Apple Watchシリーズ5について語るアップルのテイム・クックCEO。
出典:アップル
9月11日午前2時から始まったApple Special Eventでは新型iPhoneのiPhone 11、iPhone 11 Proが登場。これにあわせて2015年から毎年Apple Watchの発表も恒例になった。
第5世代のSeries5(シリーズ5)になったApple Watchは、過去の世代に比べて、もっとも「見た目でわかる変化」が少ないモデルだと感じる。
シリーズ4ユーザーの目線から、実機で注目すべき点をまとめた。
1. 待望の“常時点灯”。シリーズ4への対応は望み薄?
出典:アップル
電車に乗りながら、打ち合わせをしながら目線を時計に移すと「画面真っ暗」。見たいときはちょっと手首を動かして画面を点灯させないとならない。これは多くのスマートウォッチが抱える、ちょっとしたストレスポイントだ。
Apple Watchは初めて、シリーズ5で常時点灯に対応した。これは拍手喝采して良い。
通常は60Hzの描画を、使っていないときは60分の1の1Hzの描画(書き換え)にとどめ、明度も下げてバッテリーを温存する。これによってシリーズ4と同じ18時間駆動(All-dayバッテリーライフとアップルは表現)を実現した。
シリーズ5のディスプレイドライバーの仕組み。
出典:アップル
アップルはこの常時表示を「LTPOディスプレイ」と新しいディスプレイドライバーなどによるものとしている。
実はLTPOディスプレイはシリーズ4でも採用している。とするとアップデートでいけるのでは……と一瞬考えてしまうが、シリーズ4にはこの新しいディスプレイドライバーの仕組みがない。発表の中でも、「新しいディスプレイ」であることを何度も強調している。
9月20日に配信される最新の「watchOS6」アップデートを適用したとしても、シリーズ4の画面は「使わないときは暗いまま」だろう。
2. 複雑になったシリーズ5の価格構成
編集部が独自に制作。価格に影響のない本体色の違いは、表の中では除外しています。
また気になるのが価格だ。従来からApple Watchはアップル製品の中でもっとも製品ラインナップが複雑な商品だった。本体素材の違い、本体カラーの違い、ベルトの違いとさまざまあるからだ。
今回最上位の「Edition」がセラミックとチタンになったことで、価格構成はさらに複雑になった。
組み合わせるバンドによって購入金額は変わってくるが、参考までに全シリーズの最安購入価格を安価な順にまとめた。
3. 新たに追加された「チタン」ボディーは表面処理がポイント
チタン仕様のCGイメージ。
出典:アップル
最上位の「Edition」で選べるチタン素材は、人が身に着けるものとして素晴らしい金属だ。金属アレルギーを比較的起こしにくい素材として知られ、軽量という特徴がある。
ただし、アップルが言う「最高級の腕時計のみに使われる」という表現は、あまり正しくない。時計に詳しい人ならよく知っているように、チタンは数万円程度の時計にも使われているからだ。
高級腕時計と安価な腕時計のチタンの大きな違いの1つは、表面処理の良し悪しだ。素材のままだと傷が非常に入りやすいという特徴がある。高級腕時計では、硬化処理などを施して傷が入りにくくしている。だから、時計好きの人なら「チタンにどういう処理をしているのか」はまず見る。
アップルは「黄ばみやシミを防ぎ、指紋を目立たせない特別な表面被覆技術を開発」したと公式サイト上で説明している。これらが(または表記していない他の処理が)、表面硬度に対してどの程度有効なのかは、実物や実機インプレッションを見て確かめた方が良さそうだ。
4.「NIKE」バージョンだけ発売日が2週間遅い
出典:アップル
今回発表された製品は、多くが9月20日発売が多い。Apple Watch 5も基本的には同様だが、全モデルのなかで、実は「NIKE」バージョンだけは発売日が遅く10月4日の登場になる。
アップルとNIKEのコラボの歴史は長い。NIKE独自の文字盤(ウォッチフェイス)をどうしても使いたいという人は、ちょっとお預け、ということになる。
5. 併売のシリーズ3は2万円を切る割安さ。でも見た目がかなり違う
出典:アップル
今回の目玉の1つに、割安なシリーズ3の存在がある。アップルはシリーズ4のころから、シリーズ3を「入門向けのApple Watch」と位置付けて、戦略的な併売を続けてきた。ちょうど、iPhoneの最新世代とiPhone 8のような関係だ。
価格はGPSモデルなら1万9800円(税別)、セルラーモデルでも3万800円(税別)。とにかく安いことが魅力だが、初めて買おうと思っている人は店頭で画面をよく見比べてから決めた方が良いかもしれない。
シリーズ5とシリーズ3の表示領域の違い。
出典:アップル
シリーズ4以降のApple Watchはディスプレイが一変しているため、同じサイズ(40mm)を買ったとしても、表示領域が格段に広い。
実質的な情報量は変わらないが、シリーズ4以降のほうが本体の縁ギリギリまで表示するので、デザイン的な印象がかなり違う。
もちろん性能も違うが、iPhoneの通知とLINEなどのメッセージのチェック、ちょっとした運動にしか使わないなら、性能の違いはそこまで感じない。
ただ、身に着けるものだけに、デザインの満足度は重要だ。
(文・伊藤有)