米マクドナルドのドライブスルーの待ち時間がますます長くなっている。
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- 米マクドナルドは、6年間増え続けているドライブスルーの待ち時間を短縮するために数百万ドルを投資している。
- マクドナルドは一部のフランチャイズオーナーにドライブスルーのアップグレードを促す新しいプログラムを配布した。
- マクドナルドは3月に3億ドルでDynamic Yieldを買収し、ドライブスルーに新しいAI機能を追加すると発表した。
- ファーストフード界の巨人は、メニュー数の削減、新技術の導入、他店舗との競争など、ドライブスルーを高速化するために数々の施策を行っている。
マクドナルドのドライブスルーの待ち時間はどんどん長くなっている。しかし、同社はこれを短縮するためであれば、巨額の投資をしても構わないと思っている。
10月、QSRマガジンは毎年恒例のドライブスルー調査の結果を発表した。業界全体では、ドライブスルーの待ち時間が20秒増加しており、2019年にはスピーカーから注文窓口への移動に平均255秒を費やしている。マクドナルドの平均ドライブスルー時間は284秒で、昨年から約11秒増加した。
調査が発表される前日、米マクドナルドはドライブスルーの待ち時間がこれ以上長くならないようにするための新しいプログラムを社内で発表した。Business Insiderが入手した社内メモによると、マクドナルドは1レーンのドライブスルーを持つフランチャイズ加盟店向けに、ドライブスルーの刷新を促すための新しいオプションプログラムを発表した。
「ドライブスルー事業を構築し、今年のドライブスルーでの成功を活用する機会を探し続けている。我々は新しい並列ドライブスルー型スタンドアロンプログラムを導入する」 とメモには記されている。
このプログラムは基本的に2つ目の車線(内部ではサイドバイサイド・ドライブスルーと呼ばれている)を作ることを奨励している。近年、マクドナルドはモバイルでの注文販売を始めたため、ピーク時には90台の車が並んでいたが、新プログラムはこれを70台に引き下げるものだ。
マクドナルドは以前、同社の戦略「Bigger, Bolder Vision 2020(BBV2020)」の一環として、フランチャイズオーナー向けのプログラムを発表した。多くのフランチャイズオーナーは改装など「BBV2020」に必要な投資を見送ったが、全米オーナー協会は今年1月、ドライブスルーは「投資収益率を上げることができる」成長戦略であると述べている。
新しいドライブスルー・プログラムの内容と導入に関する詳細はまだ確定していない。しかし、メモによると、新しいプログラムはBBV2020と同様に資金が必要で、参加を選択した加盟店は費用の10%を前払いで支払い、その代わりに総費用の40%に相当する5年間の賃貸料の削減を受ける。
ドライブスルーの改善に全力で取り組む
マクドナルドはドライブスルーを倍増させる。
McDonald's
QSRマガジンによると、マクドナルドのドライブスルーの待ち時間はこの6年間、毎年長くなっている。
ファストフード業界全体で見ても、メニューはより複雑になり、経営陣はタブレットなどの店内の革新に焦点を合わせているので、待ち時間が長くなる傾向がある。さらに、顧客が増えることは待ち時間が長くなることを意味する。QSRによると、チックフィレイ(Chick-fil-A)とマクドナルドに一番多くの人が並んでいる。
マクドナルドはこの記事に関するコメントしていない。しかし、最高経営責任者のスティーブ・イースターブルック(Steve Easterbrook)氏は、6月の決算発表の電話会見で投資家らに対し、世界各国の経営陣は今年に入ってドライブスルーの改善に真剣に取り組む時期が来たと判断していると述べていた。
「我々は3月初めの会議で、ドライブスルーの待ち時間に重点を置くことで合意した」とイースターブルック氏は話した。
「3、4年前から間違った方向に進んできた。理由は私たちがビジネスを拡大しすぎたことで、それは理解できるが、持続的なトレンドではない」
マクドナルドは3月、人工知能の新興企業Dynamic Yieldを3億ドル(約324億円)で買収すると発表した。
Dynamic Yieldの技術は、ドライブスルーのメニューを瞬時に更新することを可能にする。例えば、顧客がコーヒーを注文した場合、AI対応のドライブスルーはドーナツスティックの注文を追加するよう提案することができ、顧客にもっとお金を使うように説得することができる。マクドナルドは2018年にドライブスルーでこの技術のテストを開始しており、2019年末までにドライブスルーでこの技術を展開する計画だ。
また9月には、ドライブスルーを支援する新たな買収を発表した。音声技術の新興企業であるApprenteだ。プレスリリースによると、Apprenteの買収で「より速く、より簡単に、より正確に注文を取ることができると期待されている」という。
今回の買収は、最も明確なドライブスルーへの投資だったが、マクドナルドはドライブスルーの待ち時間を短縮するために多くの微調整を行ってきた。
イースターブルックCEOは6月、「間違いなくドライブスルーの待ち時間の長さは改善されるだろう」と述べた。
「私たちは1週間ごとに少しずつ改善していきたいと思っている。したがって、顧客が1〜2週間後に戻ってくると、数秒の違いに気付くことができるはずだ」
イースターブルック氏によると、メニューの簡素化によってもサービス時間が短縮されたという。4月には、マクドナルドが高価なハンバーガー、サンドイッチや深夜メニューの商品を削除するというニュースが報じられた。
マクドナルドはこのプロセスをゲーム化しようと、各店舗が最短のサービス時間を競い合うように仕向けるインセンティブプログラムを用意している。同社によると、今年初めにアメリカ各地で競争が起きたことで、サービス時間が短縮され、顧客数が増加したという。
マクドナルドはまた、ドライブスルーの処理を遅らせる可能性のあるものを従業員がより適切に扱えるようにする新しい技術と診断ツールも展開している。
イースターブルックCEOは6月、「基本的に、顧客がドライブスルーを利用するときには、さまざまな要素に細かく分解できる」と述べた。
「注文を取る時間、支払いにかかる時間、注文した商品を渡す時間や、注文の品を後で渡すために何台の車を前に出すか、などです」
[原文:How McDonald's is spending millions of dollars to regain its crown as drive-thru king]
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)