連邦準備制度のエコノミストは、大半が白人男性だ。
Flickr / Federal Reserve
- ニューヨーク・タイムズは、女性やマイノリティーのリサーチ・アシスタントを増やすため、アメリカの連邦準備制度(Federal Reserve System)が採用方法をどう変えたかを報じた。
- 採用担当は、アイビーリーグ(東部の名門私立大学)の卒業生の履歴書を優先する代わりに、職務経験や、協調性やチームワークといったソフトスキルをこれまで以上に重視し始めた。
- こうした採用方法の変更は組織のダイバーシティを高めると、人事の専門家は指摘する。
他のエリート組織同様、アメリカの連邦準備制度もダイバーシティの問題を抱えている。
ブルッキングス研究所の最新レポートによると、連邦準備制度の博士号を持つエコノミスト776人のうち、人種的マイノリティー(アジア系、黒人、ヒスパニック、ネイティブ・アメリカン)は194人しかいなかった。
女性が占める割合も全体の約4分の1に過ぎず、この数字は2013年以降、あまり変わっていない。
だが、その採用プロセスには近年、大きな変化が起きた —— そのおかげでダイバーシティが高まり、これは他の組織の参考にもなる。
何をしたか
多くの大企業と同じく、連邦準備制度も採用にあたっては高度な数学を学んできたアイビーリーグの卒業生を優先してきた。この採用基準は特権階級の白人男性に有利で、必ずしも優秀な応募者の採用にはつながらないと、ピーターソン国際経済研究所のシニアフェロー、デービッド・ウィルコックス(David Wilcox)氏はニューヨーク・タイムズに語っている。
そこで、連邦準備制度では採用基準を変えた。協調性やチームワークといったソフトスキルをこれまで以上に重視し始め、職務経験や課外活動を考慮に入れ、面接でそれぞれの応募者に聞く質問を統一した。
人種や性別をもとに選ぶのではなく、応募者をより多様な観点から評価しようと考えたのだ。
ブルッキングス研究所によると、この新しい採用プロセスを導入した結果、2013年から2017年でリサーチ・アシスタントの採用は女性が5%、マイノリティーが6%増えた。
他の企業が学べること
組織のダイバーシティを高めるため、多くの採用の専門家が連邦準備制度と似たような戦略を取り入れてきた。
ハースト・マガジン(Hearst Magazines)のチーフ・コンテンツ・オフィサー、ジョアンナ・コールズ(Joanna Coles)氏は、新たな多様な専門家のネットワークを利用することで、応募者の層を広げた。グーグル(Google)は、採用にあたっては単に「良い気がする」ではなく、統一された定量的な評価を用いるよう奨励している。
ネットフリックス(Netflix)の元チーフ・タレント・オフィサー、パッティ・マッコード(Patty McCord)氏は、自身が考える最高の人材は、面接はひどくても素晴らしい技術的理解を持っている、または「左脳と右脳を切り替えられる」ことを示す独創的な考えを持っている人材だと話している。
マッコード氏は、「採用を成功させるには、マッチングを認識することだ —— そして、それはしばしば予想とは違うものだ」とハーバード・ビジネス・レビューに書いた。
長期的には、多様性のあるチームを作ることが組織の助けとなる。ある研究では、多様性のあるチームはより多くのアイデアを思いつき、より少ないミスを犯すことが分かった。
ニューヨーク・タイムズによると、連邦準備制度理事会の前議長ジャネット・イエレン氏は、9月下旬に開催されたブルッキングス研究所のイベントで、「公正ということ以上に、ダイバーシティの欠如は現場にとってマイナスになる。才能を無駄にするからだ」とし、「現場のものの見方を歪め、その幅を狭めもする」と指摘した。
(翻訳、編集:山口佳美)