多くのプラスチックが海洋に投棄されている。
The Ocean Cleanup
- 年間約1400万トンのプラスチックが海に流れ込み、その40%が使い捨てプラスチックだ。
- 科学者の中には、世界中の海に5兆2500億個のプラスチック破片があると推定する者もいる。そのプラスチックの多くは海の巨大なゴミ捨場に流れ着く。
- 新たな研究によると、南大西洋の海岸に漂着する使い捨てペットボトルの主な供給源は、おそらく中国の商船であると推測されている。
科学者たちは、世界中の海には5兆2500億個のプラスチックの破片があると推定している。これはわれわれの銀河系にある星よりも多い。毎年1400万トンものプラスチックが海に入ってくる。これは約200万頭のゾウの体重に相当する。その40%が「使い捨て」と分類されており、これは生産された年のうちに海に流れ込むことを意味する。科学者たちは、この浮遊するプラスチックの大部分がどこから来ているのか、まだわかっていない。しかし、新たな研究が部分的な回答を提供していて、大西洋のペットボトルに関して言えば、供給源はゴミを船外に投棄している中国の商船のようだ。
研究者のマエル・コナン(Maelle Connan)氏は、南大西洋のイナクセシブル島で、ペットボトルのラベルをチェックしている。これは、ボトルがいつどこで作られたかを判断するのに役立つ。
Peter G. Ryan
米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences)誌に掲載された今回の研究では、南大西洋の無人島、イナクセシブル島に漂着したペットボトルなどの破片を調査した。
その結果、この35年間でペットボトルの数が毎年15%ずつ増えていることがわかった。72日間の調査期間中に漂着したボトルのほとんどは中国製で、日付印を見ると大半は過去2年間に製造されたものだった。
しかし、ボトルがアジアから大西洋に自然に漂ってたどり着くには3〜5年かかるだろうと研究の著者らは結論づけている。
論理的な結論は中国商船だった。
漂着プラスチックの謎を解く
イナクセシブル(近寄りがたい)という名の通り、この島は、約13平方キロの土地のほぼ全域が断崖に囲まれており、西海岸に点在する岩だらけの砂浜からしか上陸できない。
この島は南アフリカとアルゼンチンの中間に位置し、南大西洋海流という巨大な環流の南端にある。この海流がゴミを海のこの地域まで運び、太平洋ゴミベルト(北太平洋の海洋ごみが多い海域)に匹敵するゴミベルトを形成している(太平洋のゴミで満たされた渦はハワイとカリフォルニアの間に位置し、テキサス州の二倍以上の大きさに1兆8000億個以上のプラスチック片がある)。
この環流(とゴミベルト)の近くに位置するイナクセシブル島は、途方もない量のプラスチックの破片を蓄積する。科学者がプラスチックの謎を研究するには最適な場所だ。
研究者たちは1984年、2009年、2018年の3回の訪問で数千個のプラスチック片を回収したが、使い捨てのペットボトルが最も多く、最初に訪問した年から毎年14.7%ずつ量が増えている。
ボトルに貼られたメーカーのマークと日付印を分析することで、1980年代のボトルの2/3は南米からやってきたことがわかった。2009年には、南米のものは半分で、残りのボトルはアジアのものだった。それからわずか9年後、アジア製のボトルが全体の75%を占め、そのほとんどが中国製だ。
2018年に収集された中国製ボトルの大部分は、日付印が押されてから 2年以内に漂着しており、中国本土よりも近いところから来たことになる。
最も可能性が高いのは中国の商船だと研究チームは判断した。イナクセシブル島付近の海域を航行するアジアの貨物船の数は、1980年以降、著しく増加している。さらに、論文の主執筆者であるピーター・ライアン(Peter Ryan)氏によると、チームが見つけたボトルの多くは、スペースを節約するために船で慣習的に行われているように、上部をネジで留めて潰されていたという。
イナクセシブル島で最も多く見つかる中国製の500ml飲料水のボトル。
Peter G. Ryan
「船からのものであり、陸からのものではない」とライアンはAFP通信に語った。
「商船の一部がそれを行っているようで、主にアジアの船のようだ」
この投棄はマルポール条約(船舶による海洋汚染の防止に関する国際条約)に違反している可能性が高いという。さらに、これらの中国製ボトルの一部は、他国に輸出された後に捨てられた、あるいは他国の船に販売された可能性もあると指摘した(中国は世界第2位の水の輸出国である)。しかし、国連のデータによれば、イナクセシブル島に最も近い南米とアフリカの両大陸は、ほとんど水を輸入していない。研究者らによると、これらの地域で販売されているほとんどすべてのボトル入り飲料水とソフトドリンクは地元で製造されている。
海洋プラスチックのすべてが陸から来ているわけではない
世界のプラスチックの生産量は、過去70年間に急速に増加し、年間約8%で増加し続けていて、今では年間3億トン以上のプラスチックが生産されています。
ほとんどのプラスチックは分解するのに何百年もかかる。そしてマイクロプラスチックと呼ばれる非常に小さな破片になってしまう。
多くの人は、海にある使い捨てプラスチックのほとんどは、陸上の水路に捨てられ、最終的には海に流れ込むと考えている。ある調査では、海洋のプラスチックの80%は陸に由来すると推定されている。
しかし、ライアンと彼の同僚は、その直接の証拠はほとんどないと言う。
「海にあるプラスチックの破片のほとんどが陸上から来たのものだという、広く信じられている仮説に疑問を投げかける」と著者らは記している。
研究者のジェニファー・レイバーズ(Jennifer Lavers)氏は、ココス島で流れ着いたペットボトルをカタログ化している。
Silke Stuckenbrock
太平洋ゴミベルトからプラスチックを取り除くためにThe Ocean Cleanupと協力している海洋学者ローラン・レブレトン(Laurent Lebreton)氏は、陸から来たものが80%という数字は、外洋には当てはまらないとAFP通信に語った。
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)