働き方改革の影響で管理職の負担が増えている。
撮影:今村拓馬
「部下の残業は減っているのに、自分の業務時間は変わらない」
働き方改革関連法が2019年4月に施行してから半年が経過したものの、中間管理職の約6割が「残業時間が変わらない」、約3割がむしろ「仕事量が増えた」と感じていることが、リクルートスタッフィングの調査で明らかになった。
注目すべきは増えた仕事の中身。約6割が部下のサポート業務が増えたと回答しており、調査では「部下の残業時間削減のために、メンバーの業務負荷を管理職が負担していることが推察される」と指摘している。働き方改革のための残業という皮肉な現状が浮かび上がってくる。
調査:2019年7月12日~13日に、リクルートスタッフィングが従業員数300人以上の企業に勤める25歳~65歳の中間管理職にインターネット調査を実施。回答数は412人。中間管理職は「部長クラス」「課長・次長クラス」 と定義。
6割が「自分の残業時間は変わらない」
管理職の6割が「残業時間が変わらない」と回答している
出典:リクルートスタッフィング
調査によると、4月に比べ部署全体の残業については36%が「減った」と回答。一方で、中間管理職自身の残業が「減った」と回答したのは26%にとどまった。また中間管理職の6割超が「残業時間が変わらない」と回答し、「残業がやや増えた」「とても増えた」と答えた中間管理職も13%いた。
「管理業務」「部下のサポート」が増加
管理職の残業が増えた理由とは。
出典:リクルートスタッフィング
残業が増えた理由としては、「部署の管理業務」が7割超と最多で、「部下のサポート業務」(約6割)が続いた。部下の残業削減のために仕事量が増えたと感じている中間管理職も3割超おり、中間管理職に働き方改革のしわ寄せが来ているといえそうだ。
ボスジレンマに中小企業へのしわ寄せ
部下の残業削減のため、3割超の管理職が仕事の増加を感じている。
出典:リクルートスタッフィング
調査では、部署の残業時間を抑制しようとすると、中間管理職が多忙化する現象を「ボスジレンマ」と呼んでいる。 Business Insider Japanではこれまでも、働き方改革によって「労働時間を管理せよ」「リモートワークなど多様な制度導入に対応せよ」といった、新たなタスクが降りかかってくることに悲鳴をあげる管理職の現場を報じてきた。
しわ寄せの影響は中小企業にも及んでいる。近年の働き方見直しの機運が高まる中、大企業が残業を減らすために、下請けの中小企業に対して納期短縮を要求。中小企業の多忙化が指摘されている。中小企業庁のアンケート(2019年2月公表)では、6割以上の中小企業が取引先の企業から「納期の短縮」を求められたことがあると回答している。取引先の大半が大企業だ。
働き方改革という大きな社会のチャレンジは必須ながらも、管理職や中小企業など、誰かがしわ寄せを食っているのが現状だ。この現状を変えていかなければ、働き方改革はあくまで表面的なものにとどまっていると、言わざるを得ない。
(文・横山耕太郎)