インドにハマった25歳の私が見つけた、日本の焦燥感と希望

記念写真

インドで出会った同僚のアヌー(中央)は「インドの未来は明るい」と答えた。

提供:筆者

この1年近く、インドにはまった。

2018年末から2カ月半に渡り、私はインドのソーシャルビジネス企業でインターンを経験した。日本では社会人夫婦の家庭で子育てを体験する「家族留学」のmanmaを経営しているが、インドでは新しい社会課題に取り組みたいと思い、障害者の雇用支援をしている企業を選んだ。

インターンの結果、まださまざまな制度もインフラも整備されていないからこそ、アグレッシブな挑戦ができる、エネルギーに溢れたこの国の魅力に惹きつけられたのだ。

インターン先のv-sheshの同僚アヌーは、オフィス近くの女子大を卒業し、学生時代から手話に親しみインターンをしていたつながりで、新卒で入社したという。私より1つ年上の彼女に、自分の国の未来は明るいと思うかと、ふと尋ねてみたことがある。

「経済状況はどんどん良くなっているし、まあそう思うかな」と返ってきた。果たして日本の若者で、今日より明日が良くなると、希望が持てる人がどれだけいるだろうか。

日本は変わらない低反発クッションのようだ

駅内の写真

新しいものが生まれにくい、成長よりも衰退に向かう日本の未来は……。

撮影:今村拓馬

日本はまるで“変わらない”ことに固執しているようにも見える。

IT担当大臣がはんこ議連に所属しており「印鑑とデジタル化の両立を目指す」と話した。印鑑関連の仕事をしている人の職が奪われることが理由とのことだが、時代が変われば仕事が変わる。その変化に置いていかれることの方が、よっぽど本人たちを苦めはしないだろうか。

私たちの国は人口が減少を続け、市場規模は年々縮小している。車を買う人は減少し、銀行に出向く人も減った。これまで若い世代に人気を集めていた会社さえ、強い危機感を持って未来を見ているだろう。私たちは、変わり続けないといけない。

日本で暮らしながら日々感じるのは、変わろうと動いても、低反発クッションのように、何度でも跳ね返ってくるような変わらなさ、もどかしさだった。

2カ月半のインターンが終わり、すぐにまた2019年4月にインドを訪れることにした。2度目の訪問では、東大に留学後、1999年ごろから自身も起業家として活動を始めたビクラムさんがインドに帰国し立ち上げた、ベンチャーキャピタルGHV accelalatorで1週間ほど働かせてもらった。

両国を見てきたビクラムさんも「インドは何も整っていないからこそフレキシブル、日本はいろいろなものが整備されているからこそ新しいものが生まれにくい、真逆だね」とジョークを飛ばしていた。真逆の国から、何か学べるものがあるのではないか、そう思ったのだ。

変化を輸入するのも一つの手だ

オフィス

GHVは、インドのスタートアップへの出資やアクセラレータープログラムを提供している。

GHV accelalatorは日本企業とインドのスタートアップの架け橋的な存在として、インドスタートアップへの出資やアクセラレータープログラムを提供している。

Blue Tokai Coffee(デリーを中心に人気を集めるサードウェーブコーヒー)やPick my laundry(デリバリー型洗濯サービス)など、最近注目を集めるライフスタイルテック企業が名を連ねる。

滞在中は出資先のCEOとミーティングの機会をもらい、彼らの事業について話を聞くことができた。

最近ではOYOの日本進出が話題になるなど、インドのスタートアップの勢いは知られているところだろう。多くの人が熱心にスタートアップに挑戦し、スタートアップエコシステムが構築されてきている。

インドではカーストの考え方が依然として残っており、カーストによって職業が規定されることもある。しかし、ITは非常に新しい産業であるため、どんなカーストの人も参入できる職業であることも、ITスタートアップの熱が加速する原因だと最初のインターン先のCo-Founder(共同創業者)は教えてくれた。

日本国内が変われないのであれば、失敗を恐れずに挑戦するインドのスタートアップを支援し、“変化”を輸入するのも一つの手なのではないか。日本のお金を日本国内で使うよりも、海外のイノベーターに投資をして、彼らの“変化”と連携していくことは、日本の閉塞感を打破する一つの方法になり得る。そう思った。

日本企業が注目するインドのスタートアップ

my taxi indiaのHP

2015年、ジャパンタクシーはmy taxi indiaに50万米ドル(約6000万円)を出資している。

出典:my taxi indiaのHPより

実際にGHVを通して、日本企業とインドのスタートアップの連携は強化されている。

ジャパンタクシーは「my taxi india」に出資を行なった。my taxi indiaはインドのスタートアップの中でも老舗で、配車サービスを提供している。インドでは旅行客などが数日間車とドライバーを貸し切るケースが多く、インド版エクスペディア「Make my trip」などの車手配のシステムを管理しているのがこの会社だ。

my taxi indiaの社長は「日本交通と連携して、ともに日本とインド以外のアジア市場を取りに行ける可能性もあるだろう」と語った。

大手企業も動き出している。スズキは独自のアクセラレーションプログラムを開始。支援先の中から数社を選定して、出資や連携をしていく考えだ。

インドのビジネス市場で日本はどう振る舞うべきか

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インドのスタートアップが集まるバンガロール。インドのシリコンバレーと呼ばれる。

shutterstock/ANAND RAVEENDRAN

一方で、インドのスタートアップにとって日本が魅力的に映るかは疑問だ。

インドは国内に数多くの言語が混在しているため、英語を共通の言語としてコミュニケーションを取ることが多い。そのため、アメリカなど英語圏に行くことのハードルが低く、大学や就職のタイミングで多くの人が国外に進出している。英語が通じない日本市場は競争力を持てるのか。

もちろん、まだ日本は市場としては大きいとみるインドスタートアップの経営者もいる。インドは人口は多いものの、市場としては未熟だ。

音楽アプリを手がけるPindrop Musicの社長は、今後日本への進出についても検討しているそうだ。「確かにインドは人口は多いが音楽アプリを使うユーザーの数は少なく、マーケットとしてはまだ小さい。日本はほとんどの人がスマホを持ち、一定水準以上の生活を送っているため、現段階での市場規模はインドよりも大きい」と話した。

私たちにこれから待ち受けるのは、人口が増加し、経済も右肩上がりで成長していくようなバラ色の未来ではない。人口が減っていく中で、引き起こされる変化に柔軟に対応しながら、一人ひとりが豊かに暮らせる社会を再構築していかなければならない。そのためにも、彼らの変化や新しい挑戦から学べることは大いにあるのではないか。

ものすごいスピードで変わっていく世界の中で、現状維持は衰退を意味する。「変わらない」日本の閉塞感に、人々が無力感で立ちすくんでしまう前に、私たちは失敗を恐れず、変化のタネを拾いにいかなければならないのではないか。

合計3カ月間のインドでの日々は、私にそんな希望と焦燥感をもたらしてくれた。

(文・新居日南恵)


新居日南恵:株式会社manma代表取締役。1994年生まれ。 2014年に「manma」を設立。“家族をひろげ、一人一人を幸せに。”をコンセプトに、家族を取り巻くより良い環境づくりに取り組む。内閣府「結婚の希望を叶える環境整備に向けた企業・団体等の取組に関する検討会」・文部科学省「Society5.0に向けた人材育成に係る大臣懇談会」有識者委員 / 慶應義塾大学大学院システムデザインマネジメント研究科在学。

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