キャリアに正解なし、大切なのは自分で決めること。令和時代の「日本的人材流動化」とは?

セッションの様子

「ONE JAPAN CONFERENCE 2019」の様子。左からモデレーターを務めたBusiness Insider Japan滝川麻衣子、篠田真貴子さん、岩佐琢磨さん、加藤遼さん、大川陽介さん。

撮影:渡邊 崚生

9月29日に秋葉原で開催され、1000人を超える大企業の若手・中堅社員が集まった「ONE JAPAN CONFERENCE 2019」。書籍『アライアンス』監訳の篠田真貴子さんはじめ、4人の「濃いキャリア」を持つ方々が登壇し、「令和時代の日本的人材流動化」をテーマに語り合いました。働き方の多様性が増す中、独自のキャリアを築いた“スーパー人材”たちが語る、令和時代の幸せなキャリアの築き方とは?

スピーカープロフィール

篠田真貴子(しのだ・まきこ)さん:『アライアンス』監訳

慶應義塾大学経済学部卒、米ペンシルバニア大ウォートン校MBA、ジョンズ・ホプキンス大国際関係論修士。日本長期信用銀行、マッキンゼー、ノバルティス、ネスレを経て、2008年10月に 株式会社ほぼ日 に入社。2008 年 12 月より 2018 年 11 月まで同社。

岩佐琢磨(いわさ・たくま)さん:株式会社Shiftall 代表取締役CEO

2003年からパナソニックにてネット接続型家電の商品企画に従事。2008年に株式会社Cerevo、2018年4月に株式会社Shiftallを設立。2019年1月に残数の自動計測機能を備えた専用冷蔵庫によるクラフトビールの自動お届けサービス「DrinkShift」を発表。

加藤遼(かとう・りょう)さん:株式会社パソナJOB HUB 事業統括部長兼旅するようにはたらく部長 / 内閣官房 シェアリングエコノミー 伝道師

タレントシェアリングプラットフォーム『JOB HUB』の事業統括を務めながら、「旅するようにはたらく」をコンセプトにしたサービス『JOB HUB TRAVEL』を立上げ、全国の地域を旅するようにはたらいている。内閣官房シェアリングエコノミー伝道師、総務省地域力創造アドバイザーなど。ビジネス・パブリック・ソーシャルのトライセクター連携によるソーシャルイノベーションに取り組んでいる。

大川陽介 (おおかわ・ようすけ)さん:株式会社ローンディール 最高顧客責任者

2005年富士ゼロックス株式会社入社、ONE JAPANの共同発起人。「日本的な人材の流動化」というミッションへの共感から、「ビジネス版レンタル移籍」を提供する株式会社ローンディールへ参画。現在、最高顧客責任者を務め、大企業やレンタル移籍者の経験価値向上に取り組む。

キラキラな転機ばかりではない

株式会社Shiftall代表取締役CEO、岩佐琢磨さん。

株式会社Shiftall代表取締役CEO、岩佐琢磨さん。

Business Insider Japan(以下、BI):とても“濃い”キャリアを持つ皆さんにお集まりいただきました。有名企業を 複数経験後 にジョブレス(仕事を持たない状態)となった篠田さん、パナソニックに出戻った岩佐さん、 1度も転職していないけれど複数の事業を手がけている加藤さん、長年在籍した大企業を飛び出した大川さん。

自由に動き回る“スーパー人材”のように見える皆さんですが、その裏には葛藤した日々もあったのではないかと思います。皆さんの転機はいつ訪れたのでしょうか?

篠田:私は留学を含めると6カ所経験していますが、自分の意思で動いたのは留学とほぼ日だけ。他は全て、当時の状況から「そうなってしまった」のであって、使命感があったり、キャリアアップを意識したものではありませんでした。

転職って「給料アップ!」「やりがい重視!」のようなイケイケのイメージがあるかもしれませんが、私の場合は当てはまらないケースもありました。

岩佐:パナソニックに入社して3年目で、自分は新規事業に特化した人材であることに気づきました。そんな自分の居場所がこの会社にあるか?と考えたときに、当時パナソニックは当時テレビやデジカメをたくさん売って儲けていた。つまり、自分のような新規事業人材は求められていなかったんです。

ところがちょうどそのタイミングで、世間にベンチャーブームが訪れました。退職してCerevoを立ち上げたのは、「世の中の流れと自分の得意がマッチするのでは?」と思ったからです。挑戦できる機会が訪れたときに、それをパコッと打ちに行けた。思い切って決断できたのが大きかったですね。

大川:僕は富士ゼロックスに在籍中も会社のことが大好きでしたが、ONE JAPANやプロボノの活動を通じて、社外でもやれることがたくさんあることを実感していました。そんな中、篠田さんの書籍『ALLIANCE』で「終身信頼」という言葉に出合い、「必ずしも雇用され続ける必要はない」ことに気付き、退職を決意しました。

組織から人が出て行くのは悪いこと?

『アライアンス』監訳、篠田真貴子さん。

『アライアンス』監訳、篠田真貴子さん。

BI:篠田さんはセッション前の打ち合わせで、「人が出て行くのってそんなに悪いこと?」と仰っていましたね。

篠田:はい。新卒で入った会社で一生働くことは、初恋の人と一生添い遂げることと似ています 。当人同士がOKであれば素晴らしいことですが、みんながそうしなければいけないというのは、ちょっときついですよね? 他の異性とお付き合いする可能性もある中で、「今はこの人を選んでいる」と思うことが大切だと思います。

仕事も同じです。「自分で選んだ」と思うことで、コミットはより高まるのではないでしょうか。

一方会社側は、人が辞めることを警戒するのではなく、チャンスと認識するべきです。社員の退職をきっかけに、もっと良い人を採ることもできるわけですし。社外を経験した人が入ってくることで、会社の空気は綺麗になります。

岩佐:僕も、大企業が人材流出のプロテクション(防御)に走ることには反対です。「鮭」は育った川を出たあと、元いた川に戻ってくる習性を持ちます。これは大企業に戻ってくる人たちにも当てはまるのではないでしょうか。元いた会社のカルチャーに近い人を巻き込みながら帰ってくる。

企業は人の流出を抑えるのではなく、逆に放流する戦略を考えた方が良いのかもしれません。

BI:まさに岩佐さんが鮭ということですね。大川さんのローンディールは、そうした「日本的な人材流動」を仕掛けたサービスですよね?

会社を出て知る、元の会社の良さ

株式会社ローンディール最高顧客責任者、大川陽介さん。

株式会社ローンディール最高顧客責任者、大川陽介さん。

大川:そうですね。岩佐さんの例えで言うと、大企業とベンチャー企業の間に介在して、鮭の生存確率を高めるのがローンディールの役割です。レンタル移籍を通じてベンチャー企業で働いた人のほとんどは、大企業に帰ってきても辞めません。自分の会社の良さや、自分の可能性を客観的に知った上で、愛着ある元の会社で働くことを選択するんです。岩佐さんはパナソニックに出戻りをされたわけですが、なぜそのような決断をされたのでしょうか?

岩佐:パナソニックの事情が大きく変わったから、というのが一番大きいです。イノベーションには2種類あって、例えばプリウスの燃費を10キロから15キロにするような、“ちょっと良くする”「コンティニュアスイノベーション」と、空飛ぶ車を作ってしまうような「アンコンティニュアスイノベーション」があります。

家電業界は今、後者をやらなければ生き残れない時代です。僕はこの10年間ひたすら後者を研ぎ澄ませてきました。だから「パナソニックと組めば家電業界に大きなインパクトを与えられる」という確信を持てたんです。

さらに、僕には当時30人弱のチームがいましたし、パナソニック側の経営陣とも気が知れていて、話が早かった。こうしたさまざまなピースがぱちっとはまったんですね。

従うべきは、正しさより楽しさ

ONEJAPAN

当日のセッションの様子。

BI:転職者数の統計を見ると、リーマン・ショック前の水準に戻った程度で、大きくは増えていません。その一方で、人材サービス会社への登録者はすごく増えている。皆さんは軽やかに動いていますが、動きたくても動けない「転職潜在層」が多いのかなと。

加藤:僕が所属しているパソナは「社会の問題点を解決する」を企業理念としていて、これを実現するためには世界の70億人に会って話すことが理想だと考えています。社会が今どうなっているのか、肌感を身につけられるからです。

実際に会って話すには、自分の所属する組織や地域からまず出ること。その先で、例えば地域の仕事を手伝ったりすると、その地域の問題を“自分ごと”として捉えられるようになります。

とはいえ、新しいことを始めるときにはリスクが伴うもの。僕がお勧めするのは、自分のやりたいことをSNSで発信して、共感してくれる人を見つけることです。仲間がいれば助け合えますし、逆に「こんなことをやりませんか?」と声をかけてもらうことで、自分の新たな可能性を発見できることもあります。

キャリアに正解はない。大切なのは自分で決めること。

ONE JAPAN

提供:ONE JAPAN

BI:篠田さんは今、組織で働くことから離れた立場にいるわけですが、ジョブレスの10カ月間でどんなことを思いましたか?

篠田:私は「これが好き!やりたい!」ということを強く思う方ではないのですが、ジョブレスの期間を通じて、そんな自分でもやりたいことがあぶり出されてきました。これは会社という枠組みの中にいると、気づきにくい事かもしれません。

先ほど加藤さんが仰った「つながりが自分の可能性を見つけてくれる」ということも感じました。例えば今日、私は「働く」というテーマで講演に呼んでいただいています。働いていないのにもかかわらず(笑)。

私たちの人生は、基本的には親の世代よりも長いですから、働く時間も長くなります。自分のやりたいことやできることを知るために、ジョブレスの時間をあえて持ってみるのも良いかもしれません。

大川:僕はONE JAPANやローンディールの活動を通じて、「キャリアに正解はない」ことを実感しました。大切なのは、先ほど岩佐さんが言っていたように、選択肢が目の前に飛んできたときにパコっと打てること。自己決定できることだと思います。

自分の場合は38歳の誕生日にカニを食べながら、家族に「会社を辞めようと思う」と伝えたら、妻が「いいよ」と言ってくれたときが一番、幸福度が高かった。まさにキャリアを自己決定した瞬間でした。

BI:添い遂げるにしても、次の恋愛に行くにしても、自分が決めているという意識が大切なのかもしれませんね。

例えば明日のランチだってきっかけになる

株式会社パソナJOB HUB事業統括部長兼旅するようにはたらく部長 / 内閣官房 シェアリングエコノミー 伝道師、加藤遼さん。

株式会社パソナJOB HUB事業統括部長兼旅するようにはたらく部長 / 内閣官房 シェアリングエコノミー 伝道師、加藤遼さん。

提供:ONE JAPAN

加藤:僕は社会人の意思決定力を磨く2泊3日×2回の人材育成プログラムを釜石市でやったことがあるのですが、終了後には起業する人や移住する人が出てきて、なんと全員がアクションを起こしたんです。意思決定力と時間さえあれば、ほとんどの人は何かを作ったり、決めたりできるんじゃないかと思いました。

特に「人」「場所」「やること」、この3つを変えると、五感が働いてチャレンジしやすくなると思います。

篠田:会社員の方だと、新しい人と出会う機会が少ない人もいるかもしれません。そんな方は、同じ部署の人とランチに行き続けるのではなく、週1回でも別の人と一緒に食べてみるのはどうでしょうか。

毎週1人新しい人に出会れば、年間で50人ものつながりが増えます。友達をランチに誘うときに、同僚の方を連れてきてもらっても良いですよね。メッセンジャーで友達に連絡を取って、明日から始めてみてはいかがでしょうか?

(構成・一本麻衣、写真・井上 麻衣子 、渡邊 崚生 、伊藤 淳 、編集・滝川麻衣子)

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