日本初のFrontiers Tourには、Slack CEOのスチュワート・バターフィールド氏も登壇した。
撮影:小林優多郎
Slack Japanは9月17日、ビジネスチャット「Slack」の最新事情を共有するカンファレンス「Frontiers Tour Tokyo」を、東京・虎ノ門で開催した。
Frontiersは毎年Slackの本拠地・アメリカで開催しており、その後世界各地でFrontiers Tourを開いている。日本国内でFrontiers Tourを開催するのは今回が初めて。参加申請をした人数はのべ1000名、来場者は600名。
基本的な内容は4月に開催されたアメリカ開催のFrontiersの振り返りだが、日本のユーザーや導入社にとって有益な情報も出てきている。Frontiers Tour Tokyoで語られた注目の5つのポイントを紹介しよう。
1. 東京だけでも50万人以上のユーザー規模に成長
Slackのデイリーアクティブユーザーは1000万人。
Slackが日本に上陸(日本語対応)したのは、2017年11月。2018年6月に同社が初めて開いたネットワーキングイベントでは、当時のユーザー規模について「世界で800万人以上」「国内で50万人以上」と話していた。
今回のイベントでは、日間アクティブユーザー(DAU)は1000万人と伝えられた。また、国内のユーザー規模について、キーノートに登壇したSlack社CEOのスチュワート・バターフィールド(Stewart Butterfield)氏は「東京だけでも50万人以上が使っている」と話している。
また、Slackというとインターネット企業やスタートアップなどとの親和性が高いような印象もあるが、日本の大企業への導入も進んでいる。Frontiers Tour Tokyoでは、社員数5000名でネットワーク通信工事やシステムインテグレーションを手がける「NECネッツエスアイ」での全社導入も発表された。
2. 2020年、日本国内でSlackのデータを保管可能に
Slackの最高製品責任者であるタマル・イェホシュア氏。
また、Slackはよりレガシーな企業や団体への導入も進めていく。その一環として同社が取り組んでいるのが、Slack内のメッセージや投稿、ファイルなどといったデータの場所(地域)を指定できる「データレジデンシー機能」の提供だ。
とくに、行政や金融、医療などといった業界では「保管されているデータの場所」が、自社のプライバシーポリシーや各種規制のため、ツール選択の上での避けては通れない要素になっている。
実際、日本でも上記のような業界の企業や団体が、アメリカ国内にデータを保管してしまうSlackではなく、自社である程度コントロールできる別のツールを採用する例があった。
Slackのデータレジデンシー機能は、まず2019年後半からドイツ・フランクフルトの設定を提供すると発表されていたが、今回のイベントで、日本でも2020年第1四半期に展開される旨がアナウンスされた。
3.「共有チャンネル」の導入社数は2万以上
2つの異なる組織のSlackをつなげることができる「共有チャンネル」。
SlackはEメールとよく比較される。Slack自身もEメールより優れている点を強調している。
けれど、(セキュリティー的なリスクはあれど)Eメールは“アドレスさえ知っていれば誰にでも送れる”という圧倒的な汎用性がある。社外の人間とSlackでやりとりをするには、仮にその相手がSlackユーザーだったとしても、いちいちゲストとして招待する必要があった。
しかし、ベータ版として公開されている「共有チャンネル」機能を使えば、異なる2社のユーザーが1つのチャンネルでやりとりできる。
イベントに登壇したSlackの最高製品責任者のタマル・イェホシュア(Tamar Yehoshua)氏によると、ベータ版ながら共有チャンネルを導入している組織は、日本のメルカリをはじめ2万以上にのぼるという。イェホシュア氏は同機能が「すべての有料契約のユーザーが使える状態」であるとアナウンスした。
4. Eメールを取り込むツールも用意
仮想敵とも言える「Eメール」に関する機能も最近利用できるようになっている。
とはいえ、共有チャンネルだけでは“そもそもSlackを使っていない相手”や“Eメールで送られてくる情報”をフォローできない。そこで、同社が紹介しているのが「Eメールアドオン」と「Eメールブリッジ」だ。
EメールアドオンはGmailおよびOutlook向けに公開されており、Slackと連携させることで受信したメールの内容や添付ファイルをスムーズにSlackのチャンネル内で共有できるものだ。
Slackから届いたEメールに返信すると
その内容がSlackに投稿される。
一方、「Eメールブリッジ」は“Slackのワークスペースに招待したが、まだ参加していない人”に対する機能だ。
招待したが参加していない相手にメンション(@付きの名前で通知をする機能)をつけて発言すると、相手にはSlackからEメールで内容が送られ、相手はそのEメールにただ返信すれば、Slack内で返信内容が自動で投稿される仕組みだ。
添付ファイルの送信やリアク字(絵文字でのリアクション)などはできないが、ワークスペースに参加するまでの時間を有効的に使えるようになる。
5.「ノンコーディング」のアプリ制作環境が10月登場
企業で利用されているクラウドサービスは1000種類以上。
Slackの醍醐味は、単にコミュニケーションの方法をチャットにして、プロジェクトの進行スピードを上げることだけではない。さまざまな業務に必要なクラウドツールやシステムをSlackに接続し、Slack内で完結させ効率化できる。
Slackには既に1800種類以上ものクラウド連携ツールが提供されている。フリープランであれば10種類、有料プラン契約者は無制限にSlackと外部ツールをつなげられる。
しかし、提供されているツールですべてのニーズが満たされるわけではない。SlackはAPIを開発者向けに提供しており、社内のSE担当者などはそれらを活用して自社アプリを開発できるが、より手軽に誰でも簡易的なアプリを作る方法が登場する。それが「ワークフロービルダー」だ。
定型フォームへの入力など、かんたんなアプリであれば、「ワークフロービルダー」で構築できる。
ワークフロービルダーは、ノンコーディングでアプリを開発できる。例えば、会議室の予約や有休の申請など、定型の申請フォームなどをつくるのであれば、特別な知識はほとんど必要ない。
Slackは、ワークフロービルダーの受付を招待制で受付を始めており、一般公開は10月後半を予定している。
また、同社は10月22~23日にアメリカ・サンフランシスコで開発者向けイベント「Spec」を開催予定。Specではより実践的な開発ワークショップやSlack本体の機能について語られる予定だ。
(文、撮影・小林優多郎)