奥が最新の「シリーズ5」、手前が昨日まで使っていた「シリーズ4」。5は40mmサイズ、4は44mmサイズだったので見た目も別物だ。
撮影:伊藤有
新型Apple Watchシリーズ5が発売された。すでに手に入れたという人も多いかもしれない。発売の9月20日から、Apple Watchシリーズ5を試用し始めた。
最初に断っておくと、これはアップルからレビュー用に貸し出されたものだ。以前からシリーズ4を使っていたこともあって、どれくらい体験が変わるものなのか、試してみた。
シリーズ5には、「画面が常時点灯になった」「上位モデルに“チタニウム”が加わった」「コンパス機能が入った」といった特徴がある。
一方で、外観デザインは完全に同じで、新味は「まったくない」。新製品としてはかなり思い切った仕様だ。
発表時点の段階では、「シリーズ4ユーザーは、買い替えを考えなくてもいいんじゃないか」と思っていたのが率直なところだった。
アップル製品中でも最も「バリエーションが多い製品」だからできたこと
省電力点灯時と通常点灯時の比較。日中の明るさでも、十分視認できることがわかる。
撮影:伊藤有
デザインは変わらないとと思いつつ、開封、セットアップをして腕にはめると、妙に新しさを感じる。
それもそのはずで、手元にやってきたレビュー機材は小さい方の40mmモデル。以前は44mmを使っていたから、小さくなった。また素材も以前のアルミニウムに対して、レビュー機材はブラックのステンレス。腕に乗せた時の見た目の印象がかなり違う。
「デザインは変わってない」のは事実でも、サイズも違えば素材も違うと、はっきいって全然別の製品に感じる。製品バリエーションが多い、というのはこういうことか、と妙に納得してしまった。
全種類のAppleWatchを持っている人なんてほとんどいないわけなので、同サイズ・同素材のモデルを選ばない限りは、たとえデザイン変更がなかったとしても「新しいものを使い始めた」感はしっかりあるわけだった。
シリーズ4で買っていた社外バンド(下)。一度サイズ間違いで買っていたものが、ちょうどぴったり。社外品の結構質感の良いバンド(1000円程度)を交換するだけで雰囲気がまるで変わるのもApple Watchの面白いところ。
撮影:伊藤有
機能性については、「まったく新しい」という良さはやはり常時点灯の画面。「画面が消える」ということがなくなったのは、根本的にかなりユーザー体験が変わってくる。
時計の文字盤が常時が見えるという当たり前の良さもあるし、パッと手首に目をやったときに「画面が消えてる=電子デバイスを無駄に身につけてる」みたいな感覚がかなり薄れて、時計を身につけているという感じがする。
今回、対応アプリの場合は、省電力点灯時(画面書き換えが1秒に1回になる)と、通常時で、別々のウォッチフェイス(文字盤)に切り替わる。これは時計モードだけではなく、ワークアウトなどの他の純正アプリでも同じ。なかなか芸が細かい。
ワークアウトアプリの画面。一見同じに見えるが。省電力点灯時は「コンマ秒」表示が消えていることがわかる。1秒に1回しか書き換えないので、コンマ秒表示に意味がないから。
撮影:伊藤有
使い始めて数日、平日はまだ2日目だから、使い込みはまだこれから。とはいえ、今の所、画面以外の機能的な目新しさは、正直いうとない。
画面常時点灯による「バッテリーのもち」は、アップルのスペック値上はシリーズ4と同じでも実質悪くなっているのでは?という指摘もある。これは自分の体感値でも、そういう傾向はありそうだ。
ただ、公称の18時間より大幅に短いとまでは思わない。むしろシリーズ4が、「公称より長持ちしすぎ」だったのだ。実際、僕の使い方(デスクワーク中心で、使わないときは外す)だと、ほぼ2日間ほどバッテリーがもった。シリーズ5では、「毎日充電が必須になった」程度の変化だ。
とはいえ、バッテリー駆動時間を理由にいまさらシリーズ4を買うかといえば、「それは絶対にない」とも思う。常時画面点灯はなかなか良いものだ。
それでも、シリーズ4ユーザーは買い替えに少し悩むはず。無理に買い換える必要もないと思うが、悩んでいる人には確実に後押しになってしまいそうな、悪魔のささやきを最後に1つ。
Apple Watchの「毎年買い替え」がアリと言える経済的理由
メルカリの取引済の相場。44mmのアルミ/GPSモデルで3.3万円前後になっている。
撮影:伊藤有
あまりこの視点で語っている人はいない気がするが、Apple Watchはいろいろな意味で「コスパの高い」アイテムという側面がある。1年程度で中古で手放す場合の「リセールバリュー」が比較的高いのだ。
例えばシリーズ3→シリーズ4のときは、中古相場が1万円程度しか下がらなかった。綺麗に使っていれば「月800円程度で最新AppleWatchが使えた」計算になる。
今回も、この状況はまだ継続している。メルカリなどの取引価格を見ると、元箱付きのアルミ/GPSモデル(つまり一番安い仕様)の44mmモデルが3万3000円程度。元値が4万3000円ほどなので、相変わらず「年1万円減」が続いている。
ただし、これは上位モデルだと話が変わってくる。例えばステンレスの44mmモデルの場合、オークションの中古相場は5万円前後なので、1年で2万8000円ほど下がっている計算になる。
「年1万円減」の高コスパで使いたいなら一番安いモデル一択、というのは悩ましい事実だが、それでもこの実質の安さはシリーズ4ユーザー(自分)でも正直、心が揺らいでしまうものがあるんじゃないだろうか。
誰か周りの人でシリーズ5を買った、という人がいたら、ちょっと頼んで「腕にのせて」みて、どうするか考えてもいいかもしれない。
(文、写真・伊藤有)