1912年、イギリス、サウサンプトン港に停泊するタイタニック号。大西洋を渡る運命の航海の前。
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- タイタニック号は1912年4月15日、イギリスからニューヨークへ向かう初めての航海で氷山に衝突して沈没した。この事故で1517人が亡くなった。
- タイタニック号は3600メートル以上の深さに沈み、1985年9月1日に発見された。
- それ以来、数多くの有人または無人の潜水艦が潜り、海底で崩壊していくタイタニック号の姿を写真に収めている。
- 8月、ダイバーが14年ぶりに海底のタイタニック号を訪れた。深海の海流と金属を捕食するバクテリアにより船が著しく劣化していることが、彼らの写真によって明らかになった。
1912 年4月15日未明、RMSタイタニック号は海底1万2000フィート以上に沈み、1517人が亡くなった。
タイタニック号はニューヨークへ向かう初の航海中だったが、ニューファンドランド島の沖合約650kmの地点で氷山に衝突した。
船の残骸は70年以上そのままにされていたが、1985年9月1日、後に冷戦中の極秘ミッションだったと明かされた任務でアメリカ海軍が発見する。それ以来、数多くの有人または無人の潜水艦が海底に沈んだタイタニック号を訪れた。
8月、潜水艇メーカーのトライトン・サブマリーンズ社の調査チームが5回にわたるダイビングを行い、船の残骸を撮影した。タイタニック号に人間が訪れたのは14年ぶりのことだった。
この調査で、船は超高解像度の4K映像で撮影された。これにより研究者は船体の3Dモデルの作成や、タイタニック号の現状を把握して将来の予測を立てることができる。
というのも、タイタニック号は永遠ではないからだ。
科学者たちは、金属を食べるバクテリアによって船体は2030年までにすべて消滅する可能性があると見ている。崩壊しつつあるタイタニック号の現状を見てみよう。
「あらゆるものと同様に、タイタニック号は最終的には完全に消滅する。船が完全になくなるまでに時間がかかるが、船体の腐敗は予想された通りで、自然な経過だ」と、トライトン・サブマリーンズの社長で共同創設者のパトリック・レイヒ(Patrick Lahey)氏はBusiness Insiderに語った。
2019年8月の調査で撮影されたタイタニック号の船首。
Atlantic Productions
レイヒ氏は8月、トライトンの5回の潜水のうち3回に参加した。
レイヒ氏はこれまでタイタニック号を訪れたことはなかったため、船体の変化を判断することはできなかった。だが、専門家の多くは前回の調査に比べて船が大きく異なって見えるという意見で一致した。
1996年、フランスの有人潜水艦「ノティール(Nautile )」によるタイタニック号の調査。
Xavier DESMIER/Gamma-Rapho/Getty
レイヒ氏は、船は自然との戦いに破れつつあると語った。
深海の海流や塩水による腐食、金属を食べるバクテリアが、3000m以上の深さに沈んでいる船体を少しずつ削っている。
1996年のタイタニック号の船首。
Xavier Desmier/Gamma-Rapho/Getty
「予想された通り、船は確実に荒廃している」と、レイヒ氏は語った。
微生物学者のローリー・ジョンストン(Lori Johnston)氏は、「船の劣化の大部分は、タイタニック号に因んでハロモナス・ティタニカエ(Halomonas titanicae)と名づけられた、鉄や硫黄を好むバクテリアによるもの」と、USA Todayに述べた。
2003年、タイタニック号の左舷のアンカーの下についたラスティクル。
Lori Johnston/Wikimedia Commons
鉄を好物とするバクテリアが沈んだ船の鉄を食べると、つららに似た形が船に形成される。錆びた色合いのそのつららは、ラスティクルと呼ばれる。
科学者で、2010年にこのバクテリアを発見したヘンリエッタ・マン(Henrietta Mann)氏は、「今回の新しい調査映像をもとにすると、タイタニック号は消滅まであと30年ほどだ」と、Timeに語った。
遠隔操作無人潜水機(ROV)ヘラクレスによる調査 で、2004年6月に撮影されたタイタニック号の船首。
Courtesy of NOAA/Institute for Exploration/University of Rhode Island
マン氏は今回の調査には参加しなかったが、今回の調査リーダーの1人、ビクター・ヴェスコヴォ(Victor Vescovo)氏は「船は激しい流れのある海中に107年間も沈んでいた。海中に消えるかどうかは問題ではない。それがいつなのかが問題だ」とTimeに語った。
「船の上部が崩れており、タイタニック号の崩壊スピードが増している」と、マン氏。
1996年調査時のタイタニック号の一部。
Xavier Desmier/Gamma-Rapho/Getty
「船の最上部が劣化すると、下層へと進む」と彼女は付け加えた。「つまり、船の下部にも影響を与える。劣化はどんどん進む」。
これらの崩壊は、船の中で最も有名な場所で起きた。エドワード・スミス船長の船室だ。
1996年のタイタニック号の写真では、船長の部屋にあるバスタブが確認できる。現在この部分はもう見ることができない。
Xavier DESMIER/Gamma-Rapho/Getty Images
1996年、タイタニック号の右舷にあるこの部屋で、スミス船長のバスタブなどを容易に見ることができた。
現在は、部屋もバスタブももう見えない。船内の進入不可能な深さにある。
スミス船長の部屋のバスタブ(2004年6月)。ラスティクルが部屋のほとんどのパイプや備品の上で成長しているのがわかる。
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「タイタニック号の右舷は最も崩壊が激しい場所だ」と、タイタニック号の歴史学者、パークス・ステファンソン(Parks Stephenson)氏は書面で述べた。
「船長のバスタブはタイタニック号を愛する人々にはおなじみの画像だが、もう今はない」とステファンソン氏は付け加えた。
「右側のデッキの穴は部屋とともに完全に崩れ、崩壊はさらに進んでいる」
トライトン・サブマリーンズが撮影した映像は、アトランティック・プロダクション製作のドキュメンタリー映画に使用される予定だ。
2019年8月の調査で撮影された、タイタニック号の左舷。
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高解像度の映像は、現在の船体の状態をARやVRで映像化することにも使用される。
ハイテクを利用したタイタニック号の再建は初めてではない。この360度のパノラマディスプレイは、ドイツのライプツィヒで2年前に展示された。しかし、船の侵食速度を考慮すると、この姿はもはや正確なものではない。
タイタニック号の360度の大型パノラマ展示を見る人々。2017年1月27日、ドイツ、ライプツィヒ。
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2017年のタイタニック号再建は、アーティストのヤデガー・アジシ(Yadegar Asisi)氏によって制作され、水深3650mの海底を探索し、タイタニックがどのように見えるかをシミュレーションした。
レイヒ氏は、タイタニック号の現状に驚きはないと語った。
2019年8月、トライトン・サブマリーンズの調査で撮影されたタイタニック号の映像のスクリーンショット。
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「驚くほど多彩な海の生物に隠れ家を提供しながら、時間とともに海が船を破壊し、自然の一部に戻っていくのを見て嬉しかった」と、彼は語った。
[原文:The Titanic is slowly but surely disappearing — here's what the wreck looks like now]
(翻訳:Makiko Sato、編集:Toshihiko Inoue)