氷河期到来、飢餓の発生、死者1億人超…もし印パ戦争で核が使われたら

パキスタンは2014年11月13日、核攻撃が可能な中距離弾道ミサイルを、非公開の場所から発射した。

パキスタンは2014年11月13日、核攻撃が可能な中距離弾道ミサイルを、非公開の場所から発射した。

Inter Services Public Relations/Anadolu Agency/Getty Images

  • パキスタンの首相はこのほど、カシミール地方をめぐってインドと戦争に突入するかもしれないと警告した。両国ともに核兵器を保有している。
  • 新たに発表された論文では、インドとパキスタンが核戦争に突入した場合に何が起こるのか、シミュレーションが行われている。
  • その結果、死者数は1億2500万人に上り、地球の気温は5度低下、農業が困難になると予測された。
  • さらに、この惨事により世界規模の飢餓が引き起こされる可能性があると、研究者は考えている。

パキスタンとインドは、両国が領有権を主張するカシミール地方をめぐって、3回にわたって戦争をしてきた。パキスタンのイムラン・カーン(Imran Khan)首相は、このほど両国が新たな戦争に突入する可能性のあることを示唆した。

「いずれ核保有国同士が対決する局面が訪れる可能性がある」と、カーン首相は9月の国連総会で、カシミール紛争について言及した。

インドとパキスタンの両国が保有する核兵器を合わせると、全世界の2%を占める。核弾頭保有数はインドが140発、パキスタンが160発と推定されている。だが両国は、さらなる軍拡競争を繰り広げている

インドとパキスタンが核戦争に突入した場合、何が起こるのかを予測した新たな論文によると、2025年までに両国の核弾頭保有数はそれぞれ250発になるだろうとしている。

極端なシナリオではあるが、核戦争になった場合、真っ黒な雲が空を覆い、気温は劇的に低下、主要な農業地帯は作物を生産する能力を失い、世界的な飢餓を引き起こすと、論文に記されている。

「一瞬にして気候が変わるだろう」と論文著者のアラン・ロボック(Alan Robock)氏は、Business Insiderに語った。

「人類の文明化以降の歴史で、このようなことはいまだかつて起きていない」

同氏は論文の中で、核戦争が発生した場合の死者数は最大1億2500万人に上ると推計した。

核兵器はますます強力に

ロボック氏は、論文で想定した状況が現実になることはないだろうが、まったくありえないわけでもないと言う。そこでパキスタンとインドの核戦争による影響について仮説を立てるため、研究者らは軍事専門家に助言を求めた。「もちろん、実際に街を燃やして何が起こるか確かめるわけにはいかない」とロボック氏。

「ほとんどの科学者は加速器や試験管で実験を行う。自然が私たちの実験室なので、モデルを用いて計算を行った」

論文では、どちらの国が先に攻撃を仕掛けるかの予想はしていない。だが、仮にインドがパキスタンの主要都市の破壊を試みた場合、150発の核兵器が必要となる。この推計値は、いくつかの核兵器がターゲットを外したり、不発だったりすることを想定し、100発がパキスタンで爆発するというモデルに基づき算出された。

一方、パキスタンがインドの主要都市を攻撃する場合、150発の核兵器がターゲットに命中する必要があると推計された。

双眼鏡でインド軍の動きを見張るパキスタン軍兵士。2019年2月。

双眼鏡でインド軍の動きを見張るパキスタン軍兵士。2019年2月。

SAJJAD QAYYUM/AFP/Getty Images

もしこれらの核爆弾が15キロトン級(広島に投下された「リトル・ボーイ」と同じ)であれば、死者数は5000万人になると推計される。

だがロボック氏によると、現在アメリカが保有する核兵器の威力は100~150キロトン級だ。同氏がインド・パキスタン間で核戦争が勃発するとシミュレーションした2025年までに、両国はよりパワフルな兵器を獲得しているだろう。そこで論文では、両国が100キロトンの核兵器を用いた場合、死者数は約1億2500万人になると推計された。

核戦争が起これば、地球の気候は壊滅

核兵器の爆発は、熱を生み出す。建物は燃え、風によって炎が広がったり、あるいは炎が周辺の空気を巻き込み、火災旋風として知られるより猛烈な火災を引き起こしたりする。

核兵器爆発の想像図。

核兵器爆発の想像図。

Shutterstock

いずれにせよ、膨大な量の煤煙が大気中に放出されると論文には書かれている。この煤煙には、ディーゼルエンジン等から排出される真っ黒な物質「ブラックカーボン」が含まれる。この物質は、対流圏(地球の大気の最下層)を通過して、成層圏へと放出される。その後、数週間でブラックカーボンの粒子は世界中に拡散される。これが現実となると、「成層圏における史上最大規模の煤煙の拡散となるだろう」とロボック氏は述べた。

煤煙は成層圏に5年ほどとどまり、太陽光線を遮る。それによって地球の平均気温は最大5℃低下するとシミュレーションは示している。気温は「氷河期並み」に低くなるという。太陽から受けるエネルギーの減少に伴い、降雨量も最大30%減少する可能性がある。

気温と降雨量が正常に戻るには10年以上かかるだろうと、研究者は考えている。それまでの間、世界中、特にインド、中国、東南アジア、インドネシア、南米の熱帯地方、そしてアフリカの農家は作物の生産に苦戦することになる。

海洋生態系全体も壊滅的状態となり、各地の水産業も大打撃を被るだろう。

ソマリアの砂漠で見つかったヤギの死骸。

ソマリアの砂漠で見つかったヤギの死骸。

Associated Press

つまり、核戦争が世界中で大規模な飢餓を引き起こすと、論文で結論づけられた。

「核兵器からの直接的な影響はもちろん悲惨だが、食糧供給への影響はさらに深刻だろう」とロボック氏は述べた。

同氏がこのようなモデルでシミュレーションを行ったのは今回が初めてではない。2014年には、インドとパキスタンが「リトル・ボーイ」級の原子爆弾を、それぞれ50発ずつ投下した場合に何が起こるのかを予測した論文を共同執筆した。

このような「制約」のある核戦争のシナリオでも、破壊されたオゾン層を通して人々は有害な紫外線にさらされ、さらに地表の気温低下は25年以上も続く可能性があると、ロボック氏は明らかにした。だがこの場合、排出されるブラック・カーボンの量は新しいシナリオのモデルにまったく及ばないため、気温低下はそれほど深刻にはならないだろう。

我々はこれまで幸運だった

ロボック氏によると、このような地球規模の気象災害は、過去に発生したことがあるが、人間によって引き起こされたことは一度もないという。同氏は、今回シミュレーションした核戦争と、6600万年前に恐竜の絶滅を引き起こした天体衝突を比較。天体衝突では、膨大な量の硫黄が大気中に放出され、地球規模で急激に気温が低下した。だがそれとは異なり、核戦争は避けることができると、同氏は強調した。

「このような惨事はあらゆる原因で起こりうる。だが核兵器が存在しなければ、核戦争が起こることもない」とロボック氏は述べた。

この論文で重要なのは、国家同士が核の脅威で威嚇し合うことは、自らの安全性も脅威にさらすことになるという点だと、同氏は言う。さらに、2国家間の核戦争は「爆弾が投下された場所だけでなく、世界中の人々に影響を与える」と付け加えた。

広島への原爆投下以降、「これまでの74年間、我々は幸運だった」とし、「だがこの幸運もいずれ尽きるかもしれない」と述べた。


[原文:If India and Pakistan have a nuclear war, scientists say it could trigger Ice-Age temperatures, cause global famine, and kill 125 million people

(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)

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