「iPhone 11 Pro」はなぜ“Pro”なのか。実機を触って考えた4つのこと

iphone11pro-6

アップル本社にあるスティーブ・ジョブズシアター。その地下にあるホールで、発表会とハンズオンイベントが開かれた。

撮影:西田宗千佳

2019年9月の新iPhoneで、アップルは初めて「Pro」という名称をiPhoneにつける。ラインナップが3つ、という点は2018年と変わりないが、名前が「Pro」となると、どうにも違った印象を持つ。

iPhone 11 Proはどの辺が「Pro」なのか? アメリカのアップル本社で行われた発表会と、その後の実機ハンズオンからわかったことをまとめてみよう。

iphone11pro

iPhone 11。今年のメインモデルといえる製品で、2018年のiPhone XR以上にコストパフォーマンスが良くなった。

撮影:西田宗千佳

iphone11pro

iPhone 11 Pro。「3眼」のカメラが特徴。ハードウエアの多くがiPhone 11と共通だが、「Pro」らしい落ち着いたマットな仕上げだ。

撮影:西田宗千佳

実はバッテリー動作時間が「Pro」級だった

iphone11pro

iPhone 11 Pro MaxはXS Maxより5時間もバッテリー動作時間が延びた。

撮影:西田宗千佳

今年のiPhoneはカメラ機能の強化が目立つが、もうひとつの本質として、性能向上しつつ消費電力が下がっている、という点がある。非常に細かく、使っていないトランジスタへの電源供給をコントロールすることで、消費電力を大幅に下げることに成功している。

実のところ、「iPhone 11」と「iPhone 11 Pro」では、心臓部のプロセッサーに大きな違いはない。動作クロックやメモリー搭載量に違いがある可能性はあるが、あくまで同じ世代である「A13 Bionic」だ。単に「処理性能」でいえば、11とProの間に顕著な速度差が生まれるとは考えづらい。

battery

公式サイトには、バッテリー駆動時間に自信をみせる説明もある。

出典:アップル

だが、iPhone 11とiPhone 11 Proではバッテリー動作時間に大きな差が生まれている。

iPhone 11はXRに比べ1時間長くなって、ビデオ再生の場合で「17時間」動作するようになっている。11 ProはXSに比べ4時間伸びて「18時間」に、11 Pro MaxはXS Maxより5時間も伸びて「20時間」になった。

XS・XR世代ではXRがもっともバッテリー駆動時間が長かったのだが、今回はiPhone 11 Maxがもっとも長持ちする、という結果になる。この差は「Pro向け」と言ってもいいだろう。おそらく、ボディー構造の違いによるバッテリー搭載量の差と、ディスプレイの違いによるものだと考えられる。

実機をみないとわからないディスプレイの差

iphone11pro-2

iPhone 11 Proのディスプレイは高画質。特に色域・コントラスト表現が良く、iPhone XやXSに比べピーク輝度も向上している。

撮影:西田宗千佳

ディスプレイの差は、iPhone 11とProを分ける大きな違いだ。

といっても、iPhone 11の液晶ディスプレイは十分高品質で、ウェブを見たりSNSを見たり、といったことではあまり不便も不都合も感じないだろう。

もっとも大きな差が出るのは、HDR撮影された映像を見た時だ。iPhone 11で撮影した動画はもちろんだが、ネットフリックスや11月スタート予定の「Apple TV+」などで配信される「HDR対応映像」を見た時にも、大きな差を感じるのではないだろうか。

iPhone 11 Proのディスプレイはピーク輝度が1200nitsもあり、コントラスト感がかなり高い。HDR対応映像の色域やピーク輝度の高さから来るコントラストを活かした映像では、液晶とは一線を画した画質が楽しめるはずだ。

これも「Pro」要素と言える。映像制作のプロにも向いているし、映像にこだわりがある人向けでもある。

ズーム倍率だけでは決まらない「プロのカメラ」

iphone11pro

iPhone 11 Proの特徴である「3眼カメラ。単に1つ1つを切り換えて使うだけでなく、3つで撮影した画像を組み合わせて画質向上を図るのが特徴。ズームだけの3眼ではない。

撮影:西田宗千佳

もちろん、最大の「Pro」要素はカメラだ。

iPhone 11とPro系の違いは、望遠(35ミリ換算で52mm)のカメラを搭載しているか否かだ。

iPhone 11は、35ミリ換算で26mmと13mmのカメラを搭載し、「広角」と「超広角」の撮影が可能になった。それに加えて「望遠」なので、三段階に切り換えられることになる。

とはいえ、いまやAndroidのライバル機種は、「10倍」ズームも搭載する時代。実質光学2倍では、これらに比べ見劣りはする。

ただ、ズームだけが「Pro」要素ではない。むしろ3つのカメラを合わせて使い、どのシーンでも色が変わることなく、ちゃんとシームレスに、HDRで動画撮影できることは非常に大きな要素だ。この辺は、「HDRでの動画撮影を強く指向した」スマホがまだ少ないこともあって、iPhoneの差別化点といえる。ライバルはXperia 1くらいではないか。

ウルトラワイドレンズの超広角カメラ

公式サイトの超広角カメラの解説。

出典:アップル

一方、iPhoneのカメラが強い部分は、そうしたカメラ機能をアプリを開発する「サードパーティー」が扱い、プロに特化した目的のカメラアプリを開発できる点にある。

Androidの場合、対応すべき機種があまりに多く、ひとつひとつの機種が持つカメラの特性に対応するのが難しい。

だから「カメラの全機能が使えるのはメーカー自身が作ったカメラアプリのみ」ということが多い。しかし、iPhoneなら開発情報として公開されているので、対応もしやすい。プロ向けカメラアプリが増えやすい、と言う意味でも「Pro」なのだ。

iphone11pro-4

アップル以外にも多数のアプリメーカーがカメラアプリを開発している。それらがちゃんと「カメラの特性にあわせて機能を使っている」のがiPhoneの特徴。

撮影:西田宗千佳

Proの理由は「11をメインに売る」ための工夫から生まれた?

ip11pro-1

アップル公式サイトのiPhone 11 Pro紹介ページより。全面的にカメラ推し。サイトそのものも11より11 Proを推している雰囲気もあるが……。

出典:アップル

とはいうものの、一番大きな「Pro」要素は、何だかんだ言って外観かもしれない。背面の仕上げがマットなものにかわって、いままでのiPhoneよりも落ち着いて見える。

この辺はアップルとしても、iPhone 11とProの差別化として注力したところのようだ。

すでに述べた通り、プロセッサーの内容が大きく違わない以上、iPhone 11と11 Proを隔てるものは意外と少ない。ディスプレイと望遠カメラくらいのもので、他の利点は「11も11 Proも同じ」と言ってもよい。

iPhone XS・XRが出た2018年は、「メインに据えるべき製品がiPhone XSで、XRは廉価版」といった印象を与えてしまった。その結果販売が伸び悩み、減産を各社とともに進める必要があったほどだ。

iphone11pro-10

iPhone 11はカラフルで光沢感のある仕上がり。どちらかといえば「カジュアル」指向だ。

撮影:西田宗千佳

iphone11pro-5

iPhone 11 Proはマットな仕上がりで、色も落ち着いた深みのあるもの。手触りにも高級感がある。

撮影:西田宗千佳

一方、今回は「11がProの下」というよりは、「Proが11の上」という印象を与えるようなネーミングになっている。

多くの人は11 Proでなく11でも満足できると思うし、アップルも2018年ほど上位機種に顧客を強く誘導してはいないように見受けられる。iPhoneユーザーの大半が自然にiPhone 11に買い換え、「プロと違いがわかる人で、価格の違い納得できる人」に向けてProを売る、という形になったように思える。

デザインや手触りで高級感を演出し、「11はポップなユーザー、Proはハイコミュニティ」という見せ方をしたいのだろうか……と、実機を触りながら考えた。

そういう意味では「Pro」というネーミングは、「いかに11を売るか」という点から逆算されたものである、ともいえそうだ。

(文、写真・西田宗千佳)

ソーシャルメディアでも最新のビジネス情報をいち早く配信中

あわせて読みたい

Popular

BUSINESS INSIDER JAPAN PRESS RELEASE - 取材の依頼などはこちらから送付して下さい

広告のお問い合わせ・媒体資料のお申し込み