調査によるとミレニアル世代の半分が、心の不調で離職した。
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- ハーバード・ビジネス・レビューに掲載された新たな調査によると、心の不調を理由に離職した人の比率は、ミレニアル世代で50%、Z世代で75%だった。
- ミレニアル世代は、その上の世代よりもセラピーを大切にしており、メンタルヘルスに問題があっても恥ずべきことではないと考えている。
- 調査の結果は、うつ病の増加、「絶望死」、さまざまな金銭問題、燃え尽き症候群など、ミレニアル世代を苦しめるいくつかの問題を強調している。
ミレニアル世代(1980〜95年ごろ生まれ)は、メンタルヘルスを職場で第一に検討すべき課題へと押し上げた。
ミレニアル世代の50%、Z世代(1995年以降の生まれ)の75%がメンタルヘルスを理由に仕事を辞めている。これはマインド・シェア・パートナーズ(Mind Share Partners)、SAP、クアルトリクス(Qualtrics)が、フルタイムで働く16歳以上の1500人を対象として、アメリカの職場におけるメンタルヘルスについての課題や偏見を調査し、ハーバード・ビジネス・レビュー(Harvard Business Review)で報告した内容だ。心の不調を理由に離職した人の割合は、すべての回答者では20%で、この年代は有意に高い。この調査報告の著者、ケリー・グリーンウッド(Kelly Greenwood)、ビベック・バパット(Vivek Bapat)、マイク・モーガン(Mike Maughan)は報告書に「世代間で考え方に違いが見られる」と記した。
ミレニアル世代が「セラピー世代」としても知られるようになったことを考えると、この違いは驚くにあたらない。ペギー・ドレクスラー(Peggy Drexler)はウォール・ストリート・ジャーナルに掲載したエッセイで、彼らは自分の精神状態を認識しており、セラピーは恥ずべきことではないと伝えようとしていると述べた。さらに、ミレニアル世代は自らを向上させる手段としてセラピーをとらえており、完璧でありたいという欲求に悩まされ、期待通りに物事が進まないと感じた時に助けを求めるようになっていると指摘した。
だが、彼らのセラピーに頼りがちなことは、この世代を苦しめるいくつかの大きな問題を浮き彫りにしている。
ミレニアル世代では、うつ病と「絶望死」がより身近に
ミレニアル世代にうつ病が増えている。2018年のブルークロス・ブルーシールド協会のレポートによると、ミレニアル世代のうつ病の診断が2013年と比べて47%増加していた。また2019年4月に行われた同協会の追加調査によると、ミレニアル世代は、X世代(1965〜70 年ごろ生まれ)の同じ年齢の時に比べて健康状態が悪く、年齢とともに健康状態が悪くなる傾向があることがわかった。
6月にジェイミー・ドゥシャーム(Jamie Ducharme)は、市民の健康増進を目指す研究団体、Trust for America's HealthとWell Being Trustによる調査結果から、多くのミレニアル世代が、薬物、アルコール、自殺に関連する死亡、「絶望死」をしているとタイムで報告した。
過去10年、このような理由で死亡する人はすべての年代で増加しているが、若者の間でもっとも増加していると、ドゥシャームは指摘した。アメリカでは2017年だけでも3万6000人ものミレニアル世代が死亡し、そのほとんどがドラッグの過剰摂取によるものだったという。
これらの死亡が増加した理由はいくつかあるが、そのひとつは、若者が危険を顧みない傾向にあることだ。だが、報告は他にも構造的な要因を明らかにしている。学生ローン、医療費、保育費、そして高騰する住居費といった、ミレニアル世代が直面するさまざまな金銭問題のことだ。
これらの4つの費用は「偉大なるアメリカ人の購買能力低下の危機」の原因ともなっており、ミレニアル世代が経済的基盤を築くのを妨げている。
バーンアウトも問題
バーンアウト(燃え尽き)も、ここ数年恐ろしいほどの速さで増加していると、Business Insiderのイヴァン・デ・ルス(Ivan De Luce)が報じた。世界保健機関(WTO)はこのほどバーンアウトを初めて医学的に「バーンアウト(燃え尽き)症候群」として分類した。
仕事量は増え続け、スタッフやリソースに限りがあり、長時間労働の傾向のある今日の職場環境ではますます問題が大きくなってきている。特にミレニアル世代は自らを「バーンアウト世代」とみなすほど深刻な状況だ。
マインド・シェア・パートナーズ、SAP、クアルトリクスが行った調査の回答者の86%は、企業は従業員のメンタルヘルスをサポートすべきだと回答した。「ダイバーシティ&インクルージョン(多様性と包括性)にメンタルヘルスが加えられるべきだ。従業員は会社が取り組んでくれることを望んでいる」と調査報告の執筆者は記した。
さらに「従業員が必要とするサポートの提供により、彼らがしっかりと仕事に取り組むようになるだけでなく、新たな人員の採用とその定着にもつながる。当然のことだ。逆に、何も対応しなければ、会社の評判を落とすことになるだろう」と付け加えた。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)