「好きになった人が韓国人だっただけ」日韓関係に不安募らせるK-POPファン。売り上げは好調維持も…

K-POP

7月に日本で開催されたBTSのライブでは、4日でのべ10万人以上を動員した。

撮影:西山里緒

解決の兆しが見えない日韓関係。その影響は日本の「韓国カルチャー」熱にどんな影響を与えているのだろうか。

直接取材してみると、日韓外交に振り回されつつも、それすらも「物語」として昇華し、ともに分かち合おうとする両国の微妙な関係が見えてきた。

TWICE、BTS…K-POP人気に不安の影

新大久保

9月に入っても、新大久保は多くの若者たちで賑わっていた。

9月平日の東京・新大久保。夏休み明けということもあり中高生の姿は目立たなくなっていたが、立ち並ぶ韓国料理店やK-POPアイドルグッズの店には客の入りも多く、にぎやかな様子がうかがえた。

そう言われれば、2018年の方が夏の売り上げは多かったのかな?でも、それが日韓関係の影響かは……。ここに来て政治の話をする人はいないですからね

そう語るのは、BTSやTWICEなど、人気K-POPアーティストのグッズを取り扱うあるグッズ店の女性店員。「韓国のグッズ販売業者からは、少し心配されましたが」と言い添える。

7月から8月にかけ、悪化の道をたどる日韓関係。外交上の軋轢は両国の文化的な交流にも影を落とし始めている。

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韓国人・日本人・台湾人のメンバーを抱える多国籍グループ「TWICE」。

4月には、ガールズグループTWICEの日本人メンバー、サナがTWICEの公式インスタグラムに日本語で「平成お疲れ様でした!!!」などと投稿したことが「天皇制の礼賛か?」「TWICEの公式アカウントに日本語で書き込むのは不適切」などと韓国のネット民の間で批判を呼んだ。

さらに7月には、別の日本人メンバー、ミナが体調不良のため活動休止を発表した。事務所によると、不安障害だという。日韓関係の影響かどうかはわからないものの、ファンの間では動揺が走った。

「ミナさんが、極度の緊張とかステージに立つ不安でライブを離脱することが発表されたけど、この日韓関係の影響でいろいろ言われたことが関係しているのだろうか……。

本物の韓国once(編集部注:TWICEのファンのこと)は追い出そうとかなんか思ってない。あんなこと言ってるのはほんの一部のアンチだからな……とにかくお大事に」

8月には元AKB48の竹内美宥さんが、日韓関係を理由に韓国デビューが延期になった。

2018年には過去最高の274億円に

K-POP

BTSが7月に発売したシングルアルバムは、ミリオンセラーを記録した。

その一方で、新大久保の相変わらずの活況ぶりからも伺えるように、日本におけるK-POPブームは終わりの兆しが見えない。

2019年4月にオリコン・リサーチが発表した『ORICON エンタメ・マーケット白書2018』によると、2018年のK-POP市場の推定総売上金額は274.5億円(前年比56.4%増)となり、過去最高を記録した。

7月に発売された韓国のヒップホップグループ・BTSのシングルアルバムは販売枚数を伸ばし続け、8月にはミリオンセールスを記録した。先述のTWICEも7月には2週連続で日本でシングルをリリース、2作品合わせて80万枚を突破するなど、人気は健在だ。

日韓関係に亀裂が走る中で、韓国のアーティストたちが日本でのライブやファンミーティングを発表するたび、日本のK-POPファンたちは胸をなでおろし、SNSで歓喜の声をあげる。

韓国のマルチエンタテインメントグループSUPER JUNIORの人気メンバーふたりから成るユニット「SUPER JUNIOR-D&E」は8月末、アジアツアーのファイナルを日本で締めくくった。ライブではメンバー自らが日本公演を熱望して実現させた背景が明かされ、Twitter上では「泣いた」というファンからの声で溢れた。

「『今回ツアーに日本の予定がなかったのを、僕たちが会社に頼んでツアーの最後を日本でやってもらった。僕たちは家族だから』泣いた。ドンへもウニョク(編集部注:SUPER JUNIOR-D&Eのメンバー)も何度も感動したって言ってた。天井席まで満員でした」

韓国人が日本人を擁護する“逆転現象”も

BoycottJapan

韓国では、#BoycottJapan のハッシュタグで日本製品の不買運動が広まっている。

Chung Sung-Jun / Getty Images

文化と政治は関係ない、切り離して考えよう —— そんな声が日韓ともに大きくなる中で、韓国では7月頃から、「#BoycottJapan」「#NoJapan」のハッシュタグで日本製品の不買運動の動きが広がっている。

2018年からBTSのファン活動を続けている晴美さん(仮名、23)は、8月末、BTSの日本ファンミーティングが発表された日に、韓国のSNSでは中止を求める動きがあったことを知った。

「以前、韓国のファンからのボイコットで(日本語の)新曲が発表されなくなったこともありますし、まだ心配もあります。何カ月も前から会場も抑えてると思いますし、そう簡単にキャンセルはないと思うのですが……」

BTSを好きな気持ちは同じなのに、政治など彼ら以外の部分が原因で対立してしまうことが悲しい、と晴美さんは目を伏せる。

ただ、こうした動きに反発するのは日本人だけではないようだ。韓国語のTwitterを見てみると、特に韓国で活動する日本人アーティストをバッシングするのは「やりすぎだ」と咎める“逆擁護”ツイートが目立った。

「国内で活動中の日本国籍の芸能人の脱退を要求する過激な声も出てきた。人気アイドルグループTWICEのサナ、モモ、ミナとI*ZONEの宮脇咲良、本田仁美、矢吹奈子など日本人メンバーたちが主なターゲットになった。(日本の不買運動と)同じような基準でわざわざ失墜させる必要があるのか?」

「たまたま好きになった人が韓国人」

新大久保

「文化は政治を超える」のか。

不安・期待・涙……。悲喜こもごもの日本のK-POPファンたち。

ドラマ『冬のソナタ』が牽引した2004年からの「第一次韓流ブーム」、少女時代・KARAなどが率いた2012年頃の「第二次韓流ブーム」に続き、2017年頃から今に至るまで続く韓国人気は「第三次韓流ブーム」ともいわれている。

北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院の金成玟(キム・ソンミン)准教授は、著書『K-POP 新感覚のメディア』で、2012年の第二次ブームと現在の第三次ブームのK-POPの構成要素の違いを「ソーシャルメディアを中心とするグローバルなファンダム(ファンコミュニティ)」が形成されたこと、と指摘したうえで、こう書いている。

「たんなる憧憬の対象でも、消費の対象でもなく、同じ時代を生きるものとしての過程と物語を共有するポップスター。それがK-POPが生み出した新しいアイドル像である」

ならばきっと、日韓関係という外交の断絶すらも「物語」に昇華して、アーティストとともに苦しみ、分かち合うことができてしまうのが、現在の「韓国ブーム」といえるのではないだろうか。

先述のBTSの日本のファンミーティング中止運動に関しても、手を取り合おう、と韓国ファンに呼びかける日本ファンの姿も、Twitterでは多く見られた。

「たまたま好きになった人が韓国人で、ここまで追うなんて思ってもいなかった。本国よりも恵まれてるのは分かってるよ。本国army、手を取り合おうよ。ライブやペンミに行けなくても7人が手を掴んでお辞儀をしている姿がとてつもなく大好き。#日本ペンミーティング継続 #일본펜미팅_계속」

(文・写真:西山里緒、取材協力:稲葉結衣)

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