仕事の成長ややりがいについて、女性は50代になるほど高まるのに対し、多くの男性は下がっていることが分かった。モチベーションも、最も高かったときと比べて現在の方が低いと感じている50代男性は、なんと同世代女性の倍以上だ。
バブル世代の職場に、一体何が起きているのか —— 。
仕事の「面白さ」「成長」ダダ下がりの50代男性
バブル世代のビジネスパーソンに、男女で大きな意識格差があることが分かった(写真はイメージです)。
撮影:今村拓馬
「女性正社員50代・60代におけるキャリアと働き方に関する調査」を行ったのは、21世紀職業財団だ。2018年7月から2019年1月にかけて、従業員数300人以上の企業で正社員として働いている50〜64歳の男女を中心に、約2800人にインターネットのアンケートやインタビューを行った。
見えてきたのは、男女の意識格差だ(数字は小数点以下切り捨て)。
50代の男女が働く上で重視してきたこととして、「成長」「仕事の面白さ」などの仕事の内容やキャリアに関係することは、女性は30代から40代にかけて下がるも50代で再び上昇するのに対し、男性は年齢を重ねるにつれて下がっていることが分かった。
50代でモチベーション上がる女性は男性の倍!
50代の総合職では、仕事のモチベーションが最も高かったときと比べて「現在の方が低い」と回答した人は、女性は21%だったのに対し、男性は倍の45%だった。「現在の方が高い」と回答したのも、女性は6%に対し男性は3%と2分の1という結果に。
男性のモチベーションが低い理由としては、「仕事にやりがいが持てていないから」 が 39%と最も多く、次いで「処遇に不満があるから」 35%、「昇進の可能性がないから」 が 28%だった。
今後のスキル欲にも格差
また、今後もスキルを深めたり発展させたりしたいと考えている女性が70%を占めるのに対し、男性は58%だった。
調査に回答した50代の現在の職位は、男性は51%が課長職以上の管理職だが、同様の女性は13%にとどまっており、係長・主任相当職でもない一般従業員の割合が63%と圧倒的に多い。
収入も男性は900 万円以上が最も多く40%、次に600~900 万円未満で38%、400万円未満は4%しかいないのに対し、女性は400万円未満が最も多く36%、次に400~600万円未満が34%で、 男性のボリュームゾーンである900 万円以上は10%しかいなかった。
男性中心の調査や提言に反論!
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調査を担当した21世紀職業財団の山谷真名さんは言う。
「同じ50代でも管理職ではない男女の意識の差が、顕著になりました。モチベーションの高い女性は、そうではない男性と同じように職場で捉えられることを不満に思っている人がいます」(山谷さん)
今回の調査は、これまでの同様の調査は男性を中心に現状把握や課題分析されることが多く、企業の対応策についても男性中心の提言がなされていることを問題視して行ったものだという。
子育ての負担減でヤル気アップに
調査から浮き彫りになったのは、50代の女性は男性よりモチベーションは高いが、職位も収入も低いという現状だ。
こうした男女の意識の格差が生じる背景には、子育てがある。
「子供がいる」と回答した人に現在の子育ての状況を聞くと、男女ともに大半が「これまで子育てをしていたが、今はほとんど手がかからない」と回答している。一方で、そのうち女性の72%が「子育てが仕事をする上での制約だと感じることがあった」と答えたのに対し、男性は74%が制約だと感じることはなかったと回答。ほぼ正反対の結果となった。
意欲は女性に比べて低いが、収入、ポジションは男性の方が圧倒的に優位だ(写真はイメージです)。
撮影:今村拓馬
また、これまで仕事を辞めなかった理由として、男性の69%が「家族を養わなければならなかったから」と他者を理由にしているのに対し、女性は49%が「経済的に自立したかったから」と回答。「社会とのつながり」や「成長」、「仕事が面白かったから」というのも女性の方が多かった(複数回答)。
「50代女性の仕事のモチベーションの高さの背景には、育児の負担からの解放感があります。男性は負担自体がそもそもないので、意識は変わらないままキャリアの先が見えてきて、モチベーションが下がっているのが現状ではないでしょうか」(山谷さん)
男性向けの研修に不満、制約終わった後にキャリア築ける仕組みを
一方で、女性たちがやっと制約なく仕事に打ち込めるようになっても、会社の受け入れ態勢が整っていないことが多いことも分かった。
キャリアや定年に関する研修があったのは、総合職の男性42%に対し、女性32%と機会自体が少なく、また研修を受けた女性でも、その内容が「男性向きの研修」「一般的な内容で個々の事情に配慮されていない」などの理由で、35%が「合っていない」と感じていた。
「年齢に伴って上がっていくような単線的なキャリアアップの人事制度では、女性はどうしてもそこからはずれてしまう。子育てだけでなく、病気や介護など、誰もがいつ仕事に制約ができるか分かりません。その制約をフォローし、また制約から離れたときのキャリア形成を後押しできる仕組みを、企業には整えてほしいです」(山谷さん)
(文・竹下郁子)