理想の外交は「柔道型」。茂木新外相は韓国とどう“組む”。韓国メディアは「河野氏のほうが…」

内閣改造

内閣改造で日韓関係のキーマンになった茂木敏充外相(左)。韓国側はこの人事をどう受け止めているのだろうか。

Reuters/ Issei Kato

内閣改造で外務大臣に茂木敏充氏(63)が就任することになった。

茂木氏は過去には小泉純一郎内閣で2002年10月から約1年間、外務副大臣を務めており、直近は経済再生担当大臣としてのアメリカとの貿易交渉を取りまとめた。以前から外務大臣を希望していたと言われ、念願のポスト就任となる。

外交問題の一番の懸案と言えば、激化する韓国との対立。相手の懐に飛び込む「柔道型」を理想の外交スタイルとしているが、果たして韓国との関係はどうなるのか。

以前から外相希望

茂木敏充

内閣改造で、念願だったと言われる外相ポストについた茂木敏充氏。

Reuters/ Issei Kato

今回の内閣改造・自民党人事では麻生太郎副総理兼財務相や菅義偉官房長官に加え、二階俊博幹事長も留任となるなど、安倍政権の骨格は維持されたが、主要閣僚の交代で注目されたのが外相だった。

茂木氏は1978年に東京大経済学部を卒業後、丸紅、読売新聞、マッキンゼーで勤務。ハーバード大学大学院への留学も経験している。1993年に日本新党から衆議院議員選挙に立候補し、日本新党解党後の1995年に自民党に入党。小渕・森内閣では通商産業政務次官、小泉内閣で外務副大臣を経て内閣府特命大臣として初入閣を果たしている。

外交を通じて日本を考えたいとして、以前から外務大臣就任を安倍晋三首相に訴えていたとされる。

しかし、「国内経済を優先したい」という安倍首相の意向があり、自民党内でも政調会長を務め政策通とされる茂木氏の手腕を買う形で経済再生相に任命されていた。

昨年の自民党総裁選では所属する竹下派が参院を中心に石破茂氏支持に傾く中で、安倍首相への支持を表明。

さらに今年は日米貿易交渉をとりまとめたことが評価され、今回念願のポストに抜擢された。

既定路線の外相交代

河野太郎

韓国に対して強硬な外交姿勢を見せてきた河野太郎氏。自民党関係者によれば、今回の交代は「既定路線」だという。

Reuters/ POOL New

一方、外務大臣を務めていた河野太郎氏は、宮沢喜一内閣の官房長官として発表した「河野談話」でも知られる河野洋平元衆議院議長の長男。「慰安婦の強制性」をめぐって今もなお議論が続く父親の談話を自身のHPでやや否定的に解説している。その“業”もあり、韓国に対しては強硬な姿勢を取っていた。

※河野談話とは…正式名称は「慰安婦関係調査結果に関する河野内閣官房長官談話」。従軍慰安婦問題について日本政府の調査結果を発表する際に、宮澤喜一内閣の官房長官だった河野洋平氏が出した談話。全文は外務省のWEBページで確認できる。

河野氏の韓国に対する態度は、立憲民主党の枝野幸男代表が「上から目線」「日韓関係を改善しようと思うなならばお辞めになるしかない」と批判するなど議論を呼んだが、今回の交代は自民党関係者によると「既定路線」。

河野氏は菅官房長官と同じく神奈川県を地盤とし、麻生派に所属。菅、麻生両氏の覚えもめでたく、「ポスト安倍」の一角として外交デビューを十分に果たし、「今後も着実に経験を積ませていこうという考え」(同関係者)なのだという。

理想は「柔道型外交」

外務省

英語力に長け、国際感覚も豊かな茂木氏。自身のスタンスである「柔道型」外交は功を奏すか。

Shutterstock/ Osugi

一方で、念願の外務相の椅子を得た茂木氏はどのような外交観をもっているのだろうか。

茂木氏は前出の外務副大臣時代の2003年に、著書『日本外交の構想力』を出版している。

同書では日本外交の柱として「これまでのような『対米追従』ではなく、『対米協調』から『対米説得』」を目指すとした「(1)スーパーパワーを前提としたリーダーの一人としての日本の役割」と、「国際社会から見ても特徴ある日本の支援」を掲げた「(2)地域問題に対して積極的かつ中立的に関与する平和の構築・定着」の2点を掲げる。

日米関係について、安全保障、経済、相互理解・友好促進を柱とした「世界の中の日米同盟」を掲げ、国連などに対しても「『提案する外交』を進めるときだ」としている。アジアについては中国の強大な力を認める一方で、「世界の中、アジアの中に(日本と中国の)両国の関係を位置づける視点」を訴え、「アジアに、中東に、そして世界に目を向けていかなければならない」と呼びかけている。

具体的な外交方針としては、「相手の懐に飛び込んで、押したり引いたりする柔道の組手のような関係」である「柔道型」を提唱。「日本の役割は国際社会のリーダーの1人として、アメリカや中国といったスーパーパワーに対して『柔道型の関与』をしながら、彼らを正しい形で国際社会やアジアに関与させていくことだ」と記していた。

課題は「人望のなさ」

日韓対立

激化する日韓情勢。果たして事態は好転するか。

Reuters/ Kim Hong-ji

茂木氏は、外務大臣を足掛かりに首相を目指しているとされる。

ただ「人望がない」というのが党内の評判だ。国外にも人望のなさは伝わっており、韓国の中央日報は8月14日には茂木氏の外相就任の可能性を指摘し、「報道機関に直接電話をかけて気に入らない担当記者の交代を要求するほど性格が強い。仕事の処理にスキはないが、『敵』も少なくない」と報じている。

柔道型の外交は、著書の中の話で机上の空論だ。外交では、相手が組んでくれるとは限らない。確かに、日米貿易交渉で実績を上げたかもしれないが、相手は友好国であるアメリカだった。一方で、現在の東アジア関係は余談を許すものではない。

中央日報は先ほどの記事の中で茂木氏と河野氏を比較し、「『無礼だ』と批判を受けるが、基本的に『河野談話』を発表した河野洋平氏の息子で、韓国に愛情を持つ河野外相の留任が韓日関係には役立つ」とする分析を日本政府筋の話として掲載する。

茂木氏は「柔道型」の外交について、「ともに困難に立ち向かい、いっしょに汗をかき、同じ価値を掲げ、同じ利益を有するから、時には相手にとって耳の痛いようなこともいえる間柄、付き合い方」を理想とすると著書では記しているが、韓国の懐に飛び込んで同じ価値観を持つことができるのか。

就任と同時にその手腕が問われ始めている。

竹内一紘:フリーランス記者。東京大学工学部都市工学科卒。元産経新聞社記者、自由民主党衆議院議員秘書。2017年の総選挙では希望の党の候補者を支援。著書に『希望の党の“あとに残った希望” 小池百合子「排除」の真相』。

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