16年ぶり日本開催「NBA」に飛び火した香港デモ問題。Twitter投稿に激怒の中国、炎上は止まるのか?

HoustonRockets

ヒューストン・ロケッツ(黒ユニフォーム)は日本でプレシーズンマッチを行う(写真は10月3日にホノルルで行われた試合)。

USA Today Sports/Reuters

米男子プロバスケットボールリーグNBAの日本開催プレシーズンマッチ「NBA Japan Games 2019 Presented by Rakuten」が、10月8日と10日に日本で開催される。実に16年ぶりの開催で注目が集まるなか、思わぬ方向から水を差す事態が起きている。

プレシーズンマッチのために来日しているヒューストン・ロケッツのダリル・モーリーGMが10月4日に、Twitter上で香港デモを支持する投稿をしたのだ。

すると、中国バスケットボール協会が即座に反応し、6日にロケッツとの提携関係の打ち切りを発表した。またロケッツのスポンサーであり、中国の大手スポーツアパレルブランド「LiNing(李寧)」も6日夜に、ロケッツとの関係を中止すると発表した。

モーリーGMは現在ツイートを削除しているが、「時既に遅し」だ。

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ダリル・モーリーGMがTwitterで投稿した内容。既に削除されている。

かつては中国の英雄ヤオ・ミンが所属

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ヒューストン・ロケッツで活躍した元プロバスケ選手のヤオ・ミン氏。

POOL New/Reuters

ロケッツは中国スポーツ界の英雄である姚明(ヤオ・ミン)がプレーしていたチームで、中国では認知度、人気度ともに高い。NBAはヤオ・ミンがNBA加入した2002年頃から中国市場に力を入れているが、ロケッツはNBAで最も中国市場に力を入れていたチームともいえる。

中国人は非常にバスケ好きだ。バスケリングの置かれている公園が中国各地にあり、休日となればバスケを楽しむ人たちの姿が多く見られる。国内リーグのCBAやNBAのシーズンが始まると、スポーツチャンネルでは試合が多く放送されている。

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香港デモを支持するツイートをしたヒューストン・ロケッツのダリル・モーリーGM。

USA TODAY USPW/Reuters

テンセント系列の調査会社が2018年に発表したバスケットボールに関するレポートによると、中国のスポーツ市場規模は2020年には3兆元(現在のレートで約45兆円)まで成長するとし、その中でもバスケットボールが、若者を中心に1番の人気スポーツであるという。2018年における、中国のバスケのコアファンは1.43億人、ライトファンは4.82億人いると報告している。

これだけの巨大市場を敵に回してしまったのだ。

チームに帯同して東京にいるモーリーGMは7日午前9時前(日本時間)になって、次のように釈明のツイートをした。

私は自分のツイートが、中国のロケッツファンや私の友人たちに不快にさせることを意図していなかった。 私は、ある複雑な出来事についてある考えを、ある解釈に基づいて、表明しただけです。 そのツイート以来、他の視点を聞いたり考える機会を多く得ました。

私は、中国のファンやスポンサーが提供してくれている、十分なサポートにいつも感謝しています。気分を害した人たちの怒りや誤解が私の意図したことではないと知ってくれることを願っています。 私のツイートは私自身のものであり、決してロケッツやNBAを代表するものではありません」

また、ほぼ時を同じくして、NBAは中国のSNS、新浪微博(ウェイボー)にあるNBAの公式アカウント上で、ダリルGMのツイートを踏襲した上で「彼のツイートはロケッツやNBAを代表するものではない」と表明した。

NBAstatement

騒動を受け、NBAは中国SNS上の公式アカウントで声明を発表した。

「炎上」はどこで止まるのか

事態は、加熱してきている。

中国現地では6日夜、スポーツニュース番組ではMCが今回のコメントを鋭く批判し、SNS上ではロケッツ、NBAを非難するコメントが溢れた。

さらに7日正午過ぎには、国内リーグのCBAがウェイボー上の公式アカウントで、10月19〜20日に予定していた、中国・蘇州で行われる予定のロケッツの試合やNBA下部リーグの試合の計4試合の中止を発表した。

中国市場に力を入れているNBAにとっては寝耳に水の事態だが、この炎上には慎重に対応しなければ、損失がさらに広がる可能性がある。今後もしばらく余波は続くと見られる。「16年ぶりの日本開催」が違う意味で注目されることとなってしまった。

改めて中国市場の巨大さが、外国の企業や団体にとって魅力的でもあり、同時に難しさもあることを示した形だ。

(文・大塚淳史)

編集部より:初出時、中国バスケットボール協会、李寧、中国のマスコミがこのGMのTwitterに反応した日付を5日としておりましたが、正しくは全て6日でした。訂正致します。 2019年10月7日 18:50

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