6割が被害!フリーランス・芸能関係者をハラスメントから守るための相談窓口を

フリーランスや芸能関係者の6割がパワハラ、3割がセクハラ被害にあったことがあることが、当事者団体の調査によって分かった。

フリーランスは労働法の対象になっておらず、ハラスメント被害の詳しい実態を統計的に把握した初めての調査だという。先の国会ではフリーランスのハラスメントにも対策を取るよう決まり、これから本格的な議論が始まる。

政治は彼らの声にどう応えるか。

仕事を辞めた人は2割強

フリーランス

会見で過去のパワハラ・セクハラ被害を語る当事者の女性。

撮影:竹下郁子

調査は、日本俳優連合、MICフリーランス連絡会、一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会の3団体が共同で行った。2019年7月から8月にかけてインターネットを通じて、国内で俳優、ライター、アニメ・映像制作、ITエンジニアなどフリーランスで仕事をした経験のある、計1218人(男性29.7%、女性68.7%、その他1.6%)から回答を得た。

うち61.6%がパワハラ、36.6%がセクハラ被害経験があると答えている。

最も多かった被害は、脅迫や侮辱などの精神的な攻撃。中には、執拗に食事などに誘われたり交際を求められた、性的関係を求められた・迫られた、レイプされたという人もおり、深刻な被害の実態が明らかになった(複数回答)

被害にあった人の25.5%が業界にいることが嫌になって仕事を辞めている心身に支障をきたし、通院または服薬をしたという人も21.6%いた。

フリーランス

調査結果を発表する団体関係者ら。

撮影:竹下郁子

こうした実態にもかかわらず、被害にあった人のうち45.5%が誰にも相談できていない。相談したと回答した518名のうち152名は「家族や友人・知人」のみで、第三者に相談できた人は 366名(本設問の回答者950名の38.5%)に留まっている。

9月10日、調査を行った団体は厚生労働省で記者会見を行い、パワハラやセクハラ被害にあったという映像制作スタッフとして働く女性、そしてレイプ被害にあった八幡真弓さんも同席した。女性は「この業界は何がハラスメントに当たるか分かっていない人が多い」と指摘。理不尽に仕事を外されたり報酬を支払われなかったこともあったが、「契約書がないので何も言えなかった」という。

八幡さんはレイプと暴力を受け続けていたが、写真や動画を撮影されていたこともあり誰にも打ち明けられなかったそうだ。「複雑性PTSD」と診断され、1年間心療内科に通院し休職せざるを得なくなったが、フリーランスのため「労災や補償はなかった。当時は冷静な判断もできず、被害から逃れるには現場を投げ出すしかなかった。信頼もキャリアも捨てることになり、次の仕事を得ることも難しかった」という。

吉本、元SMAP、のん問題……経済的嫌がらせもパワハラに

撮影

映像業界で働いていた女性は「この業界は何がハラスメントに当たるか分かっていない人が多い」という(写真はイメージです)。

GettyImages/MadCircles

2019年5月、仕事上のハラスメントを防止するための法改正が行われ、企業にはフリーランスや就活生など雇用関係にない人にも必要な対策を講ずるよう、付帯決議に盛り込まれた。具体的にどう対策するのか、9月から始まる厚生労働省の労働政策審議会で議論される。

議論は「都道府県労働局に設置された総合労働相談コーナー、ハローワークにおける相談の状況を分析した上で」行うと付帯決議に書かれているが、フリーランスはそれらの機関の相談対応の対象からも外れており、状況把握ができていないと考えられるため、今回の調査を行ったという。

アンケート結果を受けて3団体は、納品した成果物や出演した作品に対して難癖をつけて報酬や消費税を支払わない、値切る、一方的な契約打ち切り、仕事の妨害などの「経済的嫌がらせ」をパワハラの類型に追加することなどを厚労省に要望した。

発注者企業と労働局に相談窓口を

平田麻莉

プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会代表理事の平田麻莉さん。

撮影:竹下郁子

また調査では被害者から「だれに(どこに)相談してよいかわからなかった」「相談窓口がほしい」という回答が多数寄せられたため、「発注者企業の『相談窓口』では、フリーランスからの相談も受けつけ、迅速かつ適切な対応を行うこと」、そして「『相談窓口』の設置をフリーランスにも周知するために、発注者とフリーランスとの契約書や 発注書に相談窓口があること、その連絡先を明記すること」も要望している。

「フリーランスが権力関係のある発注者企業の窓口に相談するのは難しいかもしれない。でも企業にそうした窓口を設けること自体が、ハラスメントの抑止力になる」(調査実施団体の担当者)

国には、フリーランスが実際に活用できる行政の相談窓口を各都道府県の労働局に設けて欲しいと要望している。

厚労省の担当者に調査結果と要望書を渡したという、プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会代表理事の平田麻莉さんによると、厚労省の担当者は「貴重な情報と要望なので活用する」という趣旨のことを話したという。

「9月18日に開催する労働政策審議会で恐らくこの話題が出てくるのでは。これまでフリーランスのハラスメントに関するデータがなかったので、ぜひ今後の検討会でも今回の調査を参考にして欲しいです」(平田さん)

編集部より:3枚目の画像のキャプションを改めました。 2019年9月17日 19:05

(文・竹下郁子)

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