キャッシュレス決済の「PayPay」は、サービス1周年を記念して「PayPay感謝デー」を10月5日に開催する。
撮影:太田百合子
PayPayはサービス開始1周年を迎える、10月5日に1日限定のキャンペーン「PayPay感謝デー」を開催する。
これまで月ごとに薬局、コンビニ、スーパーなど、加盟店のジャンルを絞ったキャンペーンを展開してきたが、今回のキャンペーンは全加盟店が対象となる。
1回の決済につき1000円相当を上限とし、支払額の20%をPayPayボーナスとして還元。同時に10万円相当を上限に、50回に1回の確率で支払額全額がPayPayボーナスとして還元される「感謝デー限定PayPayチャンス」も実施。
10万円の高額な支払いが全額還元されるチャンスのあるキャンペーンは、2018年末に話題を集めた「100億円あげちゃうキャンペーン」の第1弾以来だ。
1年でユーザー1250万人、加盟店140万カ所
PayPayの1年間の実績。
PayPayはこの1年間で急成長している。サービス開始から1年でユーザー数は1250万人、加盟店は140万カ所、決済累計回数は1.4億回超。
高額利用が殺到し、わずか10日で終了してしまった、第1弾「100億円あげちゃうキャンペーン」、上限金額を下げてより多くの加盟店で利用できるようにした第2弾「100億円キャンペーン」など、相次ぐキャンペーンで認知度を高めた。
キャンペーン発表会で、PayPay社長の中山一郎氏は胸を張って以下の様に話している。
「1年前には誰もその名前を知らなかったが、今では電子決済で名称認知度ナンバーワン。今日の時点でApp Storeの無料アプリランキングでも1位になっている」
加盟店開拓の営業に力を入れる
PayPayは加盟店拡大とともにキャンペーンを並行して行っている。
ユーザー数、加盟店の急拡大の原動力となってきたのが、全国20カ所に設置されている営業拠点だ。
数千人規模の営業人員を動員し、早い段階から全国で一斉に加盟店を拡大。加盟店には大型チェーンも名を連ねている。「2019年4月以降はほぼ毎週、大型店舗との提携を発表している」と中山氏。
6月には大手ドラッグストアの約9割、8月にはコンビニエンスストアほぼ全店、9月には大手スーパーマーケット5000店舗以上が加盟店に加わっている。さらに大型チェーン店だけでなく、全国の商店街での導入も広がっているという。
電子決済対応レジなどがない加盟店向けには、スマートフォンで取引状況を確認できる専用アプリも提供し、好評を得ているという。
1年で60回以上の更新、チャージ方法も拡充
PayPayアプリ自体も1年間で大きく様変わりした(左が初期頃の画面、右が2019年9月14日時点の最新版)。
一方で利用者向けのアプリも、この1年で大きく様変わりしている。PayPayでは日本のほか、インド、カナダに開発拠点を設け、時差を利用して「24時間体制で開発が動いている」と中山氏。より使いやすいアプリを目指して、この1年間で実に60回以上のアップデートを実施してきた。
例えばマップ機能では、PayPayが使える店舗が検索できるだけでなく、キャンペーン実施中の店舗がひと目でわかる工夫も施されている。
PayPayは新たにApple Watchにも対応した。
使いやすさへのこだわりはアプリだけでなく、チャージ方法のバリエーションの多さにも表れている。
中でも全国に2万5000カ所あるセブン銀行ATMでのチャージは、多くのユーザーに利用されているという。
PayPayモールにはZOZOTOWNも出店予定
写真左からヤフー社長の川邊健太郎氏、新ZOZO社長の澤田宏太郎氏、そして前澤友作氏。
撮影:今村拓馬
1周年を迎えてPayPayでは今後も加盟店拡大に加え、オンラインでの決済も強化していく考えだ。すでにヤフーから、ECの「PayPayモール」、フリマアプリの「PayPayフリマ」が2019年秋にスタートする計画が明らかにされている。
その「PayPayモール」には、12日にヤフーの連結子会社となることが発表されたばかりの「ZOZOTOWN」も出店することになる。中山氏は、「まだTOB(編集部注:株式公開買付け)が発表されたばかりなので……」と前置きしつつもZOZOTOWNとの取り組みについて、「これからお互いに話し合っていく中で、いろいろな発見、アイデアが生まれることを楽しみにしている。1日も早くPayPayのユースケースとして提供したい」と期待をにじませた。
決済アプリから“スーパーアプリ”を目指すというPayPay。
10月の増税に向けてキャンペーンも続々実施
最大10%還元されるキャンペーンも2019年10月から開始予定。
冒頭の1周年記念キャンペーンのほか、秋からは既発表のユニクロとの施策など、大手加盟店とコラボレーションしたキャンペーンも強化する。
10月4日~22日までPayPayでヒートテックを購入するともう1枚無料となるキャンペーンのほか、10月7日~11月3日までPayPay対応のコカ・コーラの自動販売機でのアプリ決済「Coke ON Pay」でドリンクを購入すると、1週間に1度100円相当が戻ってくるキャンペーンを実施する。
また、詳細は未発表ながら、9月27日からは配車アプリ「DiDi」とのキャンペーンも展開予定。さらに10月からは、経済産業省のキャッシュレス・消費者還元事業にあわせたキャンペーンも実施。第1弾として10月1日~11月30日まで、消費者還元事業5%、PayPayから最大5%のあわせて最大10%が戻ってくる取り組みが予定されている。
「手数料で稼ぐビジネスモデルではない」
PayPay社長の中山一郎氏。
まさに怒濤のキャンペーンラッシュといった様相だが、PayPayの収益化について中山氏は「今はトランザクションを最大化するのがミッションだが、もちろん収益化についても精緻な計画を持っている」と発言。
計画の詳細についての説明は避けたが、「少なくとも手数料で稼ぐビジネスモデルではない」と、現在2021年9月30日まで無料となっている加盟店決済システム手数料を、収益の柱にする考えはないことを明らかにした。
さらなるユーザーの獲得に向けて中山氏は「セキュリティーが不安」「使い方がわからない」といった声にも、真摯に向き合っていきたいとする。
引き続き不正利用の防止に取り組むのはもちろん、万が一の際にはユーザー、加盟店の双方へ補償するこをも明文化していると説明。サポートを強化し、24時間365日対応の電話窓口に加えて、10月以降はソフトバンクショップの協力を得て、店頭での取り組みもスタートさせる。キャリアを問わず、PayPayの使い方がわからないスマホユーザーの相談に応じていくという。
(文、撮影・太田百合子)
太田百合子:フリーライター。パソコン、タブレット、スマートフォンからウェアラブルデバイスやスマートホームを実現するIoT機器まで、身近なデジタルガジェット、およびそれらを使って利用できるサービスを中心に取材・執筆活動を続けている。