ウォーレン・バフェットは2011年に、自身の納税率は17.4%で、彼の会社の全従業員より低い納税率だったと述べた。
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- 2018年、富裕層は所得の23%を連邦税と州税、地方税で納めた。一方、アメリカ人の平均納税率は28%だった。
- これは、カリフォルニア大学バークレー校のエマニュエル・サエズ(Emmanuel Saez)氏とガブリエル・ズックマン(Gabriel Zucman)氏が間もなく出版する新著『The Triumph of Injustice』の税金に関するデータ分析によるものだ。
- 両氏によると、1950年から1980年の間、富裕層は毎年所得の50%以上を納税していた。
- 両氏はエリザベス・ウォーレン上院議員の大統領選顧問も勤め、アメリカで拡大する貧富の格差の解決策として、中程度の富裕税を提案している。
2018年、アメリカの富裕層の所得に対する納税率は、国内平均より低かった。これは史上初めてのことだ。
富裕層は2018年、所得の23%を連邦税と州税、地方税として納めた。これは、カリフォルニア大学バークレー校のエマニュエル・サエズ(Emmanuel Saez)氏とガブリエル・ズックマン(Gabriel Zucman)氏が間もなく出版する新著『The Triumph of Injustice』の税金に関するデータ分析によるものだ。一方、アメリカ人の平均納税率は28%だった。
「アメリカの税制は超富裕層を除き税率が一律で、それは逆進的だ」と、サエズ氏とズックマン氏は『The Triumph of Injustice』の中で述べた。「それぞれの状況は同じではないが、トランプ一家やマーク・ザッカーバーグ、ウォーレン・バフェットなどは、教師や秘書よりも低い税率で納税する」。
給与税や逆進的な売上税によって、より貧しいアメリカ人の税負担が増していると、サエズ氏とズックマン氏は記述した。一方で、超富裕層が保有する投資を対象とした資本への課税は、1980年から縮小されている。1950年から1980年の間、富裕層は毎年所得の50%以上を納税していたことを、サエズ氏とズックマン氏は明らかにした。
富豪の投資家、ウォーレン・バフェットは2011年、ニューヨーク・タイムズへの寄稿で、彼の所得に対する納税率はここ数十年で急落しており、納税率は彼の秘書より低いと述べた。
「昨年の連邦税と私が納めた所得税、それに給与税は693万8744ドル(約7億5000万円)だった。大金のように聞こえるが、私の課税所得のわずか17.4%にすぎず、私の会社にいる20人の従業員の誰よりも低い納税率だった。彼らの納税率は33〜41%で、平均は36%だった」とバフェットはニューヨーク・タイムズに書いた。
アメリカで貧富の格差が拡大し、富裕層でさえ彼らの富を作り出したシステムを支持していない
アメリカ人の上位1%が、国全体の資産の40%を所有していると、ズックマン氏は2月に全米経済研究所が発行した報告書で述べた。
JPモルガン・チェースのCEO、ジェイミー・ダイモン(Jamie Dimon)やブリッジウォーター・アソシエーツの創業者、レイ・ダリオ(Ray Dalio)など、現在の不平等な水準は支持できないと述べる富豪もいると、以前Business Insiderは報じた。
アメリカ国勢調査局は9月、所得の不平等が史上最高レベルにあると発表した。それによると、2018年の実質世帯収入の中央値は0.8%増の6万1937ドル(約670万円)で、過去3年間で最も小さい伸びだった。ここ10年間のアメリカの経済成長の大部分は、裕福で金融商品を所有している人物に渡ったと、ウィスコンシン大学教授で、貧困と経済変化を研究するティモシー・スミーディング(Timothy Smeeding)教授はBusiness Insiderに語っていた。
サエズ氏とズックマン氏は、アメリカで広がる貧富の格差の解決策として、富裕税を提案している。
サエズ氏とズックマン氏はエリザベス・ウォーレン上院議員の大統領選挙アドバイザーも務めている。最もよく言及される資産税の提案の1つであるウォーレン議員の「超富裕税」は、5000万ドル(約54億円)から10億ドル(約1080億円)の資産を保有する世帯には年2%を、10億ドルを超える世帯には年3%の課税を求めている。
この提案を、超富裕層と一般的なアメリカ人の双方が支持している。Business Insiderの世論調査で、回答者の半数以上がウォーレン氏の富裕税を支持した。サエズ氏とズックマン氏は、Brookings Papers on Economic Activityが発表した研究内容から、富裕税が1982年から施行されていたら、ジェフ・ベゾスの2018年の財産は半分だったと明らかにした。ビル・ゲイツの場合は、610億ドル(約6兆6000億円)少なくなる。
大統領候補のバーニー・サンダースは9月、ウォーレンの提案よりさらに積極的な富裕税を提案し、ニューヨーク・タイムズに「億万長者は存在するべきだと思わない」と述べた。
これらの提案は、富裕税の有効性や合憲性に対する疑問により阻まれていることを、以前、Business Insiderで報じている。
(翻訳:Makiko Sato、編集:Toshihiko Inoue)