グーグルなし、発売日未確定。異例の「Huawei Mate 30」から読み解くファーウェイの新たな戦略

Huawei Mate 30 Pro

ファーウェイが発表した新型スマートフォン「Huawei Mate 30 Pro」は、さまざまな「異例」の要素を含んでおり、各国メディアの注目を浴びている。

撮影:小林優多郎

ファーウェイが9月19日に発表した新型スマートフォン「Huawei Mate 30」「Huawei Mate 30 Pro」は、同社にとってさまざまな意味で挑戦的な端末だ。

既報のとおり、Huawei Mate 30シリーズは同サイズのどの端末よりも広いディスプレイ、動画機能にも注力した4レンズカメラ、そして次世代通信規格「5G」にも対応したチップセットが搭載されている、最新・最高峰のスマートフォンの1つだ。

Huawei Mate 30 Proのスローモーション撮影

Huawei Mate 30 Proではスローモーション撮影など、7680fps(通常撮影の256倍)のウルトラスローモーション撮影機能が搭載された。

一方で、ユーザーや端末を販売する通信キャリアや小売店にとっては、ソフトウェア面で不安が拭えない。

Huawei Mate 30シリーズは独自OSではなくAndroid 10を搭載するものの、GmailやGoogleマップ、Google Playをはじめとしたグーグルのサービスアプリ群およびアプリ基盤「Google Mobile Services(GMS)」が現状では、利用できない。

それに対し、ファーウェイは今後10億ドル(約1080億円)もの投資を行い、独自のアプリ基盤「Huawei Mobile Services(HMS)」を強化していく方針を示している。

Mate 30の「グーグルなし」は致し方ない結果

EMUI 10

Huawei Mate 30シリーズは、独自OSではなく、最新のAndroid 10をベースとした「EMUI 10」を搭載する。

なぜ、ファーウェイはグーグルサービスのアプリ群をプリインストールできないのか。それは、もちろん米中貿易摩擦の影響だ。

アメリカ商務省産業安全局の制裁対象リスト(Entity List)に、ファーウェイとその関連会社が登録されて以来、アメリカ企業はファーウェイに対し、物理的な商品だけではなく、技術やそのライセンスなど、すべての取り引きが事実上規制されている。

ファーウェイは過去に、グーグルのスマートフォンシリーズ「Nexus」の製造を複数回請け負ったり、Android OSの開発自体にも大きく貢献するなど、グーグルとの関係は良好であったが、グーグルからファーウェイへGMSを含むあらゆる技術供与は不可能となっている。

P30 ProとMate 30

写真左から「Huawei P30 Pro」とMate 30。P30 ProにあるGoogle Playなどのアプリが、現状ではMate 30シリーズでは利用できない。

なお、制裁対象リスト登録前の製品に関しては規制の対象外となるため、Mate 30シリーズより前に発表された「Huawei P30」シリーズなどでは問題なく、Google Playなどを利用できる。

つまり、今回のMate 30シリーズの「グーグルサービス非対応」「独自プラットフォームの強化」という方針は、かなり“致し方ない結果”と言える。

異例の「発売時期・地域の告知なし」の裏にあるのは?

リチャード・ユー氏

発表会に登壇したファーウェイのリチャード・ユー氏。

今回の発表会で、ファーウェイのコンシューマービジネスグループ担当CEOであるRichard Yu(リチャード・ユー)氏は、約1時間30分ものキーノートの間、おもにHuawei Mate 30シリーズのハードウェアに由来する魅力について語った。

ユー氏はキーノートの終盤で、端末の価格を発表した後、HMSへの投資を表明したが、最後まで具体的な発売地域や発売時期への言及は控えた。

従来の同社の発表会では、(日本など特殊なマーケットは例外だが)販売する国や地域、そして1番最初にローンチする国は公表してきたため、これは異例の出来事と言える。

ケビン・ホー氏

日本や台湾、香港の記者からの質問に答えたケビン・ホー氏。

Mate 30シリーズは、世界のどこでいつ発売されるのか? ファーウェイでコンシューマビジネスグループ ハンドセットビジネスのプレジデントを務めるKevin Ho(ケビン・ホー)氏は、複数メディアのインタビューに応じ、「今後1、2カ月程度でローンチしたい」と答えている。

このホー氏の「今後1、2カ月」という発言には、同氏の希望的観測が含まれているかもしれない。ファーウェイ自身も決して、グーグルサービスや定番アプリをインストールできるマーケットアプリがない状態で、中国以外に住むユーザーのニーズを満たせるとは考えていないだろう。それに1、2カ月でユーザーのニーズを満たす全てのアプリを自社プラットフォームに用意するのは非現実的だ。

この「1、2カ月」というのは、グーグルやアメリカ商務省などとの交渉・調整を行ない、「ユーザーがある程度実用的にHuawei Mate 30シリーズが使えるようになるまで」といった意味に捉えるのが妥当だろう。

Wear OS by Google中国版

ファーウェイの「App Gallery」でも配信されているグーグルの「Wear OS by Google 中国版」。

グーグルはスマートウォッチ向けOS「Wear OS by Google」を中国向けに提供しており、同OSのコンパニオンアプリ(スマホ側でウェアラブル端末を管理・設定するアプリ)をファーウェイのApp Galleryを含む中国のアプリマーケット上で公開してきた実績もある。

制裁対象リストによりグーグルが直接、ファーウェイのApp Galleryに自社アプリを新規に提供するのは難しいだろうが、Androidのエコシステムが大きなビジネスになっているグーグルとしては、何らかの“救済処置”をとる可能性は少なからずあるだろう。

ファーウェイは決して孤軍奮闘ではない

東京ゲームショウ出展

ファーウェイは、9月12~15日に千葉・幕張メッセで行われていた「東京ゲームショウ2019」に出展し、ゲーム開発者に対して同社のアプリ基盤の紹介を行っていた。

ホー氏はHMSの普及に注力することについて「チャレンジングで、チャンスでもある」と前向きな姿勢で話す。ユーザーのグーグルサービスからの移行について「段階的に」と慎重な見方をしているが、同社としても決して時間稼ぎのためにHMSに10億ドルを注ぎ込むわけではないという気概が感じられる。

ファーウェイはグローバル企業として、これまでもさまざまな国や地域の企業とコラボレーションを行ってきた。

プロ向け機材メーカーと協業

ファーウェイは、Huawei Mate 30シリーズで、プロ向けスタジオライトを手がけるプロフォトとのコラボを発表した。

Huawei Mate 30シリーズもカメラは従来通りドイツの老舗メーカー・ライカとの共同開発の結果だ。さらに、今回の発表会では新たに中国の大手ドローンメーカー・DJI製のスマートフォン向けジンバル(カメラを載せることで手ブレを抑制したり、スムーズに被写体を追えるアクセサリー)への最適化や、プロ向け撮影用ライトを手がけるスウェーデンの企業・プロフォトのスマートフォン向けスタジオライトへの最適化が発表された。

現状の「グーグルなし」で、自社プラットフォームの確立するというのは茨(いばら)の道と言えるが、ファーウェイは決して孤軍奮闘という状態ではなく、さまざまな企業と連携・協力することで、ユーザーに対し利便性の高い体験を提供できるよう工夫していく方針だ。

(文、撮影:小林優多郎 取材協力:ファーウェイ・ジャパン)

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