地球外生命は太陽系にいる? ── 土星の衛星タイタンで新研究

土星の衛星タイタンの北極にある湖の想像図。隆起した縁と土塁のような特徴は、NASAの探査機カッシーニによる観測結果を反映している。

土星の衛星タイタンの北極にある湖の想像図。隆起した縁と土塁のような特徴は、NASAの探査機カッシーニによる観測結果を反映している。

NASA/JPL-Caltech

  • 土星最大の衛星であるタイタンは、太陽系内で地球外生命体がいるかもしれないと言われている天体の一つだ。この天体にはメタンとエタンの湖がある。
  • NASAカッシーニ計画によって、タイタンの北極近くにある小さなが、非常に高い縁に囲まれていることが明らかになり、科学者たちは困惑した。
  • 新たな研究によると、タイタンの地下の窒素が暖められて爆発し、巨大なクレーターが形成されたことで、これらの湖が作られた可能性があるという。

土星最大の衛星であるタイタンは、天文学者が考えているよりも活動的な過去を持っているかもしれない。

新しい研究によると、タイタンの表面に点在する液体メタンの湖は、月の表面の下で温められた窒素のかたまりが爆発した時に形成された可能性がある。

このアイデアは、1997年10月に打ち上げられ、2018年9月に小型探査機ホイヘンスが土星に突入して終了したNASAのカッシーニ計画が、これらの湖に関する前例のないデータを送ってきたときに浮上した謎を解決する可能性がある。

データによると、タイタンの北極付近では、たくさんの小さな湖が、数百メートルの高さでそびえ立つ外輪を備えている。

これは科学者たちを驚かせた。タイタンの他の湖を形成したであろう浸食のプロセスでは、これほど高いリム(縁)は作れないからだ。一方、窒素の爆発であれば、クレーターを作るのに十分な威力を持っていただろう。

カッシーニ計画の科学者で、今回の研究には参加していないリンダ・スピルカー(Linda Spilker)氏は「これは途方もない謎であった小さな湖の周りの高いリムに関する異なる説明だ」とプレスリリースで述べた


NASAの探査機カッシーニが撮影したタイタンのこの画像では、クラーケン海と呼ばれる、巨大な液体炭化水素の湖の南端が北極(右上)近くに見える。

NASAの探査機カッシーニが撮影したタイタンのこの画像では、クラーケン海と呼ばれる、巨大な液体炭化水素の湖の南端が北極(右上)近くに見える。

NASA/JPL/Space Science Institute

9月9日にNature Geoscience誌に発表されたこの研究は、タイタンの極寒の地表(摂氏マイナス178度)が、数百万年前には液体窒素が存在するのに十分な今以上の低温(摂氏マイナス196度以下)であったという新たな証拠を示している。

「これらの湖は、表面や地殻に液体窒素が存在したタイタンの歴史の道しるべとなるだろう」と、この研究の共同執筆者であるカッシーニ計画に参加した研究者、ジョナサン・ルーニン(Jonathan Lunine)氏はリリースで述べた。

タイタンの「氷河期」の後の温暖化が爆発を引き起こしたかもしれない

カッシーニが撮影したこの近赤外線による画像は、タイタンの北極海で太陽がきらめく様子を映し出している。

カッシーニが撮影したこの近赤外線による画像は、タイタンの北極海で太陽がきらめく様子を映し出している。

NASA/JPL-Caltech/Univ. Arizona/Univ. Idaho

タイタンの湖の大部分は、液体メタンが氷の岩盤を溶かして形成されたと考えられている。これは、水が石灰岩を溶かして地球上に湖を形成したのと似ている。

しかし、これらの小さな湖の周囲にそびえ立つ、数十キロメートルもの幅があるリムは浸食では説明できず、科学者たちを混乱させていた。

「形態は爆発によるクレーターに似ており、リムはクレーター内部から放出された材料によって形成されたと思われる。まったく別のプロセスだ」と、本研究の国際チームを率いたジュゼッペ・ミトリ(Giuseppe Mitri)氏はプレスリリースで述べた。

炭化水素の海で形成される炭化水素の氷がタイタンでどのように見えるかを想定した画像。

炭化水素の海で形成される炭化水素の氷がタイタンでどのように見えるかを想定した画像。

NASA/JPL-Caltech/USGS

科学者たちは、タイタンには寒冷期と温暖期があったことを知っている。太陽光によって大気中の熱を閉じ込めるメタンが枯渇し、その後再びメタンが蓄積したのだ(新たなメタンがどこから発生したのかは謎だ)。

タイタンの「氷河期」の間、窒素が大気の大部分を占め、液体の雨として降り注ぎ、氷で覆われた地殻を循環し、地表下のプールに集まったと科学者たちは考えている。このプロセスは地球の水の循環に似ている。

しかし、新たな研究では、メタン濃度が高くなるにつれて(現在、タイタンの大気の約5%を占めている)、液体窒素の地下ポケットが加熱され、爆発性の高い窒素ガスに変化したことが示唆されている。そのガスは急速に膨張して爆発し、タイタンの表面にクレーターを作った。


タイタンの曇った大気を通して日没を観察しているNASAのカッシーニを描いた図。

タイタンの曇った大気を通して日没を観察しているNASAのカッシーニを描いた図。

NASA/JPL-Caltech

ミトリ氏のチームは、カッシーニが最後にタイタンに接近した時のデータを用いて、これらの湖の形が、地球上の水とマグマの相互作用による水蒸気爆発でできたクレーターの形に似ていることを発見した。

また、彼らの計算で、タイタンの地表下で液体窒素が温暖化すると、現在見られる湖を形成するのに十分な大きさの爆発が起こる可能性があるとわかった。

タイタンの湖には生命を宿す可能性がある

地球以外では、タイタンは太陽系で唯一、表面に安定した液体を持つ天体だ。この星には、メタンと窒素の相互作用によって作られる炭素に富んだ有機化合物がある。これら2つの要因を合わせると、生命が存在する可能性が出てくる(しかし、メタンとエタンの湖、川、海は、地球とはまったく異なる生命体を支えているのだろう)。

カッシーニはまた、タイタンの地下約100キロメートルに液体の水があることも明らかにした。非常に暗いだろうが、生命が存在できる環境かもしれない。


タイタンを飛行するNASAのドローン 「ドラゴンフライ」 の想像図。

タイタンを飛行するNASAのドローン 「ドラゴンフライ」 の想像図。

JHUAPL

カッシーニは、ガスの巨大惑星を周回した初めての探査機で、13年間で294周して土星の環と衛星系を調査した。カッシーニ以前には、科学者たちはタイタンとその隣の衛星エンケラドゥスの表面の下に潜む液体の水について知らなかった。

これらの発見は、地球外生命体探索のやり方を変えた。現在、NASAは、ドラゴンフライと呼ばれる原子力ヘリコプターを使ってタイタンを調査し、過去や現在の生命の痕跡を探すミッションを計画している。それは2026年に打ち上げられ、2034年にタイタンの地表に到達する予定だ。

一方、地球上の科学者たちはカッシーニのデータを使ってタイタンの調査を続けている。

「科学者たちがカッシーニのデータの宝庫を発掘し続けるにつれ、パズルのピースをどんどん埋まっていくだろう」とスピルカー氏。

「今後数十年のうちに、われわれは土星のことをもっと理解できるようになるだろう」


[原文:Lakes of methane on Saturn's moon Titan may be the craters of giant explosions, a new study shows

(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)

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