PCメーカー・レノボは、ドイツ・ベルリンで行われた世界規模の家電見本市「IFA」に出展した。
撮影:小林優多郎
少し時間が経ってしまったが、PCメーカー最大手のレノボは、ドイツ・ベルリンで9月に開かれた「IFA2019」に合わせて新型PCやスマートフォン、ARヘッドセットなどを発表していた。
展示の中でも勢いを感じさせるのが、スマートホーム関連機器だ。既報のとおり、同社は1月にアマゾンの音声アシスタント「Alexa(アレクサ)」を搭載したタブレットを発表。IFA2019では、グーグルの「Googleアシスタント」を搭載したタブレットおよび7インチサイズのスマートディスプレイを発表した。
なぜ、PCメーカーであるレノボが、このようなさまざまな形をしたスマートホーム機器に取り組むのか。同社でグローバルマーケティング担当バイスプレジデントを務めるDilip Bhatia(ディリップ・バティア)氏に話を聞いた。
テクノロジーをすべての物・人へ
レノボは今回のIFAで「Smarter Technology for All」を掲げていた。
レノボがこうしたPC以外の製品に取り組む大きな理由は、同社が掲げる「Smarter technology for all(すべてによりスマートなテクノロジーを)」というスローガンだ。
このallにはすべてのものだけではなく、すべての人という意味が込められている。より最先端の技術をすべてのものに搭載し、すべての人に届けるという意味だ。PCはいまや仕事のための道具だが、それらの技術はスマートホームやIoTといった形で日常生活に浸透しつつある。
消費者の選択肢を増やすという意味では、お手軽なARヘッドマウント機器もリリースしているレノボ。
バティア氏は、スローガンの実現に向けて重要視していることの1つに「製品の低廉化を含む選択肢の拡充」を挙げた。
「2年前に発売したレノボのMirageヘッドセットでも同じことが言えるが、Mirageが登場する以前は、VRヘッドセットのセットアップはとても難しく、とても高価なものだった。
弊社のPCのポートフォリオ製品をご覧いただいてもわかるとおり、非常に低価格のPCから、ゲーミング用、ワークステーションまで幅広く展開している。お客様が一般消費者であっても、企業のお客様であっても、最高の価値をお客様に提供したいと考えている」(バティア氏)
IFA2019で発表されたGoogleアシスタント内蔵スマートディスプレイの価格は、タブレットタイプの「Smart Tab M8 with the Google Assistant」が149ユーロ(約1万8000円)、自立スタンドが付く「Smart Tab with the Google Assistant」が299ユーロ(約3万5000円)となっている。
Smart Tab M8 with the Google Assistant。
Smart Tab with the Google Assistant。
どちらも一般的なAndroidタブレットとしての特徴も兼ね備えるため、電子書籍リーダーや動画観賞用に使いつつ、充電時などにはスマートディスプレイとして活用できる。
ユーザーにはプライバシーをコントロールする権利がある
レノボのスマートホーム機器は年々増えている。
ところで、スマートホームの市場規模は年々大きくなる一方で、プライバシーに関する問題も大きく取り上げられている。スマートホーム機器は、家の中という閉鎖的な空間をデータ化できるため、消費者としては、利便性がありつつも注意もしたいデバイスだ。
レノボとしては、スマートホームの普及に向け、どのようなプライバシー保護の取り組みを行っているのか。バティア氏は、「消費者がプライバシーやセキュリティを気にするのは当然だ」と話す。
「レノボでは、ユーザーに権限を与える必要があると感じており、ユーザーが共有する情報の量を決定できるようにしている。
そこで、いくつかのソリューションを開発した。例えば、カメラ。私たちのラップトップPCでもカメラの上にシャッターがあり、プライバシーを確保することができる」(バティア氏)
Lenovo Smart Display 7の背面には、マイクのミュートスイッチとカメラを塞ぐシャッターのスイッチがある。
バティア氏の言うカメラの上のシャッターというのは、カメラ不要の際は物理的にカメラを塞いでしまうもので、とても小さく原始的な手段だが、最も効果的なものと言える。レノボは多くの分野でグーグルやアマゾンなどのテック企業と協業しているが、バティア氏は「ユーザーはどれだけの情報をグーグルやアマゾンと共有するか決められる」と言う点もレノボの哲学だと話していた。
スマート家電は、普及率6.9%の日本でも今後広がるか
自身も自宅や車内などでスマートアシスタントやスマートホーム機器を活用しているというDilip Bhatia氏。
日本でも家電量販店の店頭などではこうしたスマートホーム機器が並ぶようになった。一方、総務省「平成30年通信利用動向調査」によると、インターネットに接続できる家電を「保有している」と答えたのは全世代で6.9%、1番高い30代でも10.9%となっており、いまだ「少数派」の製品と言っていいだろう。
ただし、平成29年の同調査では全世代で2.1%、30代で3.9%となっており、日本でもスマートホーム市場は拡大傾向にある。
バティア氏は、日本でも日本以外でも今後スマートホーム市場はより広がっていくと考えている。
「未来はテクノロジーに囲まれ、テクノロジーはどこにでもある存在になると信じている。
日本であろうと他の市場であろうと、人々は常に3つのことを気にかけているのではないか。それは、『時間』『快適さ』『つながり』だ。
(スマートホームが進化し、提供し続けられれば)時間を節約し、快適さを提供し、簡単に家族や友人とつながることができる。お客様もそれを望んでいると思う。技術がそれを提供できるなら、ユーザーはきっとその技術を支持するだろう」(バティア氏)
(文、撮影:小林優多郎 取材協力:レノボ・ジャパン)