魚介類を食べる、洋上風力発電…温室効果ガス削減には海洋の利用が効果的

カラフルなサンゴの上を泳ぐ、バナナフィッシュの大群。タイ、アンダマン海。

カラフルなサンゴの上を泳ぐ、バナナフィッシュの大群。タイ、アンダマン海。

Sirachai Arunrugstichai/Greenpeace

  • 海水温の上昇と北極・南極の氷床の融解が、今世紀末までに3フィート(約90cm)以上の海面上昇を引き起こす可能性があると国連の新たなレポートが伝えている。
  • 水位の上昇で、小さな島々や沿岸地域に住む何億もの人々が移住を余儀なくされる可能性がある。
  • だが海には、温室効果ガスを削減する側面もあり、これにより気候変動を軽減することができる。
  • こうした解決策の1つに、タンパク源としてより多くの魚介類を摂取し、肉食を減らすことがある。洋上風力発電も効果的だ。

海水面が80年以内に3フィート(約90cm)以上上昇する可能性があり、サンゴ礁のほとんどは死に至ることが予想される。海水面は90年代初めの2倍の速さで上昇している。

これらは国際連合の気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)の新たなレポートで述べられた、厄介な発見の一部に過ぎない。

だが別の2つのレポートは、気候変動に対する取り組みを助ける海の重要な側面を指摘している。

研究によると、海洋を利用する活動によって、世界全体の二酸化炭素排出量を110億トン近く削減できる可能性がある。これは、地球の気温が摂氏1.5度(パリ協定で設定された目標)以上上昇しないようにするために必要な削減量の21%に相当する。

このデータは、世界の指導者と科学者で構成される持続可能な海洋経済に関するハイレベル・パネル(HLP:High Level Panel for a Sustainable Ocean Economy)と、サイエンス(Science)誌に掲載された論文によるものだ。

「今日から実行できる、『後悔しないためのToDoリスト(no-regrets to-do list)』をまとめた」と研究論文の著者らは記した。

そのうちの1つが、食生活に関するもので、 魚介類からより多くのタンパク質を摂取し、肉からの摂取を減らそうというもの。

魚介類をより多く食べる場合

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氷に囲まれる、国際環境保護団体グリーンピースの抗議船、アークティック・サンライズ(Arctic Sunrise)。ノルウェー、スバールバル諸島(Svalbard)近海。

Christian Aslund/Greenpeace

36カ国から集まった100人以上の研究者によってまとめられたIPCCの評価報告書は、世界の海洋と雪氷圏(地球上で水が凍っている部分)の状態に焦点を当てている。その結果、海面上昇の予測は上方修正された。仮に地球の気温が摂氏3度以上上昇すると、水面は2100年までに平均3フィート上昇するとしている。

このレポートは「気候変動が招く海、海の生態系、そして人間への影響の絶望的な状況と、温室効果ガスの排出量を直ちに削減しなければ起こり得る、さらに悲惨な状況を描いている」とサイエンス誌の論文の共同著者でHLPの顧問、ジェーン・ルブチェンコ(Jane Lubchenco)氏は述べた

ルブチェンコ氏らが強調する解決策は、大きく5つに分類される。海を利用した再生可能エネルギーをより多く生産すること、運送業をカーボンニュートラルにすること、二酸化炭素を(海に)隔離する生態系を守り修復すること、炭素を海底に貯留すること、そして、より多くの魚介類を含む食生活にシフトすること。

「地球の海は、単なる気候変動の被害者ではなく、温室効果ガス削減に対する解決策をもたらす、これまで評価されることのなかった機会を提供する」とHLPの著者らはプレスリリースで述べた。

魚介類の分類

市場で魚介類を分類する業者。タイ、バンコク。2016年3月31日。

Athit Perawongmetha/Reuters

レポートによると、より多くの魚介類を食べるべき理由は、海由来のタンパク源(魚介、海藻、昆布など)は、陸生動物の肉に比べて二酸化炭素排出量を大幅に抑えることができる可能性があるためだ。HLPメンバーの2人、ノルウェーのエルナ・ソルベルグ(Erna Solberg)首相とパラオのトミー・レメンゲサウ(Tommy Remengesau Jr.)大統領がCNNに記した通り、これらをより多くを摂取することは、排出量を抑えながら、食生活をより健康的で持続可能にすることができる。

世界自然保護基金(WWF)によると、世界ではすでに約30億人が、天然または養殖の魚介類を主なタンパク源として頼っている。

水産業や養殖業が完全にカーボンニュートラルという訳ではないが、ザ・カンバセーション(The Conversation)によると、牛、羊、そして鶏の畜産は世界中で人間が生み出した温室効果ガス排出量の18%を占める。これは、船、飛行機、トラック、そして車の排出量を合わせたものより多い

8月に発表された研究によると、仮にアメリカ人全員が牛肉、鶏肉、豚肉すべてをベジタリアン向けのものに置き換えると、毎年2億8000万トンの二酸化炭素が削減されることになる。これは、約6000万台の車を道路からなくすのとほぼ同じだ。

海の再生可能エネルギーにも期待

アムルムバンク・ウエスト(Amrumbank West)洋上風力発電所の風力タービン。ドイツ、アムルム島付近。2015年9月4日。

アムルムバンク・ウエスト(Amrumbank West)洋上風力発電所の風力タービン。ドイツ、アムルム島付近。2015年9月4日。

Morris Mac Matzen/REUTERS

だが食生活を変えること以上にインパクトがあるのが、潮汐エネルギー・システムと洋上風力発電所で、風と波の力を利用することだとHLPのグループは述べた。

ルブチェンコ氏とその同僚によると、海岸から離れた所に建設できる浮体式の洋上風力発電所の数を増やすためには、研究と開発にさらなる投資が必要だという。また、2030~2050年までに海の再生可能エネルギーの利用を増やすため、各国が明確な目標を設定すべきとしている。

ソルベルグ首相とレメンゲサウ・ジュニア大統領はCNNに対し、海の再生可能エネルギーを増やすことで、2050年まで毎年60億トン近い二酸化炭素排出量を削減することができると語った。これは年間10億台以上の車を道路からなくすのと同じ効果だ。

「気候変動との闘いに勝利するため、我々は総力を結集しなければならない。陸上でも、海上でも」と彼らは記している。

[原文:Eating more seafood could help us slow the planet's warming — part of a handful of climate solutions the ocean offers

(翻訳:Ito Yasuko、編集:Toshihiko Inoue)

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