2050年には夏は47度に。仏専門家が温暖化は予想以上に悪化と発表

台風

年々巨大化し、大きな爪痕を残す台風。これも地球温暖化の影響を受けていると言われている。

REUTERS/Issei Kato

地球温暖化は現在予測されているよりも急速に進み、2100年には、18世紀後半に始まった産業革命前に比べて6度から7度まで上昇するだろう—— 。フランスの専門研究者グループが9月17日に発表した内容は衝撃的だった。

ニューヨークでは気候行動サミットが開かれ、その直前にはスウェーデンの16歳から始まった気候変動に対するデモは若者や子どもたちを中心に世界中で400万人が参加するなど、環境問題への関心は若い世代を中心に急速に高まっている。

この新たな予想を私たちはどう受け止めていくのか。

フランスの専門家100人が参加

グレタ

スウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥンベリさん。この16歳の行動によって、世界中で子どもや若い人を中心に気候変動への関心は高まっている。

REUTERS/Carlo Allegri

今回のフランスの研究グループによる発表は、2021年に発表される予定のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)第6次評価報告書のベースとして、世界中の気候研究機関が行なっているシミュレーションのうち、最初に発表されたものの一つで、フランス国立科学研究センター、原子力・代替エネルギー庁、フランス気象局などの専門家およそ100人が参加して算出したものだ。

IPCC第5次報告(2012年に行われたシミュレーションを元に2014年に発表)では、気温上昇は産業革命前に比べて4.8度とされていた。「6 度ないし7度の上昇」という今回フランスのグループから提出されたシナリオは、より悲観的な予測である。

この数値は、計測機等の技術の改善によりもたらされたもので信憑性は高い。フランスの研究者たちは、スーパーコンピューターを1年間、昼夜休みなく稼働させ、5億時間の計算と、20ペタオクテットのデータを生成して8万年にわたる過去と未来の気候変化をシミュレーションしたと発表。

対策進めば1.5度の上昇

気候変動デモ

150カ国以上の都市で行われた気候変動マーチ。ベルリンでは27万人が参加した。

REUTERS/Christian Mang

とはいえこの予測は、研究者らが提出したシミュレーションのうち最も悲観的なもので、なんの対策も取らないまま、化石エネルギーによる急速な経済成長が続いた場合を前提としている。今後の各国の政府の環境問題への取り組み、温暖化対策によっては上昇の程度は変わってくる。

最も楽観的な予測は、直ちにCO2削減が始まることを前提にしたもので、2060年までにカーボンオフセット(※)による相殺が可能になるとしている。温室効果ガスの排出量がどのように変わろうとも、気候システムの惰性により地球の平均気温は2度まで上昇するが、対策次第では2100年には再び1.5度の上昇点まで戻るとされている。

※カーボンオフセットとは……生活や経済活動で避けられないCO2等の温室効果ガスの排出について、まずできるだけ排出量が減るよう削減努力を行い、どうしても排出される温室効果ガスについて、排出量に見合った温室効果ガスの削減活動に投資すること等により、排出される温室効果ガスを埋め合わせるという考え方のこと(環境省HPから)

研究者らが提出した複数のシミュレーションの中で、「気温上昇を2度以下、可能であれば1.5度に留める」という2015年採択のパリ協定を遵守できるシナリオは、この楽観的シナリオのみだ。

しかしこのシナリオでは、2100年には年に100億から150億トンのCO2を大気から取り除くことができるテクノロジーを人間が手にしている前提になっているが、このようなテクノロジーは今のところ、まだ開発されていない。

より現実的なのは、2つの両極端の中間にあると言える予想で、そこではカーボンオフセットによる相殺が2080年、2100年における気温上昇は2.6度となっている。

2050年には47度を超える日が

猛暑

毎年猛暑による熱中症が社会問題にもなっている日本。この過酷な暑さの中、来年オリンピックが開かれる。

REUTERS/Yuriko Nakao

このような未曾有の温暖化が地球環境に具体的にどのような影響を及ぼすかは完全には予想できない。

古気候学者パスカル・ブランコノは言う。

「たった100年の間に極めて急速な上昇です。地球上でこれ程のCO2の集中が起こったのは、4万年前の鮮新世以来です。その時、地球の温度は3度上昇しましたが、それは何千年もかけてのことでした」

現在、気温はすでに産業革命前に比べて1度上昇している。激しい暴風雨や長期の干ばつ、猛暑の頻発は誰もが知るところだ。

専門家らは、2050年ごろには気温が47度を超える日が続くと考えている。ヨーロッパで7万人の命を奪った2003年の猛暑は、その頃には例外的ではなくなっていると予想される。


中島さおり : エッセイスト・翻訳家。早稲田大学、学習院大学大学院でフランス文学を学び渡仏。パリ第3大学博士前期課程修了。2006年、『パリの女は産んでいる』で日本エッセイスト・クラブ賞受賞。他に『フランスではなぜ子どもが増えるのか』『哲学する子どもたち −バカロレアの国フランスの教育事情』など。

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