アパレルのワールドが「ポップアップ型百貨店」。若手支援でファッション業界を活性化

246st MARKET の俯瞰イメージパース

青山のワールドのビルにできる期間限定のポップアップストア「246st MARKET」のイメージ。

提供:ワールド

2018年9月に再上場を果たした大手アパレルのワールドが、新たな取り組みに挑戦している。

「ワールド・ファッション・エコ・システム(WFES)」と呼ぶ新しいビジネスモデルで、これまで培ってきたノウハウやシステムを開放し、若い才能やD2Cブランドを支援することで、ファッション業界全体の活性化を目指すものだ。

※D2Cとは……ダイレクト・トゥ・コンシューマー。メーカーが顧客に直接販売するシステム。

すでに、次世代ファッション業界の多様なアイデアやチャレンジの支援を目的とした「クリエイターズサポートプログラム」を今期からスタート。その一環として、スタートアップ系や実店舗を持たない「D2Cブランド」を集めたポップアップ型百貨店「246st MARKET(246ストリートマーケット)」を9月14~23日に開催する。

エグゼクティブ・キュレーターにファッション・クリエイティブ・ディレクターの軍地彩弓氏を起用。「サステイナブル(地球環境に配慮した持続可能性)」の観点でファッション、服飾雑貨、飲食の15ブランドを集積。作り手であるデザイナーやクリエイターが来場者と直接接点を持ち、双方向にコミュニケーションをすることでしか味わえない新しいモノや人との出会いを創出する。

若手にはビジネスサポートが必要

ファッション・クリエイティブ・ディレクターの軍地彩弓氏(左)とワールドの森岡聡子グループコミュニケーション推進室室長(右)。

ファッション・クリエイティブ・ディレクターの軍地彩弓氏(左)とワールドの森岡聡子グループコミュニケーション推進室室長(右)。

撮影:松下久美

場所は、表参道の交差点から国道246号線沿いに徒歩1分の好立地にあるワールド北青山ビル(港区北青山3-5-10)。事業責任者は、クリエイティブ・マネジメント・センターの副センター長やプラットフォーム事業推進室の副室長なども兼務する、ワールドの森岡聡子グループコミュニケーション推進室室長だ。

「グループのコミュニケーションを推進する部門として、北青山ビルをさまざまな活動や情報を発信する拠点にしたい。これまで多業態・多ブランドを展開し店舗開発やMD(商品計画)、CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)、生産などを支えてきたプラットフォームを活用して、スタートアップ系のブランドやクリエイターの成長を後押したい」

このビルの地下1階にモノづくり拠点「クリエイターズラボ」を開設したり、12階をデジタル系グループ会社との共創拠点としたりもしている。今回期間限定で展開する「246ストリートマーケット」では一歩進めて、ブランドやクリエイターと消費者を直接つなぐ場を目指す。

エグゼクティブ・キュレーターを務める軍地氏は狙いや、ワールドがクリエイター支援をする意義をこう語る。

「ファッション業界の活性化には、若手のインキュベーションが不可欠。D2C型のビジネスモデルや多様なデジタルツールにより、個人でブランドを立ち上げたりSNSで販売するようなブランドも増えている。けれども、スケールさせるには、若手をつなげ、交流や発信しながら育成する場が必要です」

軍地氏がキャンプファイヤーの顧問として、ファッションに特化したクラウドファンディングサービス「CLOSS(クロス)」を手がけたり、数々のアワードで審査員をしたりしていて感じるのは、可能性のあるクリエイターやスタートアップを選ぶだけでなく、その後のビジネスサポートの重要性だ。

「ワールドが自社内にある長年の知見やネットワーク、プロフェッショナルの人材などを外部に開き、個の力を支援する仕組みを作ろうとしているのはすばらしい取り組みだ」

海外でも盛況なポップアップストア

ニューヨークの街並み

小規模でもユニークなブランドを集めたストアは世界的にも台頭、NYやサンフランシスコでも。

Shutterstock

海外事情にも明るい軍地氏が、「ポップアップ」や「新しいタイプのインキュベーション型ストア」に可能性を感じたことも今回の企画につながっている。

発想のきっかけになったのは、2017年にニューヨークで見た「キャナル・ストリート・マーケット」(2016年12月開店)だった。片側にフードゾーン、もう一方には地元のデザイナーや職人の小さなブースが集まるゾーン、中央にはコワーキングスペースを配置。さまざまな人々が交流したり共創したりする姿を見て、東京で具現化したいと考えた。

同じくニューヨークの「ショーフィールズ」やサンフランシスコの「リ・ストア」、韓国の「アラウンド・ザ・コーナー」のような、ラック貸しやコーナー貸しで、小規模でもユニークなブランドを集めたストアは世界的にも台頭しているという。

「大都市などでも店舗の閉店が相次ぐ一方で、スニーカーやスポーツブランド、グーグルやアマゾンなどもポップアップストアを展開し盛況だった。ビジネスチャンスだと感じました」(軍地氏)

ポップアップ業態の開発については、ワールドの課題でもあったと森岡室長。ファッション業界では、ECの台頭や家賃や人件費の高騰などから撤退店舗が増え、新規出店や新業態の開発が鈍化。ショッピングセンター(SC)には「空床」と呼ばれる空きスペースが多発しているからだ。

「デベロッパーの方々から空床化問題を聞き、『ポップアップで出店してくれる面白いブランドはないか』『ワールドから提案してほしい』と要望をいただいていた。今回のマーケットは複数の旬のブランドが一堂に集まっているため、より幅広い方々に興味を持っていただきやすい。今回は初回であり、CSR(社会貢献)や情報発信の意味もあるので出店料はナシ。まずは第1回を成功させ、今後の展開につなげていきたい」(森岡室長)

サステイナブル徹底、イメージは「方丈庵」

ワールドポップアップ

出品するのは、ファッションだけでなく食も。写真は、出品ブランドの一つ、TENDER PERSON。

TENDER PERSONのHPより

会場演出は、「サステイナブル」を徹底。什器のデザイン・制作には建築家の百枝優(ももえだ・ゆう)氏を起用した。軍地氏が着想を得たのは、鎌倉時代初期に『方丈記』を記した鴨長明の折り畳み式の移動式住居「方丈庵」だった。

軍地氏にとって、『方丈記』は父が好きで暗唱させられた思い出の古典。京都に行った際、鴨長明が気の向くままに移動しながら住んでいた「方丈庵」の復元レプリカを見て、これだ!と直感した。

「今回は什器をすべて折りたためる仕様にし、ポップアップストアが終わったらたたんで収納し、また次の場所で飛び出す絵本のようにポップアップして店を開く。繰り返し使えるし、モノ勝負で生きている人々やブランドにとっては、可変式で自由自在な場所にできるだけ費用を抑えて一定期間出店できるようにしました」

中央にはコミュニケーションができるコワーキングスペースも作った。

出店するのは、クラウドファンディングで成長したブランドや、3Dで計測したパーソナルオーダーのシューズ、アフリカの女性の雇用を促進するエシカルなブランドやLGBTQを支援するブランドなど、デジタル、サステイナビリティ、クラフツマンシップなどの流れを汲んだ15ブランド・ストア。すでにファンや顧客を持っているブランドも多いという。

軍地氏がイメージするのは今は東急プラザ表参道原宿になっている場所にあった「原宿セントラルアパート」だ。

「セントラルアパートには、かつてデザイナーやカメラマン、イラストレーターなどのクリエイターや文化人など集まっていた。地下には小さなブティックが並び、若いデザイナーが直接お客さまと対話して商売できる場所で、ファッションの虎の穴的な存在だった。令和の時代に『原宿セントラルアパート』のような存在をもう一度作り、新たなファッションカルチャーを発信したい」

14日には「ヴォーグ・ファッションズ・ナイトアウト」にも参加。日替わりでトークイベントやワークショップなども開催予定だ。

松下久美:ファッションビジネス・ジャーナリスト、クミコム代表。「日本繊維新聞」の小売り・流通記者、「WWDジャパン」の編集記者、デスク、シニアエディターとして、20年以上ファッション企業の経営や戦略などを取材・執筆。2017年に独立。著書に『ユニクロ進化論』。

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