ANAとベンチャー企業・ニューロスペースは、海外渡航者向けの「時差ボケ調整アプリ」の開発に取り組んでいる。(写真はイメージです)
撮影:小林優多郎
海外への出張、旅行はワクワクするものだ。一方、そのワクワクの裏で初日の夜あたりに誰もが悩まされるのが、ジェットラグ=「時差ボケ」だ。
旅慣れた人は独自の時差ボケ解消法を実践している人もいるが、筆者はどうにも苦手で毎度、現地時間適応に苦労している。
9月にドイツ(時差-7時間)へ出張した際に、ANAホールディングスとスリープテック領域のベンチャー・ニューロスペースが開発した時差ボケ解消アプリを試してみた。その結果が良好だったので、レポートしてみよう。
アプリの名前は「lee JET」。利用自体は渡航日当日ではなく、3日前から始まる。まずはカンタンなアンケートに答える
アンケートの結果、自分は夜型で夜更かししやすい(=時差ボケ調整しやすい)傾向にあるとわかった
その後、フライトを登録。空港コードが大きく書いてあるのが飛行機系のサービスらしさを感じる
無事設定が終わると、アプリが推奨する睡眠と食事の時間が表示される。基本はこれに従えばいい
アプリは随時通知もしてくれるため、便利
基本的にオフライン環境である機内でも動作する
キツかったのは機内で周囲が寝静まって、ついつい自分も寝そうになったとき。アプリは眠気覚ましを推奨していた
なんとかアプリの指示を実践してベルリン着。現地時間は午後6時30分。日本は午前1時30分。大きな眠気はなく、ほどよく疲れている感覚だった
睡眠コーチがそばに居てくれる感覚
アプリ上では、乗る予定のフライト機材の特徴も教えてくれた。
半信半疑で使ってみた、というのが正直なところだが、今回のIFA2019の取材では、驚くことに時差ボケはほとんどなく、現地取材を快適にこなせた。もちろん、筆者が比較的夜型の生活をしていたから時差ボケも少なかった可能性はある。
2018年にも同じ時期にIFA2018を取材、ほぼ同時間のフライトだったが、そのときよりは中途半端に眠くなったり、現地の夜に目がさえたりということが少なかった印象がある。
よかったのは、スマホの通知ベースで「オススメの行動」を教えてくれることだ。
自分の素人感覚で「この時間は起きていようかな」とか「いま食事をしようかな」と判断するのではなく、一定のロジックで「こうした方がいい」と言われるのは、筋力トレーニングなどのパーソナルコーチに指導を受けている感覚と似ている。
一方、面倒だと感じた点もあった。
本アプリは実際に寝た時間や食事をした時間などを入力すると、よりアドバイスの精度が増す。これを渡航の数日前から毎日となると、欠かさず実行することはなかなか難しい。例えば睡眠状況だったら、そもそも筆者が常にモニタリングしているウェアラブル機器のデータを参照したり、起きた時間などをアラームの設定から参照したりして欲しかった。
スリープテックで飛行機の旅が変わる?
席種にもよるかもしれないが、飛行機の移動はワクワクすると同時に体力や精神的に消耗する。そんな状況をスリープテックが変えていくか。
ANAホールディングスとニューロスペースはこのアプリを8月から10月にかけて一部の企業向けにトライアルとして提供。ANA関連会社や損害保険ジャパン日本興亜、東急スポーツオアシスなどが参画している。
ANAホールディングスとニューロスペースは2020年4月のサービス開始を目指し、トライアル中のフィードバックを得て、アプリの使い勝手や精度を向上させる予定だ。
また、ANAは「ANAのラウンジや機内サービスとの連携、出発前・渡航先・帰国後における提携先とのサービス連携など」も検討しているという。
残念なことに、前述のようにこのアプリは特定の企業向けのトライアル中で、一般のユーザーは試せない。試してみたいという方は正式サービス開始まで待たなければならないのだが、飛行機の旅がスリープテックやアプリによって、今後変わっていくかもしれない。
(文、撮影・小林優多郎)