PwCのグローバル会長ボブ・モリッツ氏。
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- PwCは9月30日(現地時間)、同社の従業員数が2万5000人増えたとし、今後3~4年間で30億ドル(約3200億円)を職業訓練に投資すると発表した。
- PwCのグローバル会長ボブ・モリッツ(Bob Moritz)氏は、「スキルアップ」への投資は採用ツールとして競争上の優位性を提供するだろうと、Business Insiderに語った。
- モリッツ氏は、もし自動化によって担当する仕事がなくなったとしても、訓練に参加した従業員の雇用は保証できるだろうと語った。
グローバル会長のボブ・モリッツ氏が"記録的成長"と呼ぶ1年を過ごしたPwCは、今後3~4年間で同社の27万5000人の全従業員を対象とした職業訓練に30億ドルを投資すると発表した。最終的なタイムラインにもよるが、従業員1人あたり年間2727~3636ドルの計算になる。
モリッツ氏は9月30日、「我々はタレント・マグネットでなければならない」とBusiness Insiderに語った。だからこそ「新しい世界、新しいスキル(New World, New Skills)」と呼ぶ投資が採用ピッチの最前線になるだろうという。
これは、2025年までに従業員10万人を対象に7億ドルを投資するとしたアマゾンや、従業員48万2000人を対象に年間10億ドルを投資するとしたアクセンチュアよりも大規模な投資だ。モリッツ氏は、全ての仕事の30%が2030年半ばまでに自動化されるリスクがあるというPwCの調査を引用して、同社の従業員も例外ではないと指摘した。「世界は急速に変化しているのだから、これは必要不可欠なことだ。そうでなければ、競争力やブランドを失うことになる」と、モリッツ氏はいう。
大規模な職業訓練の発表は本来、雇用の激変や喪失への恐れとつながるものだが、モリッツ氏はPwCがスキルアップに積極的な従業員の雇用は守るつもりだと語った。「その気があるなら、我々は置き去りにはしない。いま従事しているもしくは希望している特定の仕事を保証することはできないが、ここでの雇用を今後も保証することはできる」と、モリッツ氏は語った。
世界中それぞれの市場に訓練を合わせるため、30億ドルは「従業員をクライアントから引き離し、教室へ送るのに必要な投資」「デジタル・トレーニング・ツールのさらなる開発に必要な投資」「同じテクニックを広めるコミュニティー・プロジェクトに従業員を配置するのに必要な投資」「国連や世界経済フォーラムとの既存のパートナーシップを活用するのに必要な投資」の4つのセクションに分けられる。
PwCに24年間在籍し、2016年7月にグローバル会長の職に就いたモリッツ氏は、急速に変化する環境に労働力を適応させるための議論は、約5年前に始まったという。2、3年前からはそれが部門ごとのスキルアップの取り組みにつながり、この1年ほどで世界的なイニシアチブにする必要性が明らかになった。
世界経済フォーラムが「第4次産業革命」と名付けた、自動化によって雇用が失われる状況の中、大手企業は業界を越えて職業再訓練に投資している。アクセンチュアやIBMもこういった企業の1つで、彼らは独自のソフトウエアを開発し、オンデマンドのレッスンを通じた訓練を受けさせることで、従業員に必要に応じて自身のスキルを確認、適応させている。
PwCは2017年10月、同社のデジタル・トレーニングのポータルやアプリの開発を監督するチーフ・デジタル・オフィサーの役職を作って、ジョー・アトキンソン(Joe Atkinson)氏を就任させた。アトキンソン氏は2019年5月、PwCアメリカの会長ティム・ライアン(Tim Ryan)氏が従業員にモリッツ氏と同じ保証を与えたと、Business Insiderに語っている。
「これは、我々が思っていた以上の効果を発揮した。今日自分たちがやっていることが、将来何かしらのテクノロジーに置き換わるというストレスや緊張感、そして恐怖と向かい合うものだからだ」
「我々はそこから始めた」
(翻訳、編集:山口佳美)