【ノーベル物理学賞】人類の宇宙観を劇的に変えた3人。宇宙誕生初期の解明と太陽系外の惑星の発見

我々人類は、はるか昔から空を見上げ、この宇宙の姿や地球というかけがえのない存在について思いをはせてきた——。

10月8日、ノーベル財団は2019年度のノーベル物理学賞を、プリンストン大学教授のジェームズ・ピーブルス博士、いずれもジュネーブ大学教授のミカエル・マヨール博士とディディエ・ケロー博士の3人に授与すると発表した。

ノーベル物理学賞の受賞者3名の似顔絵

左から、ピーブルス博士、マヨール博士、ケロー博士の似顔絵。

出典:© Nobel Media 2019. Illustration: Niklas Elmehed

宇宙誕生初期を予測した宇宙理論の専門家

ジェームズ・ピーブルス博士は、宇宙の構造や歴史について理論的な研究を行い、現代宇宙論の基礎の構築に貢献したことが受賞理由だ。

約138億年前に宇宙が誕生した直後、宇宙は超高温・高密度の火の玉のような状態だったと考えられている。火の玉状態の宇宙は膨張しながら少しずつ冷えていき、原子が誕生し始めた。そして宇宙が誕生してから約40万年後、「宇宙マイクロ波背景放射」と呼ばれる特徴的な光が宇宙全体に広がった。この光は、現在でも宇宙の四方八方から地球へと降り注いでいる。

これがいわゆる「ビッグバン理論」で予想される、宇宙の歴史だ。

東京大学教授で天文学を専門とする田村元秀博士は「ピーブルス博士は、こういった宇宙誕生初期の様子を理論的に予測するうえで、多大な功績を残した方です。宇宙理論の専門家の中で目立った功績を挙げた方はたくさんいますが、総合的な功績の大きさが今回の受賞につながったのではないでしょうか」と話す。

宇宙の歴史

ビッグバン理論で予想される、宇宙の歴史のイメージ。

AndreaDanti/Shutterstock.com

50光年先の天体の動きを観測し、系外惑星を発見

一方、ミカエル・マヨール博士とディディエ・ケロー博士は、人類史上初めて「系外惑星」を発見したことで知られている。系外惑星とは、太陽系の“外側”に存在する恒星(みずから光り輝く星)の周囲にある惑星だ。

マヨール博士とケロー博士は1995年10月、フランスのプロバンス天文台で、地球から約50光年離れた場所にある「ペガスス座51番星」という太陽によく似た恒星を観測。恒星のわずかな動き捉える「ドップラー法」という手法を用いて、その周囲に系外惑星が存在することを確認した。

前出の田村博士はこう話す。

「例えば、ハンマー投げをしている人がいたとします。ハンマーをぐるぐる回しているとき、中心でハンマーを回している人は多少ふらつくはずです。実は、恒星の周囲に惑星があると、ハンマー投げをしている人と同じように恒星もわずかにふらつくのです。マヨール博士らは、約50光年離れた場所にある恒星が、秒速十数メートル程度で揺らいでいる様子を確認することで、その周囲に惑星が存在することを立証しました」

惑星の常識を覆した「ホットジュピター」

系外惑星のイメージ

マヨール博士らが発見した、系外惑星のイメージ。木星サイズの巨大なガス惑星が、恒星のまわりを約4日という短期間で公転している。このような惑星を「ホットジュピター」という。

出典:NASA/JPL-Caltech

またマヨール博士らが発見した惑星が、太陽系には存在しないタイプの惑星だったことも多くの科学者たちを驚かせた。

太陽系には、太陽の近くに地球のような岩石でできた小さな惑星があり、太陽から離れた場所に土星や木星といったガスでできた巨大な惑星が存在している。しかし、マヨール博士らの観測で発見された惑星は、木星のようなガスでできた巨大な惑星でありながら、恒星のすぐ近くにあり、さらに恒星の周囲をたった4日程度で一周(公転)してしまうものだった。

人類はそれまで、太陽系の中の様子を基本として、惑星の形成過程やこの宇宙のあり方を考えてきた。しかし、太陽系の内部に存在する惑星とまったく異なる惑星が発見されたことで、人類がそれまでに思い描いていた惑星像が大きく変わってしまったのだ。

系外惑星の発見ラッシュ。時代は生命の探索へ

マヨール博士らによる系外惑星の発見の後、今日までに、4000個を超える系外惑星が確認された。

多様な太陽系外惑星

2018年に運用が終了したNASAのケプラー宇宙望遠鏡によって、数多くの系外惑星が発見された。

出典:NASA/W. Stenzel

今では、地上や宇宙に存在する数々の望遠鏡を用いて、系外惑星の中から生命の痕跡を探し出す試みも、いよいよ始まろうとしている。

一方で、現代の宇宙論をもってしても、宇宙についてまだ分かっていないことは多い。これはつまり、系外惑星の発見によってそれまでの宇宙の常識が突然覆されたように、今の世界の常識が、ある日突然覆される瞬間に立ち会える可能性がまだ残っているということでもある。

2019年度のノーベル物理学賞は、まさに人類の宇宙観を大転換させ、宇宙論や天文学を新たなステップへと進めた功績に与えられた。そして同時に、未だ終わりの見えない宇宙物理学の奥深さを、世の中に伝えてくれたのではないだろうか。

ノーベル物理学賞,発表のようす。

Nobel Prize/YouTube

(文・三ツ村崇志)

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