スイスのメーカーPunkt.が8月に日本で発売したSIMフリーガラケー「MP02」。黒い箱に入っていた。
撮影・大塚淳史
「ガラケー、スマホ、どっち派?」と聞かれ「いまさらガラケー?」と思う人は多いかもしれない。
いやいや、いまも一定の需要がある。スマホ全盛の時代で、さすがにガラケー(またはフィーチャーフォン)の新商品にお目にかかる機会は多くない。それでも、電話やショートメッセージだけしか使わないか、ガラケーで十分、という声が、一部のビジネスマンや高齢者を中心にまだ残ってはいる。
MMD研究所が8月9日から16日に調査した携帯電話に関する最新リポートによると、ガラケーを使っている割合は15.2%だった(母数は総務省人口構成比に基づいた3万7040人で、18歳から69歳の男女を対象)。まだこれだけ利用者がおり、40代が14%、50代が19%、60代26%と、やはり年齢が高くなるにつれて使用率が上がる。
スイスのメーカーが開発した「SIMフリーのガラケー」
MP02の箱の中には本体、USB Type-C対応ケーブル、イヤホン、説明書が入っていた。
撮影・大塚淳史
ガラケー需要の声を感じ取ったのかはわからないが、スイスの独立系電子機器メーカー「Punkt.(プンクト)」が、8月8日から日本でSIMフリーのガラケー「MP02」を発売。公式サイトなどでネット通販、南青山や銀座のCIBONE(シボネ)といった店舗では店頭販売もしている。
先日、手にしたので1週間使用してみた。
MP02の機能は非常にシンプル。主には電話、ショートメッセージ、メモ、電卓、時計くらい。Wi-Fiに接続できるが、暗号キーが必要なタイプにしか接続できない。カフェなどに多いブラウザー経由の接続認証は不可能だ。
ただ、そもそもブラウザーアプリがないので、あまり必要性はないともいえる。Wi-Fiが必要になるのは、結果として、MP02のシステムアップデート時のみというところだろうか。なお、Bluetoothもついている。
機能がシンプルなガラケーではあるが、テザリング機能がついているのは大きな特徴の一つ。タブレットなどとの併用を前提に設計されているという。デザリングすることでタブレットやノートパソコンに使用できる。4G LTEにも対応しているので、速度は速い。
ただし、テザリング機能を使う際はバッテリー残量に注意だ。
使っていない時はバッテリーの減りは遅く、3日は十分持つ。しかし、Wi-Fi経由でデザリングして1、2時間ほど使うと、電池が数十%も減少した。テザリングをするなら、USB接続が良いかもしれない。USBはType-Cを採用している。
BlackBerryのセキュリティーシステムを採用
箱の裏の右上にはBlackBerryのセキュリティシステムが使われていることを示すマークがある。
撮影・大塚淳史
もうひとつ興味深いのがセキュリティーだ。スマホ黎明期に盛り上がったBlackBerryのシステムを利用している。BlackBerry端末以外での採用は初めてだという。
外観も非常にシンプルだ。黒色を基調としていて、ポリカーボネート製ボディーに、耐摩耗性コーティングで仕上げている。手触りは頑丈だ。
デザインは同社のアートディレクターであり、イギリス出身の著名プロダクトデザイナーで知られるジャスパー・モリソン氏が手がける。
文字入力する際のキータッチは、独特だ。ボタンが浮き上がり気味で、さらにクッション性が薄い。文字入力は、一般的なガラケーに比べるとやや力を込める必要がある。
購入を考えている人には、いくつか注意点もある。
1つは価格。テザリング機能があるにせよ、ここまでシンプルであるにも関わらず、販売価格は同社公式サイトで本体価格329ユーロと送料30ユーロで、合計359ユーロ(約4万2400円)、MP02を取り扱う通販サイトの+Style(プラススタイル)やmonoco(モノコ)では税込みで約4万4064円。フィーチャーフォンだからと言って、決して安いわけではないのだ。
強気な価格設定とも思えるが、先行して販売が進む海外でのユーザーのネットの声を調べてみると、やはり「価格が高い」との声が目立った。
日本には少ないSIMフリーガラケー
パスワード設定して再起動した後、この画面が実はパスワード入力画面であることに気づくまでにしばらくかかった。
撮影・大塚淳史
ただ、日本にはSIMフリーのガラケーの選択肢はそう多くない。中古店でSIMロックを解除したガラケーが売られているが、通話のみだったり、使用回線によってはインターネット接続ができなかったり、つながっても4G回線でない低速回線のみもある。MP02はそんな隙間を狙っているのかもしれない。
もうひとつ問題に感じたのが、ユーザーインターフェース。日本語対応はしているが、本体のキーボタンに平仮名は表示されていない。さらに初めて使用してパスワードロックを設定した直後、画面には「Androidを起動するに…」とのみ表示され、その画面が実はパスワード入力画面であることに気づくのに数分かかった。
輸入端末のため日本語化が十分こなれていないのかもしれないが、これはさすがにちょっと改善すべきだと思う。
海外ではシンプルなSIMフリーガラケーが多く発売されている(写真はフランス・パリの店で9月に撮影)。
撮影・大塚淳史
日本はSIMフリーのガラケーの種類が非常に少ない。海外ではいまでも格安シンプルガラケーが普通に店頭に並ぶ。MP02がどこまで日本のガラケー利用者、あるいは新規利用者を得ることができるのか注目ではある。
サイズ:51.3(W)×14.4(D)×117(H)mm
重さ:100グラム
表示画面サイズ:2インチ
解像度:320x240(QVGA)RAM:2GB LPDDR3、533MHz
ストレージ:16GB eMMC 4.5
対応SIMなど:nano SIM シングルスロット(1枚刺し)
バッテリー駆動:連続通話4.2時間、最大待受180時間
(文、写真・大塚淳史)