォロワーやメディアが気づき、ネットは瞬時に沸騰した。

間もなく「緑洲」なるものはWeiboが8月30日にひっそりとリリースしたアプリであることが判明した。テスト期間のためアプリはユーザーに招待されなければ登録できず、しかも各ユーザーが招待できる人数にも制限がある。限定モノに目がない中国人、何とかして招待されようと血眼になる若者が続出し、日付が3日に変わるころには、「緑洲」はアップルストアの中国でのダウンロードランキングで定番SNSのQQやWeChat(微信)を抜いてトップに立った。

「緑洲」はどんなアプリなのか。招待されたユーザーやメディアによると、それは一言で言えば「中国版インスタ」。文字でも動画でもなく、写真が中心の「若者のライフスタイルSNS」だと説明された。

王CEO

Weiboの王CEOの投稿。「緑洲APPから投稿」の文字に気づいたフォロワーたちの“捜索”が始まった。

Weiboが中国版インスタを始める、というニュースのインパクトは抜群だった。2009年にローンチし、中国のSNS黎明期の主役だったWeiboだが、ここ数年はテンセント(騰訊)が2011年にリリースしたWeChatや海外で大成功した動画アプリTikTok(中国名「斗音」)、口コミECアプリ小紅書など新たなタイプのSNSに押されて苦戦気味。最近発表された同社の2019年4-6月決算は売上高が1%、広告収入は2%の増加にとどまった。株価は低迷し、新たな収益の柱の必要性が強く指摘されていた。

「緑洲」バブルで株価5%上昇

Weibo10年目の節目にリリースされた「緑洲」。ユーザーも市場も期待度を強め、9月3日には株価が一時5%近く上昇した。

だが、Weiboはそこまで話題になることを全く想定していなかったようだ。

3日になると、ユーザーの急増にシステムが追い付かず、アプリがパンク。度々動かなくなった。「投稿ボタンを押したのに反応しない」「削除ボタンがない」との不満も噴出した。

報道によると、さらには先行者利得を狙った「微商(SNSで商売をする個人バイヤー)」がアプリ内で大量に湧いて出て、広告やステマ投稿が目立ち始めた。

そして4日夕方、Weiboは「緑洲」をアップルストアから撤去し、サービスを停止した。

その理由は、技術的なものでも、ユーザーの傍若無人ぶりに起因するものでもなかった。注目されすぎた「緑洲」は、非常にお粗末な、しかし重大な問題点をSNSの一般ユーザーに指摘されたのだ。

一般ユーザーの「指摘」で天国から地獄

盗用指摘

デザインの盗用を指摘したWeiboの投稿。左の2枚が緑洲のロゴで、右の2枚は韓国の会社のもの。

9月4日午後、Weiboのユーザー(アカウント名:9月4日午後、王____遠)が「緑洲のロゴは韓国のデザイン事務所Studio fntが2015年の映画祭でデザインしたビジュアルイメージに酷似している」と指摘、当時のデザインを紹介したことで、「パクリ疑惑」が急浮上した。この投稿は3時間弱で3000リツイートされ、王CEOが「今気づいた。削除した」と投稿したときには、すでにアップルストアから「緑洲」のアプリは消えていた。

3日にWeiboでアカウントを開設し、1日で80万以上のフォロワーを得た「緑洲」は4日夕方、「緑洲のデザインはネットで公開されている素材を参考に考案した。この件について内部調査を始めた」とコメントし、謝罪した。

取り込みたかった10~20代が激しく批判

緑洲

緑洲はアカウント開設後の4日に、弁明と謝罪の投稿を行った。

「緑洲」は何の発表もなくテストとして運営を始めたばかりで、Weiboに近いユーザーによると開発チームは中国中西部の成都市に置かれていた。王CEOの投稿をきっかけに予想外の注目を浴び、北京本社からスタッフが応援に駆け付けるなど、大混乱だったようだ。

Weiboが10周年を迎え、「Weiboの次」に注目が集まっていたこと、次世代通信技術5Gの商用化を迎え、テキストコンテンツの先行きが懸念されていたこと、そしてSNSで勝ち組とも言われるTikTokが実際には収益モデルを確立できておらず、インスタの収益性の高さが改めて評価されていたことなど、さまざまな要因を背景に、「中国版インスタ」への期待値は上がるだけ上がり、思わぬほころびによって破裂した。

デザインの盗用に対して特に激しく批判したのは、「緑洲」が本来取り込みたかった10~20代の若者だった。彼らはネットリテラシーが高く、知財にも敏感で、本物を好む。「緑洲」の三日天下は、中国の若者たちの移り気と成熟の両面を映し出す鏡ともなった。

(文・浦上早苗)

ソーシャルメディアでも最新のビジネス情報をいち早く配信中

あわせて読みたい

Popular

BUSINESS INSIDER JAPAN PRESS RELEASE - 取材の依頼などはこちらから送付して下さい

広告のお問い合わせ・媒体資料のお申し込み