年次カンファレンス「Oculus Connect(オキュラス・コネクト)」で発表するFacebookのマーク・ザッカーバーグCEO。
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- 2019年の「Oculus Connect(オキュラス・コネクト)」(=Facebookが主催するVRビジネスのための年次開発者カンファレンス)では、「いまがその時だ(The time is now)」というキャッチフレーズが繰り返された。
- 2014年にFacebookがOculusを20億ドルで買収して以来、仮想現実(VR)は次の目玉になると言われ続けてきた。
- Business Insiderは同イベントに集まった開発者たちに、VRの隆盛を押し留めているものは何なのか、またいつVRは主流となるのかについて聞いた。
年次イベントで語られたこと
2019年のOculus Connectでは、幹部による基調講演から、イベント参加者が手わたされるロゴ付きのウォーター・ボトルに至るまで、Facebookは開発者たちに向けてあらゆる手段を通じて、いまこそVRや統合現実(AR)が一般に普及する時だと喧伝した。
3日間のイベントをいくつかの発表とともにキックオフし、会場の開発者たちは拍手喝采を送ったが、なかでも最も大きな拍手を受けたのは、おそらく「Oculus Link(オキュラス・リンク)」だ。
中価格帯のスタンドアロン型ヘッドセット「Oculus Quest(オキュラス・クエスト)」をPCにUSB接続することで、従来はOculus Questよりパワフルなヘッドセット「Oculus Rift(オキュラス・リフト)」でなければ楽しめなかったハイエンドなゲームを楽しめるようになる。
さらに、2020年に登場する新たなOculus Questは、コントローラーを使わず手を動かすだけで操作できるようになる。ハンド・トラッキングと呼ばれる機能だ。
Facebookのマーク・ザッカーバーグCEOは、「今後はハードウェアに邪魔されることなく、実体験により近い体験ができるようになる」と壇上で語った。
また、Facebookと言えばやはりソーシャルメディア。イベントでは「Second Life(セカンド・ライフ)」に似たVRサービス「Facebook Horizon(フェイスブック・ホライズン)」も発表された。ユーザーはゲームを作って、遊んで、他のユーザーと交流することができる。
さて、Facebookは2014年にOculusを20億ドルで買収して以来、次にブームになるのはVRだと予告し続けてきた。今回のイベントでもそうだった。
しかし、Business Insiderが会場で開発者や業界人たちに話を聞いたところでは、「ついにVRの時代がやって来た!」との声はあまり多くなかった。
開発者に「実名顔出し」で答えてもらった
Cheerioのキャム・マレン。
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Oculusで60秒以内に友だちをつくる手伝いをするソーシャルアプリ「Cheerio」を開発したキャム・マレン(Cam Mullen)に聞いた。
—— 特に気に入った発表は?
Facebook Horizonが一番楽しみ。ついに「メタヴァース(Metaverse)」をつくる計画が発表されたわけですから。メタヴァースとは、コンピューター上で人が歩き回ったり、他の人と出会ったりして、そのうち働くこともできて、モノをつくったり、売ったり、お金をつくったりすることができる新しい世界です。
—— VRにとって「いまがその時」?
開発者にとっては、確かに「その時」ですね。ハードウェアやツールが充実し、実際いまなら何でもつくれる。でも、もし友人に「VRのヘッドセットを買うべきかな?」と聞かれたら、現時点では「良い体験ができるものはそれほどないよ」と答えますね。
でも今後2年くらいで、仕事から帰ると、NetflixやYouTubeを見るみたいに、ヘッドセットをつける人たちが出てくるようになると思っています。
OvaのCEOハロルド・ダーマー。
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企業向けに実体験に近いAR/VR環境を開発しているハロルド・ダーマー(Harold Dumur)。
—— 特に気に入った発表は?
Oculus Linkです。いろいろ大きく変わることになるでしょうね。
—— VRにとって「いまがその時」?
VRが主流になるまで、あと2年はかかると思います。アップルがそのうち何かやってくれると期待しています。遠からず、カナダのVrvana(アップルが2017年に買収したARヘッドセット企業)の技術をもとにした何かが発表されるでしょう。
どんなアイデアを出してくるのか待ち遠しいですね。アップルが一般消費者向けにつくるAR/VRのためのエコシステムこそが、ゲームチェンジャーになる。チャンスがなくなりつつあるなか、アップルの取り組みがいろいろなことを加速させる。
VRの世界でチャンスがなくなるなんて、いままで感じたことがなかったけど、いままさになくなっていると感じますね。
VRを活用した緊急対応トレーニングシステムを開発する「MindGlow」のCEO、ニルダ・パッキン。
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VRを使って、銃撃犯の襲撃のような緊急事態に備えるための職場用トレーニングシステムをつくっているニルダ・パッキン(Neilda Pacquing)。
—— 特に気に入った発表は?
企業やその従業員をターゲットにしたビジネスを手がけているので、企業のためのVRの話に興奮しました。VRトレーニングの効果を裏づけるリサーチがたくさん出始めているのはいいですね。
—— VRにとって「いまがその時」?
いまこそVRですよ!このテクノロジーが向かう先にすごく興味があります。開発者コミュニティーは、VRを経験したことのない一般の人たちにこそ、このテクノロジーを届ける必要があるんです。一部の新しもの好きな人たちがVRを使うフェーズはとっくに過ぎているので、市場のメインストリームに押し出していくべきです。
メキシコの不動産会社向けにVRを開発するギレルモ・デ・ラ・イスラ・ヤネズ。
Business Insider / Nick Bastone
メキシコの不動産会社向けVR開発を手がける、ギレルモ・デ・ラ・イスラ・ヤネズ(Guillermo de la Isla Yañez)。
—— 特に気に入った発表は?
ハンド・トラッキング技術とOculus Linkですね。
—— VRにとって「いまがその時」?
やる気を起こさせるキャッチフレーズだと思うし、事実もまったくその通りだと思います。VRに手を出すには、まさにちょうどいいタイミング。イベント会場にいる全員が発表を聴いて興奮しました。熱量がものすごかった。ここにいる私たちは皆、VR/ARを次のレベルに持っていく人たちなんです。
音楽を「聴く」以上の体験を模索するリカルド・チェンバーレイン。
Business Insider / Nick Bastone
ユーザーが音楽を「聴く」以上の体験をどうしたら得られるのか模索している、リカルド・チェンバーレイン(Ricardo Chamberlain)。
—— 特に気に入った発表は?
ハードウェアがなくなるのはすごい発展。これまでずっと、VRとユーザーとの間に摩擦としてあった大きな問題だから。—— VRにとって「いまがその時」?
VRはもう来ているように感じるね。でも、音楽業界や一般のユーザーにとっては、まだかなりニッチな世界の話。大きなブームになるには時間がかかると思う。
(翻訳・編集:Miwako Ozawa、川村力)