さえずるニシマキバドリ。
Matthew Pendleton, Macaulay Library at Cornell Lab of Ornithology
- 1970年以来、アメリカとカナダから合わせて約30億羽の鳥がいなくなっている。
- 新たな研究で、鳥の個体数が過去48年間で29%減少していることが分かった。
- 科学者たちは、農作業、殺虫剤、そして生息地の減少がこうした減少の主な原因と指摘する。
- この研究結果は、別の不吉な傾向のデータでもあり、地球が6度目の大量絶滅の最中にあることを示している。
現在北アメリカ大陸では50年前に比べ、鳥が29億羽、少なくなっている(単位が間違っているわけではない)。
9月19日(現地時間)にサイエンス(Science)誌に発表した研究論文は、北アメリカの何百種類もの鳥 —— ニシマキバドリから、スズメなど庭で見かける鳥まで —— の個体数が減少したことを報告している。全体で、29%減少していると分析結果は示している。
「絶滅危惧種は引き続き減少すると思われる。だが今回の調査結果は、初めて、どこにでもいる鳥も含めて広範囲で鳥が減少しているということを示した」と論文の筆頭著者、ケネス・ローゼンバーグ(Kenneth Rosenberg)は記者会見で述べた。
ローゼンバーグはコーネル大学鳥類学研究所(The Cornell Lab of Ornithology)およびアメリカ合衆国鳥類保護協会(American Bird Conservancy)の科学者で、まだすべての種類の鳥が絶滅しようとしているわけではないが、総個体数は大打撃を受けているとBusiness Insiderに語った。
「リョコウバトの例がある。リョコウバトはかつて地球上で最も数の多い鳥の一つだった。あの鳥が絶滅するとは誰も思わなかったが、絶滅した。数の多い種でさえ、あっという間に絶滅するのだということを思い知らされる」
論文で述べられている鳥の減少は、もっと大きな傾向の一部だ。地球は大量絶滅の最中にあるようだ。膨大な数の動植物の種が姿を消すのは、史上6度目。国際連合(United Nations)の最近のレポートでは、50~100万種の動植物が絶滅の危機に瀕していることが分かった。
ローゼンバーグによると、この調査結果は「間違いなく、6度目の大量絶滅の一部」である。
最も打撃を受けた種は、身近な鳥
この研究のため、ローゼンバーグとその同僚は、アメリカ本土とカナダに生息している529種の鳥の数の変化を示すデータを見た。また、鳥の移動パターンを過去10年にわたり追跡した、気象レーダーのデータも調べた。
その結果、姿を消している鳥の90%が、スズメ科、ムシクイ科、アトリ科、ツバメ科など、12の科に属していることが分かった。こうした、身近で数の多い種は生態系に重要な役割を果たしている。昆虫の個体数のコントロールを助け、植物の種子をまき散らすのだ。
データによると、スズメやマキバドリといった草原に生息する鳥は、1970年以降最大となる総個体数の減少を経験した。31種の7億羽以上の鳥が姿を消した。また、イソシギやチドリなど 海岸に生息する鳥の37%も、個体数が急激に減少していることが分かった。
水辺を歩く小さなミユビシギ。
Andy Eckerson, Macaulay Library at Cornell Lab of Ornithology
北アメリカの春の渡り鳥の数も減少しており、過去10年だけでも14%減少していると研究者たちは明らかにした。
論文の共同著者でアメリカ合衆国鳥類保護協会の会長、マイケル・パー(Michael Parr)は、全体的に鳥が減少していることが「昆虫の絶滅」と同等の種の多様性の危機を表しているとBusiness Insiderに語った。2月に発表された研究によると、世界の昆虫類の40%が減少している。
「普通、人々が絶滅で想像するのは、オランウータンやゾウ、つまり身近でない生物だが、世界的な種の多様性の危機がここアメリカの裏庭にもやって来た」と彼は述べた。
「もちろん、ハクトウワシが絶滅する可能性ほど劇的ではないが、油断できないという程度では済まされない。ほとんどの人は、過去50年間にわたってゆっくりと、だが確実に、家の裏庭からほとんどの鳥がいなくなっていることに気が付かないだろう」
著者たちは、過去50年で個体数を増やしている鳥も数種いることを発見した。アヒルやガチョウ、ハクチョウといった水鳥や、ハクトウワシといった猛禽がこれに含まれる。これらの鳥は、アメリカとカナダにおける、絶滅危惧種に関する法律と湿地帯復元作業の恩恵を受けている、と研究者たちは述べた。
鳥の個体数減少は、6度目の大量絶滅のサイン
1500年代以降、人間の活動は680種の哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、そして魚類を絶滅させている。かつて共存していた動物の半数が、今は存在しない。昆虫類の少なくとも10%、すべての海洋哺乳類とサンゴ礁のサンゴの33%以上が絶滅の危機に瀕している、と国連のレポートは明らかにした。
「身近な鳥の減少は北アメリカに限ったことではない。一歩引いて見ると、本当に世界的な現象だ」とローゼンバーグは言う。
2018年の研究は、フランスの農地に生息する鳥の個体数の3分の1が、それ以前の30年でいなくなっていたことを明らかにした。鳥の保護団体と世界的に提携している、バード・ライフ・インターナショナル(Bird Life International)のデータは、ヨーロッパ全体で1980年以来、3億羽の農地の鳥がいなくなっていることを示している。
ボルティモア・ムクドリモドキ。
Ryan Schain, Macaulay Library at Cornell Lab of Ornithology
「鳥は文字通り『炭鉱のカナリア』だ。彼らは我々に、問題があることを伝えている」とパーは述べた。
生息地の減少との関連も
ローゼンバーグ氏によると、こうした減少を推進する最大の要因は、生息地の消失と劣化だという。こうした鳥の繁殖と営巣のための土地の多くは、農地開発のために休閑地に変えられている、と著者たちは記した。
「草原に生息する鳥が最も打撃を受けた。ハゴロモガラスなどの農地や田園を好む鳥も」とローゼンバーグは述べた。
「農家がトウモロコシ畑の面積を確保するために草むらや樹木を削り取る農業の推進が、鳥たちに影響を与えていることは間違いない」
鳥にとっての危険因子には他にも、ネコなどの捕食者、ガラスやビルなどの建造物との衝突、そしてまた、餌となる昆虫の毒も含まれる。
枝にとまるツバメ。
Karen Hogan, Macaulay Library at Cornell Lab of Ornithology
アメリカでは、ネオニコチノイドなどの殺虫剤の普及も鳥の減少の一因となっている可能性がある、とパーは付け加えた。
「確かな証拠はないが、全土に広がっている大量の昆虫の毒が、昆虫を食べる鳥の減少と関連がないとすると、それは非常に驚くべきことだ」
(翻訳:Ito Yasuko、編集:Toshihiko Inoue)